心がスッカリ晴れ渡ったように、さっきとは違う“空っぽ”が私の中を占領していた。降り止んだ雷も、真っ青な空も、全てが、終わったんだと私たちに笑い掛けている。
「むー…包帯変えないと」
「あ…ありがとう…」
右腕に巻かれた包帯は、赤黒い色に染め上げられていた。くっついているみたいで、包帯を剥がす時には痛みが伴うけど、こんなのもう何とも思わない。眉をしかめたチョッパーが、固まった血を丁寧に拭き取ってくれてあの傷が露になった。
あの時はちゃんと手当てする時間もなくて、取り敢えず止血の為の応急処置で済ませていた。だけどあちらこちらにぶつけていたせいで、それも初期の段階で意味がなくなっていた。自分で見るのも痛々しい。刺されたんだから当然かもしれない。だけどこんなの、みんなの傷に比べたらどうってことない。
私の手当てが済むとチョッパーは倒れているワイパーさんの手当てを始める。私もチョッパーの隣でそれを手伝った。
「おーい!!!」
遠くから聞こえてくる、あの声。勢い良く振り返ると、そこにはナミとコニスさんと狐のスーと、ルフィがいた。大きな荷物を引きずって走ってくる。その元気そうな姿に、胸が熱くなった。
「みなさん…ご無事でよかったァ」
私たちの所に辿り着いたコニスさんは、大きな声で泣き出した。その姿を見てまた泣きそうになる。
ああ…本当に……本当に全部、おわったんだ。
私を見たチョッパーは「行って来ていいぞ」って言ってくれて、私もナミとルフィの所まで駆け寄った。二人とも傷はあるし服もボロボロだけど、元気に笑っている。それが、凄く嬉しかったんだ。
「もうっ!顔見た瞬間泣かないでよ…」
ナミがぎゅうっと私を抱き締めてくれた。その温かさと力強さが、私を安心させるにはじゅうぶんすぎて何故だか涙が止まらない。
「そういやコニス…オヤジは」
「え……それが…その……!!!私をかばって…エネルに…!!」
「!」
「まさか…」
「………………」
「コニスちゃん…」
「コニスさん…」
「コニス……………」
「っておめェの話だよっ!!!」
「生きててすいません!!!」
平和だなぁって感じる。
まるで漫才のようなやり取りに、思わず笑ってしまう。ナミはそんな私を見て背中を軽くポンポンっと叩き、彼女も小さく笑ってみせた。
コニスさんのお父さんは無事だったらしい。現に今こうやってここにいるんだから。
「むーも大丈夫か?」
手に持った魚を私に差し出してくれたルフィが、頷く私を見てニッコリ笑ってみせた。私の頭に乗ったままだった麦わら帽子ごと頭を撫でると、ルフィはそのまま帽子を自分の頭に乗せた。
麦わら帽子をかぶったルフィは、いつもの見慣れたルフィだった。当然の事がこんなに嬉しいなんて、今までこんな風に感じた事はなかった。
「よォーし食うぞッ!!!」
零れそうになる涙を拭って、ルフィに敗けないような笑顔を向けた。更に笑ったルフィから魚を受け取り、みんなが揃ったご飯の時間が始まりお腹いっぱい食べた。
そして始まる宴は、いつものように賑やかで楽しく、いつまでも続くような気がして笑い続けた。
「飲まないの?」
「…お酒は飲めなくて」
「ジュースもあるわ」
ロビンが私にオレンジジュースを差し出してくれた。隣に並んで皆が歌い、踊り、笑う姿を眺めながら色んな事を思い出して、色んな事を考えて、色んな事を感じる。結論はひとつ。
私って幸せだなぁって事だった。
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