本日二度目の大波。中には三匹のシーモンキー。(こっちも二度目)



「逃げろ!!シーモンキーだ!!!」

「ついて来てやがったのかーっ!?」

「まずい!!風がねェーっ!!」

「すぐに帆をたたんで!!」

「漕ぐんだ漕げ〜っ!!!」



なんとか逃れようとナミの指示に従って船を動かす。私は見ているだけだけど、隣のロビンが「大変ね」なんて全く大変だとは思っていないようなトーンで呟いた。



「緊急報告!!緊急報告!!!12時の方角に船発見!!」

「何だ敵か!!?」

「いや…それが―――“旗”もねェ“帆”もねェ!!何の船だか…」



上で海を見ていたウソップが叫ぶ。海を見渡すと確かにそこには旗も帆もないただの船が浮かんでいた。何の為に海にいるんだ、と問いかけたルフィにウソップがまた大きな声を上げた。



「わからねェ…!!それより、乗ってる船員が………!!異様に少ねェし…それに…!!すげェ勢いでイジけてるぞ!!!まるで生気を感じねェっ!!!」

「どういうこった!?大丈夫かあの船!?このまま波に飲まれちまうぞ!!!」



船が隣に並び、舵をきらなきゃ波に飲まれると大声で伝える。すると船員達が立ち上がり大声で言い合いを始める。ルフィは好意でやった事なのに、相手の船にとってはそうではなかったらしい。放っとけ、といい放ったサンジの言葉に従いメリー号はなんとか波から離れられる、次の瞬間ザバァンっていう叩き付けられるような水音が聞こえてさっきの船は見えなくなっていた。さっきの大波はシーモンキーの悪戯だったらしい。
落ち着いた頃からウソップに変わってロビンが上がって辺りを見回している。



「おいロビンなんか見えるか?」

「島がずっと見えてるわ」

「言えよそういう事は!!!」



ウソップとルフィの揃った声が重なった。ルフィは不満げに文句を垂れる。島が見えたら叫べ、とそういう事だろう、ふざけているようにしか聞こえなくもないけど。
ロビンは綺麗に無視を決め込み霧が濃いことをナミに伝え、ナミがチョッパーに前方確認を任せる華麗な連携プレーに感心。ルフィそれを見て更に不満げに表情を歪ませる。



「お前なァおれ達がどれだけ島を楽しみにしてると思ってんだ!?」

「ごめんなさい気を付けるわ」

「そうか気をつけるならいいや」



――さすがと言うかなんというか。ルフィの扱い方をわかっているようなそんなやり取りに思わず笑ってしまうと、ルフィが眉間にシワを寄せて私にどうした?と訊ねてきた。何でもないよって答えると首を90度に傾けてじっと私を見る。ルフィの顔がどんどん近づいてきて一歩後ずさると、そーか…?なんてまだ納得はいってないみたいだけどそう呟いて離れた。



「――――ところで…さっきの船気にならねェか?船長がいねェとか…航海士がいねェとか…旗はねェわ帆はねェわ、やる気もねェわまとまりねェわで…海賊の一団として成り立ってねェんだ!!」

「海戦でもやって負けたんだろ――で船長が死んで……色んなもん奪われて…………」

「いやいやそれがよ…!!よく船も見たんだ、そしたら戦闘の形跡もねェんだよ!なのに海賊にとって“命”とも言えるようなもんがあの船には何もなかった!!」

「――じゃ海賊じゃねェんだろ…気にすんな」

「…………んー……どうみても海賊だと思うんだがなあいつら」



意外なことに一番疑問を抱いているのはウソップだった。否…ウソップはいつも島に入ってはいけない病だとか何だとか言ってるくらいだからいつもの事なのかもしれない。悪い予感がする…と呟いた言葉に気付いているのかいないのかは知らないけど、みんなは島に上陸する気満々のようだ。
だけどホントは、胸がソワソワするのは私もウソップと同じだった。理由はないけど、とにかく何だかソワソワする。少し考えてみれば今まで上陸した島で何もなかったことがほとんどない、って言うのが理由でもあるのかもしれないけど。



「さーて町があるかなー!!造船所があるといいなー!!」

「ルフィ、すぐに上陸しちゃダメよ!!」

「いい船大工が仲間になってくれるかな」

「海岸が見えた!!イカリの準備!!」

「うわっ…!!おいみんな聞いてくれ…!!」

「チョッパー!ウソップが「島に入ってはいけない病」だ」

「それは治せねェ」



いつもの調子に何だか安心する。不安なのも怖いのも、今までずっとそうだったからと思うとソワソワする気持ちも少し落ち着いたような気がした。
濃い霧の向こう側にぼんやりと見えてきた、あれが次の島なのだろう。また新しい冒険が始まるんだと思った。楽しみであり、不安もあり…私もなんだか馴染んできたなぁって思わず苦笑いが零れた。


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