今日は何だか寒いわね、冬島にでも入ったのかしら、なんて思いながらベッドから身体を起こす。大きく息を吸えば、サンジくんが作ってくれてる朝御飯のいい匂い。着替えを済ませて顔を洗って、匂いのする方へ足を進めれば机にはご馳走が並べられている。皆が続々と集まり始める。全員が揃って、みれば、



「サンジくん、一つ多いわよ」

「えェ?そんなはずは………あー、本当だなァ」

「余ったやつ俺食っていいか!?」

「あァ、勿体ねェから食ってくれ。それにしても、おかしいなァ…数えて作ったはずなんだが……」



頭を捻るサンジくんに、バカだなぁって声が飛ぶ。だけど何かがしっくりこない、それは何故だろうか。
美味しいご飯を食べ、私も次の島に向けてみんなの分のお小遣いを計算する。大きな街で、食料や薬はもうすぐ無くなるだろうから二人に渡す分は少し多目にして…と、頭でそろばんを弾く。



「じゃあそこに並んで、今からお小遣い配るから」

「やった!お、こんだけありゃ好きなもん山ほど食えるぞ!」

「滞在期間考えて使いなさいよ!……っと、あれ、余っちゃったんだけど…誰か貰い忘れてない?」

「はァ?珍しいな、ナミが金の計算間違えるなんて」

「明日は槍でも降りそうだな」

「うるさいわね!そんなこと言うならお小遣い没収するわよ!?」



うるさい連中を追い出して、静かになった部屋で余ったお金を眺める。私としたことが、お金の計算を間違えるなんて。だけど確かに、ちゃんと数えたはずなのよ。ゾロ、サンジ、ルフィ、チョッパー、ウソップ、ロビン、それと……あれ、私、あと一人、誰の分を数えてたの?私の分は別で取ってあるし…これじゃあ皆に言われたって仕方ないわ。小さな違和感を感じながら、大きな溜め息を吐いた。



「ゾロ、何してんの?買い物行かないの?」

「船番でいい」

「まぁしっかり頼んだわよ」

「……なァ」

「なによ」

「…俺が出てったとき、ここで船番してたの誰だったか覚えてるか」

「何言ってんのよ、いつも…」



――いつも。いつも?いつもゾロだったじゃない、でも、そうじゃない。ゾロだって出掛けてたし、じゃあ…――じゃあ、誰?船番が居ないときも確かにあったかもしれないけど、でも違うの。欲しいものないから、って――誰?ああもう何なの、朝からずっと、気持ち悪い。答えが出ないまま私は街に出る。欲しいものは沢山あるの。洋服に鞄に、それから宝石、ここは安く手にはいるから沢山、沢山買いたいの。むしゃくしゃしてる、それは、何故?
沢山買い物をして船に戻ると、何故だかぐしゃぐしゃに荒れている部屋。そこには引き出しを全て引っ張り出すウソップがいた。



「何してンのよウソップ!!こんなに散らかして!!」

「いやァちょっと探し物を…そうだそうだナミ!これ引き出しから出てきたんだけどお前のか?」

「はぁ…なに、どれ?」



ウソップに渡されたのは一枚の紙。そこにはデタラメに書かれた地図のようなものがあった。なにこれ、この図形。そもそもこれは地図?日本、アメリカ、中国、ロシア…聞き慣れない、っていうか聞いたことないその言葉、単語。こんなもの書いた覚えもないし引き出しにしまっておいた記憶もない。



「知らないわよこんなの」

「いや俺も知らねェんだけどよォ、なんか…なんか知ってる気がして、だからナミが書いたのかと思ってたんだけど」

「私がこんなデタラメな地図書くわけないでしょ?見たことも聞いたこともないのに…」

「でも知ってンだよ…この日本って場所には1億3000万人以上の人がいて…」

「あのねぇ、1億人っていう人がどれだけの人数か分かって言ってる?変な夢でも見たんじゃないの?」



うーん、と考え込みながらデタラメな地図を眺めるウソップ。何が引っ掛かっているのかわからないけど、私の言葉に納得はしていないらしい。何なのかしら本当に。



「ナミ!ウソップ!ふたりで何してるんだ?」

「ああチョッパー…ウソップが変な地図出してきて」

「変な地図?」

「ああ、なんかナミは知らないって言ってンだけどよ、オレは知ってるような気がして…」

「またそんなこと…」

「…オレも知ってる気がする」



そう、言ったのはチョッパーだった。え?と振り向けば、ウソップと並んでデタラメな地図を眺めている。



「“日本”の春も暖かくて、桜がいっぱい咲いてて…いつか一緒に見れたらいいなって…」

「いつか“一緒”に…チョッパー、それ誰と話したの?」

「…誰……誰と話したんだっけ…」



ああもう、なんなの?今日は朝からずっとこうだ、何かがしっくりこない、何かが、誰かが…足りない。足りない?元々私たちはこの8人で旅をしてきて…――8人?私、今、8人って言った?ルフィ、ゾロ、サンジ、ウソップ、チョッパー、ロビン、それから私…7人しかいないじゃない。最初からこの7人だった。他に誰かいたの?そんなわけない。



「ああもう!なんなの!!」



ビクッとした二人のことは知らない。朝からもやもやする気持ちは膨らむばかりで、当たり前が当たり前じゃないみたいで、なんかもう本当に気持ち悪い。安くていい買い物だっていっぱいしたのに、気分は最悪。最低だ。


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