海を走る汽車はメリー号を掠めてそのまま去っていった。私たちは間一髪避けられた、だけど、さっきのカエルは違う。汽車を睨み付けるように、逃げようともせず正面に構えている。



「おいカエル逃げろ!!!何してんだー!!!」

「何なんだこの鉄の怪物はァ!!!」

「……!!!船!!?」

「違う…!!こんな形で海を走れる訳がない!!!」



ガン、とはね飛ばされるカエル。その衝撃で一瞬止まった汽車はまたすぐに動き始め、そしてその姿が見えなくなるほどに離れていった。皆はその後ろ姿を呆然と眺めている。何だあの船は、と皆はそんなことを言う。確かに海を走ってはいるけれど、あれが船じゃなくて汽車だということは私には分かる。…――もしかしたら皆は知らないのかもしれない。この世界は不思議で、非常識な世界だからそんなことも簡単に納得できる。



「あ!!大変だ!!ばーちゃんばーちゃん海賊だよ!!!」

「何!!?本当かチムニー!!!ゅーひちょっと待ってりゃ」

「面倒だな…建物から誰か出てきた……!!応援呼ぶ気だぞ…」



気付けばメリー号は駅のすぐ傍まで来ていたらしい。駅には小さな女の子とおばあさんがいて、海賊旗を見た二人は警戒心を見せる。…警戒心、とは言うけど何だか二人ともやけに陽気。おばあさんに至っては、酒瓶を片手に既にかなり酔っ払っているようだ。
そんな騒動もなんとか落ち着き、私たちは一先ずその駅に船を停めることにした。皆はさっきの汽車にかなり興味を示しているらしく、船を降りておばあさんと子供の元に向かう。そこには二人と、一匹のウサギ(子供は猫だと言って譲らなかったけど)がいた。酔っ払いのおばあさんの名前はココロ、そして女の子はチムニーという名。ちなみにウサギはゴンベ。



「ねーチムニー。あれは蒸気船でしょ?でもあんな形じゃ普通航海なんて…」

「見たことないでしょ、あんなの世界中探してもここにしかないよ!あれは“海列車”「パッフィング・トム」っていうの」



ナミがチムニーに質問をすると、ひひひっと笑いながら嬉しそうにそう言った。世界中探してもここにしかない、っていうその自信。サンジから貰ったのか、パイユを食べながらさっきの汽車の説明をしてくれる。チムニーは列車だと言ってたけど、私はその違いをよく知らない…っていうかどっちでもいいんだけど。



「蒸気期間で外車を回して海の線路を進むの!!」

「線路?」

「そうよ。水面の少し下を通ってて列車は毎日同じ所をぐるぐる走って島から島へお客を運ぶの。船とか郵便物も運ぶのよ」



海を覗き込むと、確かにそこには線路が見える。そういえば汽車が海を走っていることに違和感を持たなかったなって、ここに来てから気持ちが強くなったような気がしてなんだか少し不思議な気持ちになった。
それに、さっきみたいにカエルがぶつかる事はよくあるとも言ってた。あの巨大カエルはヨコヅナと言って、あの汽車としょっちゅう“力比べ”をしているらしい。



「そんで?おめェら一体どこへ行きてェんだい――ここから“海列車”で行くとすりゃあ…“春の女王の町”セント・ポプラ、“美食の町”プッチ、“カーニバルの町”サン・ファルド…―どこも楽しいよ」

「えェ!!?じゃあ“美食の町”で!!!」

「違うでしょ、私達は船があるから列車には乗らないわ。記録に従うだけ」


相変わらずお酒を飲みながら、だけどこの先の島について教えてくれるのはココロさん。ルフィは“美食”に反応したが、直ぐ様ナミのツッコミが入る。行き先は“北の方”らしい。アバウトだなって思うけど、私たちの冒険はいつだってそう。北の方、か…と、そんな事をぼんやり考えるとその言葉に答えをくれたのはココロさんだった。



「そうかそりゃおめェ「ウォーターセブン」だね。さっきの“海列車”はその島の“ブルー駅”からきたんらよ…「水の都」っつーくらいでいい場所だわ。何よりアンタ造船業でのし上がった都市だ、その技術は世界一ら!!!創る船は世界政府御用達ときたもんだすげェだろ」

「へーって事はすげェ船大工もいるな!!」

「んがががが!!いるなんてもんじゃないよ!!世界最高の船大工達の溜まり場だあそこは!!!」



お酒を口にしたココロさんはとても楽しそうにそんな話をしてくれた。ルフィもウソップも、ナミも私たちも皆が“次”を思う。



「…よーし決めた!!!そこ行って必ず“船大工”を仲間にするぞ!!!」



船長の一言で、私たちの行く先は水の都と言われているらしい『ウォーターセブン』に決まった。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -