わけがわからなかった。どうして?チョッパーや皆が連れていかれるのも嫌だけど、でも私は何もしてないし仲間にしたって何もできない。冷や汗が背中を伝う。



「…えっ……なん、っ…」

「そんな…!!むーは試合には出てないわ!!!」

「試合に出ていない船員を貰っちゃいけねェルールはねェ」



両腕をガッチリ掴まれて、精一杯の抵抗も相手には通じない。引きずられるままフォクシーの元に連れていかれ、突然抱きつかれる。頬擦りをされ色んなところを触られて、気持ち悪い、やだ、やだ―――。



「うフェー!!ツルツルすべすべ、若い可愛い文句もない!!!」

「オヤビンやりましたね!!」

「おれの可愛い嫁よ……」

「…よ、嫁……!!?」



フォクシーの言葉に血の気が引いて、一瞬で体温が下がった気がした。



「お前ェ馴れ馴れしくむーちゃんに触ってんじゃねェ!!俺だってそんなっ…そんなスリスリした事ねェのにっ……お前ェの嫁になんかしてたまるかァッ!!!!」

「てめェは黙ってろクソ眉毛!!」

「んだとォ!!!?」

「ああもう最悪、何の為にむーを待機させたと思ってんのよ…!」

「むーー!!」

「しかもお嫁さんだなんて…」



嫌だ嫌だと精一杯もがいてみるが、椅子に縛られたんじゃもうどうしようもない。目に涙が浮かぶ。



「おいおいむー、お前はもうこっちの嫁さんなんだぜ!?これからオヤビンと夫婦になるんだ、忠誠を誓わねェか!!さァマスクをつけろ!!!」



手荒な扱いを受け、無理やり黒のマスクをつけられる。これでもう私はフォクシー海賊団の一員で、フォクシーの、お嫁さんにされてしまうのだ。鼻の奥がツンとする。ごめんな、と謝ってくるウソップに不安でいっぱいになって目の前が滲んでくる。謝られると、もう本当に助からないようなそんな気がしてしまうから。



「心配しなくても俺らは敗けねェ!!さっさと始めろ!!!二回戦!!!」



ゾロの声が聞こえて、ゆっくりと涙は引いた。彼の「敗けない」は力強く、そして心強い。唇を噛み締めて椅子に座り直す。そっと手を握ってくるフォクシーの気持ち悪さにも耐え、大きく息を吸い込む。



「…………もっともだ……まだ2戦ある。おれの大事な嫁さん…いやお嬢さんを取り戻して釣りがくるぜ…」



――彼らは敗けない。きっと助けてくれる。…そんな気持ちで、次に行われる試合会場と、私を助けてくれるであろう彼らをしっかりと見据え、もう一度大きく息を吸い込んだ。


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