「泣き止んだか?」



持っていたタオルでガシガシと私の目元を拭ってくれるのはゾロだった。乱暴だけどどこか優しい。
冷静になって気付くのは、この状況がどれだけ恥ずかしいかってこと。ごめん、ありがとう、ごめんね、をひたすら繰り返していると彼はフッと息を吹いて「アホか」と笑った。

試合はいよいよ三回戦。ルフィ対オヤビンの船長対決は、あからさまな“意図的”を“偶然”と言いくるめて決まったフォクシー海賊団の船上ですることに決まった。一応説明しておくと、大砲から出た鉄球が落ちた場所っていうのがその場所だ。



『―――さてそれでは三回戦「コンバット」のルールを説明するよ〜っ!!バトルフィールドは今、鉄球が落ちた場所から半径50m以内!!――つまり直径100mの“円”の中全てが戦場!!!武器・兵器・円内の全ての物は利用可能。円内には決闘者の二人以外は立入禁止。敵を円から出せば勝ちっ!!!――以上!!!なお空中・海中では出た事にならないよ!!』



ルールはそんな感じらしい。今回、私たちには何の手助けも出来ない。ただ試合が始まり、終わるのを見守るだけ。

試合まではまだ少し時間があるらしく、皆は祭を楽しんでいる。チョッパーに手伝って欲しいと言われ、サンジの手当てを手伝う。身体中はさっきのゲームで傷だらけ。傷に付いた汚れや血を拭き取り消毒をしてガーゼを充てる。チョッパーみたいに手際よくは出来ないけど、私にできる数少ないこと。差し出された左腕に薬を塗り、包帯を巻いていく。



「しっかり見てくれたか?」

「うん…かっこよかった、すごく」

「こんなに目ェ腫らして」



包帯を巻いている方とは反対の彼の右腕がそっと動き、伸びてきた指で私の目の下をなぞる。一瞬何だかわからなくて固まってしまう。…こんな恥ずかしいこと、彼はいつだって平気でやってのけるのだ。照れる私に彼は小さく微笑んだ。



「まあひとえにおれのお陰だけどな」



サンジと、隣でチョッパーに手当てを受けていたゾロの声が綺麗に重なった。すぐ喧嘩になりそうな二人の顔を掴んで乱暴に止めたのはナミで。仲良いんだか悪いんだか分からない二人に、私とチョッパーは顔を見合わせて笑った。



「あっちの奴らがルフィを呼んでるんだけど、どこ?」



周りを見渡すとウソップとチョッパーが売店で何かを買っている。そして二人は試合の準備をするために控え室へと向かっていった。舞台ではチアガールが踊り、前座試合も始まっている。最終試合が、もうすぐ始まる。


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