始まった第一回戦はドーナツレースっていう競技。こっちの船からはナミ、ロビン、ウソップの三人が出る。ルールは簡単で、私たちが今いる島の周りを一周以上して先に帰ってきた方が勝ち。出場者が乗るボートは空ダル3つとオールが2本、それ以外には使えないがそれをどうやって使っても構わない、決まっていることはそれだけ。あとは周りにいる私たちがどんな攻撃を仕掛けようと何でもありだと言う。不安は募るばかりだった。



『さて受け取れ、迷子防止永久指針!!せいぜい島から離れすぎないようにお気をつけて。幸運を祈るよ!!』

『――位置について!!!レディ〜イ……ドーナツ!!!』



そんな掛け声と同時に響いた銃声により競技が始まった。――と、同時にフォクシー海賊団による味方援護、私たちのチームに対する妨害の攻撃が仕掛けられる。ギョッとして耳を塞いでナミたちの方を見ると、案の定船は海ではなく宙に浮いていた。



「ナミさん達に何しとんじゃコラァ!!!」



びくっとして声のする方を見ると、怒り心頭なサンジが相手の船員たちを蹴り飛ばしていた。ナミやロビンに攻撃が加わるのを許さなかったらしく、凄まじいサンジの剣幕に攻撃をしていた彼らは怯えて逃げていく。



「ふぅ…おっとむーちゃんは無事か?」



ケロッとした表情で私に言うサンジに二、三度頷くと満足気に笑った。



『さァさァ!!序盤から外部も選手も大暴れ!!波乱の幕開けド〜ナツレース!!先を行くのはかわいいキューティワゴン号!!それを追うタルタイガー号!!まだまだレースは始まったばかりだよーっ!!』



遠目でよくわからなかったけど、レースは確かに壮絶だった。今は少し落ち着いているけど、放送でも流れた通りナミたちが負けている。ゆっくりゆっくりと船は進んでいるが、これじゃあ圧倒的に勝負には不利。どうするんだろうってそれを見守っていると突然凄まじい速さで前に進んだ。それはほんの一瞬だったけど、今度は相手がナミたちを追うように形成は逆転。また何か争い事が始まったみたいだけどやっぱりこの距離だとハッキリとは分からなかった。



『前方に見えるのはコースの難関!!“ロングサンゴ礁”地帯、さらに奥には“ロング岬”そこに渦巻く“ロング渦”が待ち受けてるよ!両組どう切り抜けるのか!!』



正直、島から見てるだけの私たちにとってはこの放送だけが頼りの情報だ。屋台でわいわいしながら楽しんでいる賑やかな声よりも、必要なのはこの放送で、耳を澄ませてその声を聞く。そしてその放送から聞こえた『あ〜!!』と言う声に心臓が跳ねる。



『島の方に人影!!!“四足ダッシュ”の奇人ハンバーグにまたがって!!さっそうと登場したのは!!そうお邪魔の天才!!!正当なんて許さない悪名高き我らのオヤビン!!!“銀ギツネ”の〜!!フォクシ〜!!!今日ォ〜も悪い顔してる悪い事を思いついた顔だ!!』



相手の船長、フォクシーがとうとう動き出したらしい。相手の船員だらけの屋台周辺は更なる盛り上がりを見せた。



「ん?誰かまたジャマしてんのか!?」

「まーまーまーまー兄ちゃん食いねェ!!ホラいなり寿司にキツネうどん!!タダだ!!」

「まじで!?ありがとう!!んまほー」



…そんな、場合なのか。ルフィは差し出されたいなり寿司とキツネうどんに目を奪われ、嬉しそうに頬張り始めた。ここに来てどれだけ食べているのだろうか。小さなため息が出て、何気なく見回した光景にはもっと大きなため息を吐きたくなったけれど。サンジは綺麗なレディに囲まれて鼻の下が伸びきってて、ゾロは相手の船員達と仲良くなったのか乾杯している。チョッパーに至っては甘いもので餌付けされてる始末。
自信があるのかは知らないけど、あまりにも呑気な光景に、少しだけ複雑な気持ちのまま視線を足元に落とした。


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