そして辿り着いた島。基本的に自由行動らしく、ナミさんが“皆には内緒ね”と少し多めにお金を渡してくれる。初めて見るお金だったからどうしていいのかわからなかったけど、ウソップから借りっぱなしのズボンとサンダルも返さなきゃいけないし…と、ほんのちょっとの勇気を振り絞ろうと決める。財布もナミがくれた。きっと村からスってきたどれかの財布だろうと思う。



「わぁ…」



想像以上に賑やかな街だった。人とお店があちらこちらにごった返し、私の住んでた所よりもずっとずっと活気がある。
どこに行こうかとキョロキョロするしかできなくて、結構な時間は経っているけどほとんどお店にも入っていない。買い物なんて全然。取り敢えず服屋を探さなきゃ、とまた視線はあっちこっち。



「…っ、す、すいません、」



人の流れの速さに押されて、大きな背中に思いっきりぶつかり、弾みでこける。うわぁ恥ずかしい!なんて思いながら大きな影を見上げると、真っ白な背中に書かれた「正義」の文字。振り向いて見下されたその人の表情は、言葉がつまってしまうほど迫力のあるものだった。……要は、恐い、のだ。



「ご、ごめ、っ…なさ、」

「…いや、悪ィな」



…意外な優しさ。顔こそ怖いけれど、怖いのはそれだけだった。手を差し伸べてくれている。私は遠慮がちにその手を掴みゆっくりと立ち上がった。ズボンについた埃を払うと、睨み付けるようなその瞳は未だ私を捕らえていた。
口に咥えられた2本のタバコ、と言うよりも葉巻が迫力を増幅させている。



「スモーカーさん!!遅くなりました!!」

「たしぎィ!!!てめェトロトロと何やってた!!!」



向こうから全力疾走してきた女の人が叫んだ名前がこの人の名前なんだろう。たしぎ、と呼ばれた女の人は渡されたジャケットを羽織る。そしてジャケットを渡した人の背中には、見間違いでなければ“MARINE”という文字が書かれていた。
この人たちは、いわゆる海軍と呼ばれる人たちなのだろうか。まだ余り海賊とかの仕組みは分からないけれど、海軍と海軍が敵だっていうことは知っている。



「何だ?」

「い、やあの…」

「洋服のクリーニング代か?」

「ち、違います全然、そんなんじゃなくて………スミマセン何でもない、です」



何だか怖くなって、思いっきり頭を下げてそのまま走ってあの場から逃げてきた。その先にちょうど服屋があって、動きやすそうなズボンとTシャツ、それから下着を数枚買った。お店を出てトボトボ歩いていると靴屋も見付けたから、サイズの合ったサンダルも一足だけ買っておいた。
しばらく歩いていると、この辺りは先程までいた場所よりもずっと静かになっていた。まっすぐ歩いて行くと前にはナミ、ウソップ、ゾロさんとサンジさんもいた。(まだ、さん付けは外せない)
何やら大慌てでナミとウソップが私の方に走ってきて、それに気付いた2人は私にも走るように言い、私は言われた通りにする。後ろが、ここにいない3人が気になった。だけど走らなきゃ、とその気持ちを弾き飛ばし、2人に置いていかれないように必死で走った。


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