色々あったけど何とか船に乗り込んだ。雨が身体を打ち、あっと言う間に全身がびしょ濡れ。
3人はすぐにやってきた。
「急げ急げ!!!ロープが持たねェ!!!」
「ナミさんむーちゃんただいまー!!!」
「ぐず!!!早く乗って!!!船出すわよ!!!」
3人が乗り込むとすぐに船を出す。グラグラと揺れる船に、私は掴まって立っているのがやっと。
荒れる海に、一筋の光が浮かび上がっていた。あの光の先に“偉大なる航路”の入り口があるらしい。
「よっしゃ。偉大なる海に船を浮かべる進水式でもやろうか!!」
そう言ったサンジさんがお酒の入った大きな樽を出してくる。それから船に掴まり必死な私の右腕を掴み、樽の前まで引っ張ってくれる。
「おれはオールブルーを見つけるために」
「おれは海賊王!!!」
「おれァ大剣豪に」
「私は世界地図を描くため!!」
「お…お…おれは勇敢なる海の戦士になるためだ!!!」
次々に並べられる希望と、樽の置かれていく皆の足。次は私だと、みんなが私を見ながらじっと言葉を待っている。
…私には、みんなみたいな夢はない。ぐらっと揺れる船によろめく身体。サンジさんが掴んでくれている方とは反対の腕を、今度はゾロさんが掴んでくれた。
夢はない、だけど、私はここで、この世界で死ぬわけにはいかない。もとの世界に、帰らなきゃいけない。だから、
「……ここで………終わらないために」
拳をぎゅっと握り締める。ここで終わるワケにはいかない。家族も友達も、わからないけど心配してくれてるかもしれないし、もしかしたら探してくれているかもしれない。元気だよって、ただいまって帰る日までは、何があっても死ぬわけにはいかないんだ。
「いくぞ!!!“偉大なる航路”!!!!」
私の身長だと大変だったけど、同じようにそうする。“ガコォン”と樽の蓋にみんなが一斉にかかとを落とすと盛大に割れ、中身が散っていく。
胸の中に小さな決意が生まれた。
←