「黄金!!黄金!!黄金!!」
メリー号に響き渡る黄金コール。船内に大量に持ち込まれた財宝たちは、足元にゴロゴロと敷き詰められている。キラキラ、眩しいくらいに輝くソレは紛れもなく黄金や宝石。生きてる間にこんな物を目にする日が来るなんて思ってなかった。私の胸は不思議な高揚感でいっぱいだ。
船内は早速、これで何を買うかっていう話題で持ちきり。だけどその前に空から下に降りなきゃいけなくて、目の前にはここに来たときと同じような大きな門がある。コニスさんとお父さん、それからスーも見送りに来てくれている。
「降りちまうのかーおれ達」
「いざ降りるとなると………確かに…名残惜しいな」
「この真っ白い海ともお別れだ」
「空島楽しかったなー。恐かったけど…」
海を眺めるチョッパーがチラッと私を見た。そうだね、って笑って返すとチョッパーもはにかむみたいに笑ってくれてる。
それぞれの思いがある。やっぱりみんな、ちょっと寂しいのかもしれない。この綺麗な景色ともお別れ。…きっともう、二度と来られないであろう最後のお別れ。
「ではみなさん!!私たちはここまでですので!」
「お元気でみなさん!!」
コニスさんたちは最後まで見送りをしてくれる。また会おう、って言いたいけどそれが叶うかどうかはわからない。きっと、もう叶わない。そう考えるとやっぱり少し寂しくなってくる。
「ではすぐに帆をたたんで船体にしがみついていて下さい!!」
「おい!!おっさんの言う通りに!!だいぶ高速で行くみてェだ!!」
「そりゃ7000mの坂道だもんな!!急げ!!」
「黄金も部屋に運んじまえ」
忙しくなる船内。私も黄金を船内に運び込むのを手伝う。すると外では大きな音がして何事かと中から外を覗き込めば、そこにはあの鳥がいた。私たちが空島に来る為に捕まえたあの鳥。名前はなんだっけ…そうだ、サウスバード。
「―――さて…船長。次の島への記録もバッチリ!!」
「んんそうだ!!ここ降りたらまた新しい冒険が!!!始まるんだ!!!野郎共!!そんじゃあ…………!!!―――青海へ帰るぞォ!!!」
空島の冒険の終わり。同時に、まだ知らない新しい冒険の始まり。心を弾ませていると、コニスさんの声が聞える。門を抜けるのはもうすぐ。コニスさんの最後の声が響き渡る。
「みなさん落下中!!お気をつけて!!!」
突然の浮遊感だった。完全に船から身体が浮いている。あまりに突然のことだったから思考が追い付かず、身体が船から離れていく。危ない、やばい、このままじゃ――!と、何度も何度も経験した危険信号が頭を埋め尽くす。
慌てている私のお腹に伸びてきた腕がぐるっと巻き付いて、そしてそのまま船まで引き寄せてくれる。ルフィに抱き寄せられるみたいな今の状況に少し照れたけど、相変わらずのニカッとした笑顔にそんな気持ちは一蹴される。きっとルフィにはそんな気持ちないんだろうな、ってそう思うと自分がちょっと恥ずかしくなった。
ズボッとはまった雲を抜けると、再び船は急降下。ルフィから離れて近くの柱にしがみつく。
「…!!!」
「ぎゃああタコ〜!!!」
真っ黒に船を覆ったそれ、巨大なタコはそっと船を包み込む。襲われたのかと思った不安はほんの一瞬だった。
「バルーンだっ!!」
「うわ〜面白ェ〜!!!」
「お…おれァ…おれァもうついにあの世に逝ってしまうのかと…」
船は減速し、ゆっくりゆっくり下に降りていく。まるで気球のようなそんな仕組み。安全になったようで、柱から手を離して自分の足で歩いた。最後まで不思議で、夢のような出来事。
――カラァー…ン
―――カラァー…ン
「………!」
鳴り響く鐘の音。驚いて空を見上げた、そこにはもう雲しか見えない。だけど確かにそこに在る。そこに、居る。
「むー!お腹空いてない?」
「…ちょっと、空いたかも」
「私ももうペコペコ。後でサンジくんに何か作ってもらいましょ!」
ふわふわ、空を浮くそれはとても気持ちが良い。
空島とのお別れ。これで本当に、夢みたいだった空島の冒険は、終わりを告げた。
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