船の中は真っ暗で、嫌なくらい静か過ぎる。聞こえるのはガタガタッていう、風で船が揺れる音。そして聞こえる波の音。いつも聞こえるルフィの笑い声も、ナミが怒る声も、サンジとゾロが喧嘩する声も、チョッパーとウソップが笑い合う声も、何も。何も聞こえない。それに、



「 …――― 」



何も、ない。
船に残されていたのは私とウソップの荷物だけ。部屋にも私の布団しか無い。隅に置かれているのは私がこの街で買った沢山の食料で、これも、そうだ。皆で食べようと思って買ってきたんだ。それももう、無意味。なんの意味もない。私一人で食べるには多すぎる。ウソップと二人で食べるにしても、この量じゃ多すぎるんだ。

一人になって、色々と考えてみた。どうしてこんなことになっちゃったのかって、落ち着いた頭で冷静に考えてみる。メリー号を修理しようとして、だけどもうメリー号は直らない、走れないって言われたんだって。ウソップはそれに納得がいかなくて、メリー号を離したくないってそう言ったんだ。それからどうなったんだっけ…――そうだ、仲間がどうこうっていう話になったんだ。お前は大事な仲間を見捨てるのか、だったっけ。ウソップがルフィにそんなことを言ったんだ。


『今まで散々迷惑掛けて!!何かあっても何も出来ねェでただ見てるだけで!!いつも守られてるばっかりで自分だけ無傷で!!傷付いていく奴らを見て!!!何も思わなかったわけじゃねェだろ!!?』

『所詮むーはこの船の大事な出来事にすら“関係ねェ”って思われてんだよ!!!』


ああ、そうだ。思い出した。嫌なこと、思い出した。
私がここに来てから今まで、みんなに散々迷惑かけてきた。戦えないから、何もできないからいつも守ってもらってきた。それなのに皆、私のこと“大切”だとか“仲間”だって言ってくれて、私少し、調子に乗ってたのかもしれない。いつも守られながら、皆が戦う姿を見ながら感じていた違和感の正体に気が付いた。そうだ、私何もしてないのにみんなに“仲間”って言ってもらえるような立場じゃ無いんだ。いつも、いつも。いつも、どこかで感じてた。私一人だけ違うんだって。私一人だけ、守られてるだけで皆とは違うんだって。危ないからここから離れて、とか、言われる度に思ってた。もしかしたら私、仲間だって思ってただけで本当はずっと“ひとりぼっち”だったんじゃないか、って…気付きたくないことにも気付いちゃうなんて。どうしよう、また泣いちゃいそうだ。



「むー、腹減ってねぇか?」



ドアの外から聞こえるのはウソップの優しい声だった。空いてない、そうやって絞り出した声はウソップには聞こえていただろうか。何も言わずに部屋の前から立ち去ったのが分かった。
どうしてだろう、今までひとりがこんなに悲しいなんて知らなかった。皆でいたから知ることなんて無かった。未熟な自分を思ってまた一筋、涙が流れた。


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