あれから四日間は船を停泊させてゆっくりと休み、そして今日は航海を再開して三日目。ゆっくりしたからか身体は随分と楽になり、船内もいつも通りの賑やかな雰囲気に戻っている。少し前までカッチカチに凍っていた私はまだ気を遣われているようで、皆は交代で私に声をかけてくれる。



「もう大丈夫?」



外でギャアギャア聞こえてくる声に釣られて外にでると、真っ先に気付いてくれたナミが駆け寄ってきてくれた。大丈夫だと笑って返すとナミもニッコリ笑ってくれた。



「むーちゃん!」



それにサンジも気付いてくれたようで、手におやつを持ったまま駆け寄ってきてくれる。



「もういいのか?腹減ってねぇか?なんか食いたいもんあるか?」

「うるせーマユゲ」

「うるせーとは何だあァン!?俺ァむーちゃんを心配して…」



また始まった喧嘩。やんのかゴルァ!なんて言いながら取っ組み合いをする二人を横目に、私はナミと並んで風を浴びる。すると部屋にこもりっきりだったロビンが姿を現した。



「ロビン!!気分はどうだ?寒気はあるか?」

「お陰様で………だいぶいいわ…ありがとう船医さん」



チョッパーが声をかけるとロビンは穏やかにそう答えた。コーヒーが飲みたいと言ったロビンの為にサンジはすっ飛んでいく。ナミも少し休んでくると部屋に向かい、残された私達はサンジが残してくれたパイユを頬張る。凍っていたからかどうかはわからないけど、温かいそれに何だかホッとした。



「……」

「…どした?」



ゾロと並んでパイユを食べる、その手が止まるとゾロは不思議そうに私を見た。今、目に映ったあれは見間違いなのかと目を細めてみる。だがどうやら見間違い、ではないらしい。私がそっと指差したそれを見た彼もまた疑問を浮かべ、パイユを頬張る手を止めた。



「何だありゃ…」

「ん?」



私たちの様子に気付いたルフィもまたそれに視線を向けると、心なしか少し瞳を輝かせた。



「カエルだ!!!巨大ガエルだ……!!!クロールで海を渡ってるぞ!!!あんなに急いでどこ行くんだ!!?」

「おいルフィ、バカも休み休みに言え。カエルがクロールなんか……しとるーッ!!!」



信じていなかったらしいウソップも、驚いて思わず身を乗り出した。ルフィのテンションは上がるばっかりで、ついには船の進行方向変えてしまう。カエルを追い掛けるんだって。怒鳴るナミの声を聞きながら、ルフィらしい考えに少し笑ってしまった。私たちの船はただ、カエルを追い掛ける。



「え!!?待ってよみんなストップ!!変な音がする!!」



諦めたようにうなだれていた、ナミが声を張り上げた。変な音、というよりも――カンカンカン――というそんな甲高い音。鐘のような金属音。ゲロッと声を上げて水面から飛び出し、メリー号はチャンスとばかりにカエルの前に飛び出した。カンカンカンという音は次第に大きくなり、メリー号は恐らく海の中にあるであろう“何か”に乗り上げた。



「バックバック!!180度旋回!!!」



ナミの声とほぼ同時。私たちの横からメリー号に突っ込んできたのは大きな大きな“汽車”だった。


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