辿り着いた島は、町云々ではなくただただ広い草原だった。所々に生えている木はやけに細長く見えたが、そんな木なんだと特別疑問は浮かばない。
ルフィとウソップとチョッパーは、島に着いた途端に船を飛び出して行った。ナミは呆れてたけどいつもの事だからと特に気にしてはいないらしい。ゾロがイカリを降ろして、ルフィたちが飛び出してからしばらくしてから私たちも島に足を踏み入れた―――その時。



「我々は“フォクシー海賊団”…早まるな、我らの望みは…“決闘”だ!!!」



フォクシー海賊団と名乗る海賊船にメリー号の行く手は封鎖された。メリー号の何倍もある大きな船は、陸との間に私たちの船を追い込む。左右から伸びてきた大きな鎖、それに付いた狐の手が陸をガッチリ掴み、私たちは逃げ場もなく四方が塞がれている。
フォクシー海賊団は言葉を続ける。“デービーバックファイト”と、聞き慣れない横文字に私とナミが首を傾げる。



「その戦いの火蓋は互いの船の船長同士の合意の瞬間切って落とされる。今おれ達の船長がお前達の船長モンキー・D・ルフィに戦いを申し入れている頃…!!」



楽しげにそう語る海賊たち。何もわざわざ律儀に戦いなんか申し込まなくても、海賊って敵を見つけたら攻撃するものなんじゃないのだろうか。ゾロも喧嘩は買うと、彼らの行動に納得がいっていないらしい。だけどそんな私たちの思考は次の瞬間サンジと、続いたロビンの言葉により停止することになる。



「おい…お前しらねェのか?ケンカじゃねェ「デービーバックファイト」は海賊のゲームだ」

「――そうよ、海のどこかにあるという海賊達の楽園「海賊島」でその昔生まれたというゲーム…より優れた舟乗りを手に入れる為海賊が海賊を奪い合ったというわ」



息を呑んだ。



「1勝負ごとに勝者は相手の船から好きな船員を貰い受ける事ができる!!貰われた船員が速やかに敵の船長の忠実な部下となる!!深海の海賊“デービー・ジョーンズ”に誓ってな!!!」

「……!?負けたら…仲間を取られるの!?」



ナミが顔を青くしていく。私もまた不安でいっぱいになる。だけど心の何処か奥深くでは馬鹿馬鹿しいとも思ってしまう。より強い海賊団を作る為にわざわざ敵である海賊を奪い合う事も、そんなゲームを考えた事やそれがどんどん拡がっていった事も。



「―――なお敵船に欲しい船員がいなかった場合、船の命 海賊旗の印を剥奪する事もできる」



内容を知れば知るほど、私たちは事の重大さを知ってゆく。下手すれば船員も、海賊の命であるドクロのマークも失ってしまう事になる。私にとってはドクロなんて、海賊であるみんなには申し訳ないし大事なものだって分かってるけど、正直どうだっていい。だけど船員はそうじゃない。皆が敗けないって思ってても“もしかしたら”を考えてしまうと怖いもんは怖い。しかも相手がやけに自信有りげで、きっと負ける勝負なんて挑まないだろうと思うと不安や恐怖は膨らむばかり。



「――賭ける獲物は“仲間”と“誇り”…勝てば戦力は強化されるが…負けて失うものはでかい…エゲつないゲームさ………!!!」



サンジの言葉にナミの顔が青ざめた。そして思い出す、ついさっきこの島に来る途中に会って波に飲み込まれたあの船の事を。船員がやけに少なくて旗も帆もない、あの船の事を。

――ゾッとした。

戦いを受けるも受けないも船長次第で、ただの船員である私たちに決定権なんて一切ない。ゾロとサンジはルフィの判断に従うつもりでいるがやっぱりナミはどうにか止めようとして、だけどロビンがそれを無駄だと言う。みんなの判断がどうであれ、私たちはルフィが選ぶ選択を祈るしか出来ない。



「船長同士が同時に撃つ2発の銃声が開戦の合図!!大人しく…………」



どうか受けないで―――無意識に握り締めた両手にそんな祈りを込める。だけど次の瞬間聞こえてきた2発の銃声により、その全てが崩れ落ちた気がした。


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