さっきまでの五月蝿いくらいの歓声は無くなり、今は壊れたフォクシー海賊団の船を修理する音が響いている。



「こいつぅ!!こいつぅ!!」

「つつきすぎだ!!!重症なんだぞ!!!コンニャローッ!!!」

「心配ばっかりかけて…!!何がアフロパワーよ」



チョッパーに治療を受けて、包帯をぐるぐるに巻かれたルフィが草の上に横になっている。その頬を突っつくウソップも、呆れたように溜め息を吐くナミも、皆がルフィを心配してた。勿論私だって凄く心配したし、勝ったこともそうだけど無事で良かったって凄く安心してる。
すぐ側で寝息をたてている彼の瞼がゆっくり開いて、そのままガバッと勢いよく起き上がった。その手は私の腕をがっしり掴んでいる。



「あ…あれ!?ゲーム!!ゲームは!?……おれ勝ったと思ったのに………夢か!?」

「大丈夫だ、勝ったよ」



ゾロの言葉に、ルフィは安心しきったようにパタッと倒れこんだ。一度小さく深呼吸。



「よかった………」



キュッと、私の腕をつかむ手に力が入る。大の字で寝転がる彼は本当に嬉しそうで、優しい笑顔でそう言葉をこぼした。私たちまで笑顔になれる、優しく温かい笑顔。皆も嬉しそうに、だけどどこかそれを隠すようにそれぞれが言葉を投げ掛ける。素直じゃないなぁ、なんてそう思う事が凄く幸せ。ルフィの力が抜けていく。安心したのかな、きっと。



「おい麦わらァ………!!!てめェよくもおれの無敗伝説にドロをぬってくれたなァ!!」



見上げたスグそこには、こっちも傷だらけのオヤビンがいた。咄嗟にゾロが私を庇ってくれるように前に立ち、腰にある刀に手を添える。変な緊張感が走る。だけどそんな私たちを余所に、オヤビンの行動は言葉は予想外のもので。



「天晴だ、ブラザー」



そう言ってルフィに右手を差し出したのだ。ルフィもゆっくりと手を差し出し、二人は手堅い握手を交わす。



「でりゃーっ!!!嫁さん貰い損なった…“くやしまぎれ一本背負い”!!!」



…なんだかなぁ、と。一本背負いをしようとしたオヤビンはルフィの腕が伸びることなんて忘れていたのかもしれない。「バカかお前は」と聞こえたゾロのツッコミと、ツッコミ通りのギャグのような展開に思わず笑ってしまう。振り返ったゾロも口許を緩めて小さく笑った。



「ルールだ!さァ早ェトコ選べ!!!誰が欲しいんだ!!!」



オヤビンが叫んだ。忘れていたが、そういえばこのゲームはそういうゲームなのだ。
船大工や船員が次々に紹介されていく。誰か、仲間が増えるのかと思うとそれはそれで変な気持ちになる。誰を選ぶか、何を選ぶか決めるのはルフィだから私たちはなにも言えないけど。



「海賊旗をくれ!!!」



迷う様子もなく言ったルフィに、相手の海賊団は思わず揃った声を上げた。オヤビンから「迷わずおれたちの誇りを奪うのか!」と苦情が入ったが、ルフィが奪うのは旗ではなくマークだと言う。旗が無ければ航海は出来ない、ルフィはそんなことを口にしていた。自分も相手も同じ海賊で、だからこそ彼は旗を奪うことはしなかったのだろう。ルフィの心の大きさをここでも見た気がした。



『勝者!!“麦わらの一味”!!!デービーバックファイトこれにて閉会〜!!!』



また一つの戦いが終わった。フォクシー海賊団に新しく与えられたマークは、ルフィが描いた散々なものになったけど。ワァワァと騒ぎながら島を出ていく船を、気持ちがスッキリ晴れている事を感じながらのんびりと見送った。


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