サンジは、私に多くのことを教えてはくれなかった。ただロビンを助けるだけだとそう言った。だけどそれでいい。詳しいことを聞いたってきっと私には分からないし、ただ皆が大変って、それだけ分かれば今の私には十分だ。
今は小さなトンネルに身を隠している。隣で煙草を吸うサンジの匂いがとても懐かしいと感じる。そしてここからは、ロビンの姿も確認できた。



「どう見えても連行されてる様にしか見えねェが…あれくらいの相手なら…逃げたきゃ一人でも捻っちまえるハズ……!!何か彼女に狙いがあるのか…それとも逃げ出せねェ理由でも………?」



サンジが真剣な表情でそんなことを口にする。やっぱりロビンは連行されてて、それでも逃げ出さない、何か、理由があるかもしれないって。何があったのかなって、本当は知りたいけどなんとなく聞けない。モヤモヤする私の隣で突然不気味に笑いだしたサンジがそのままゲホゲホと噎せる。大丈夫?って背中を擦ればサンジはゆっくり立ち上がって「すまねェな」ってそう言ってくれた。そうしている間にロビンの方から何か騒がしい雰囲気が伝わってくる。



「放せチキショー放せー!!!おれをどこへ連れてく気だ!!!てめェら絶対許さねェからな!!!」


「……ウソップ…?」

「………そうみてェだな」



騒がしい、その渦中に居るのは紛れもなくウソップだった。頭以外の身体を布と紐でぐるぐるに巻かれて、身動きの取れないその身体を大きな人間の肩に担がれてそのまま何処かへ連れていかれてしまう。捕まっているのはウソップだけじゃないらしく、反対側の肩には別の人も見えた。遠ざかっていくウソップに私の心はまた不安になっていく。



「……何が“最後まで迷惑かけた”だ…一味抜けても迷惑かける気か………」



煙草の煙が鼻を掠めると、心なしか気持ちが少し落ち着くような気がした。風がどんどん強くなり、空も更に薄暗くなってくる。さっきまで外に並んでいた人たちはもう全員船に乗り込んでしまったようだ。その船にはロビンも、ウソップも乗っている。



『最終便11時「ウォーターセブン」ブルーステーション発エニエス・ロビー行き――“高潮”接近中につき予定をくり上げまもなく出航致します』

「クソ…もう出ちまうのか…!!」



駅の放送にサンジはまだ動かない。ただじっと向こう側を見据えて何かを考えている。そしてゆっくりと振り返ったサンジは、眉間に皺を寄せたその瞳で私を見た。



「こっから先、俺はしっかりむーちゃんを護ってやれるかどうか分からねェ…勿論そのつもりではいるが、相手も易々と倒れてくれるような奴じゃねェだろう。ケガするかもしれねェしそれ以上の事態になる可能性も、ねェとは言い切れねェ…――それでも一緒に来るか?」



サンジは私にここから先に起こるであろう事を“警告”してくれている。この先に待ち受けているのは恐らく“戦い”なんだろうと思う。戦えない私はサンジの邪魔でしかなくて、私が居ることでサンジには迷惑になってしまうかもしれない…――でも、だけど。もしかしたら何か、役に立てるかもしれない。居ないよりもいる方が良いかもしれない。その可能性は限り無く低いとしても、私は皆と一緒に居たいと思う。怪我しても、もしかしたら私みたいな奴は死んじゃうかもしれないけど、どうせここで独りぼっちになってしまうのなら私は―――皆と一緒に危険な道へ進みたいと思う。



「そうだろうな」



大きく頷いた私に、サンジは少しだけ表情を緩めて私の髪をそっと撫でた。そして駅の方へ向き直ったサンジに続いて、私も同じように大きな一歩を踏み出した。


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