見えなくなった二人の姿。船の中で何が起きているのかわからないけど、爆発音や何の音かわからない音がひっきりなしに聞こえる。至る部分から上がる黒い煙、それら全てが私の不安を一層掻き立てていく。



「チキショーここでも見えねー!どうなってんだ!?」

「試合はどうなってんの!?」



展開のわからない試合に、観客席もざわめいている。どうなってるの、どっちが勝ってるの?そんな風に考えながら私たちは目の前にある船を眺めるしかできないでいる。
不安でいっぱいになる。胸がざわめいている。言葉にできない気持ちが溢れそうになる、そんなとき――ドゴゴゴゴオン――なんていう爆発音が鳴り響き、船の真ん中からは真っ黒な煙がもくもくと上がる。バクバク、心臓は鼓動を強める。煙は瞬く間に辺りを覆っていく。



『さてさて起こった大爆発っ!!!ゲホ…偶然戦場になった船に、偶然セットされていた“フォクシー顔爆弾”をうまく利用したオヤビンの大砲攻撃が“麦わらのルフィ”を襲って大爆発!!!』



盛り上がる客席とは裏腹に、私の心臓は一瞬、止まったような気がした。まるでルフィが負けた、みたいな。まるでルフィが、死んだ、みたいな。そんな雰囲気を醸し出す実況と声に、どうしていいのか分からなくなる。



『ホントに危ない攻撃…!!?えェ〜!!!?な、何と麦わらのルフィ!!!生きているよ〜!!!あの近距離からの大砲撃を回避していた!!!何というスピード!!!こ…これが億クラスの賞金首の実力なのか!!!』



眉間によったシワが緩む。よかった…って、こんな簡単な言葉しか出てこないけどそんな気持ちが一番正しいんだと思う。安心した、すごく。だけどそれも一瞬のこと。戦いはまだ終わっちゃいない。
相変わらず見えない戦場から聞こえてくるのは嫌な音ばっかり。見えないもどかしさが不安を煽り、とうとう実況の人の視線さえも届かない戦いに発展していた。戦いは“船内”に持ち込まれたらしい。



「敗けやしねェよ………!!」

「そうさルフィだもんな!」

「ルフィで……!!アフロだからだ!!」

「ルフィだからで充分だろ……あんなクソギツネ」

「何でアフロをパワーアップだと解釈してるの?」

「だけど強そうに見えたわ」



それぞれな意見。みんなはルフィが敗けるわけないって思ってる。ロビンなんて笑顔で船を眺めているくらいだ。



「だから何て顔してんだオメェは」



隣のゾロが呆れたような視線で私を見ている。不安でいっぱいなんだ、どうしようもない。心配すんなそれでも食っとけ、と。ゾロは私の腕の中にあるポップコーンを指差した。
私だって、ルフィが敗けないって、わかってる、信じてる。けど、不安になる気持ちは抑えきれないでいる。今まで何度も同じ気持ちになってる。だけど最終的にみんなはいつも私を安心させてくれて、だから――…何だかもう、よく分からない。とにかく言えることは、私の気持ちはいつも矛盾しているということ。
中身の分からない戦いを見ているだけだと時間の感覚がわからなくなる。戦いの最中はいつもそうだけど、もう数時間が経っているような気分。数分しか経っていないのか、数十分経っているのかその感じはもうずいぶん前から分からない。



『おっと甲板で動きがあったよ!!!さァ形勢はどっちだ!!?はたまた勝負がついたのかな〜!?影が二つ!!

―――――立っているのはオヤビンだ!!!』



……どう、なんと言えばいいのだろう、この気持ちは。何が何だかわからない。ただ私の目にぼんやり映っていたのは、両手を突き上げて誇らしげに見えるオヤビンの姿だった。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -