「“排撃”!!!!」

「んな…!!なんじゃありゃあ!!!」


蔓に向かって、ワイパーさんが放ったそれは凄まじい威力で蔓に大きな穴を空けた。反動で身体が弾かれ、そのまま地面に向かって落ちていく。



「倒れるぞォ〜!!!!」



ミシミシと、蔓は僅かに傾く。そしてゆっくり、ゆっくりと、だけど確かにそれは倒れていく。
危険だからと私たちはまた少し離れた場所まで移動する。サンジやチョッパーを置いたままにしていたけれど、彼らは無事にそこにいる。



「遺跡がむき出しに…………!!!」

「地盤を砕くつもりである!!!」

「ワイパーが倒れてるんだよ!!」

「ゾロもだ畜生!!!」



雷は集中したように蔓に向けて降り注ぐ。雲に埋もれていた遺跡はその姿を表し、そして落ちてきた雷によって打ち砕かれていく。
ゾロも、ワイパーさんもその場に残してきたまま。



「ムダだ…エネル…お前には落とせやしない…ハァ………ハァ…シャンドラの地に生きた誇り高い……戦士達の歴史を…!!!」

「ワイパー!!」

「どこにあろうと力強く!!!生み出し…育む!!!この雄大な“力”を!!!お前には落とせやしない!!!お前がどれだけの森を燃やそうと!!!どれだけの遺跡を破壊しようと!!!」

「逃げてワイパー!!!死んじゃうよ〜!!!」



倒れていく蔓のすぐ傍で、立ち上がったワイパーさんが声を張り上げた。擦れた声は、それでも大きく響き渡る。
アイサちゃんも叫ぶ。今にもワイパーさんの元へと飛び出して行きそうな小さな身体をロビンに抑えられながら、必死で叫ぶ。



「大地は、敗けない!!!」



一層大きく、力強くなったワイパーさんの声が頭に響く。
蔓は傾いていく。
雷だって落ちてくる。

だけど大地は、びくともしない。
強い。
強いのだ、この大地は。



「ワイパー!!ワイパー!!!」

「こっちへ来いっ!!蔓が倒れるぞ!!!」



アイサちゃんは諦めず、未だ蔓のすぐ傍に居るワイパーさんに向けて叫び続ける。
蔓はゆっくりと傾き続ける、かなりの角度がついた。そして、小さい何かが舟に向かって、今。――空を飛んでいる。あれはナミとルフィに間違いない。
ここまで来た、今はもう私たちに出来る事は願う事、祈る事だけだった。大きくなる真っ黒で巨大な雷雲を見上げながら、色んな感情が込み上げてきた。もうすぐ終わるんだと。堅く握った手に、祈りを捧げる。
どうか、どうか無事で、無事でいられますように、と。



「ぉぉぉぉおおおおお!!!」



―確かに、聞こえた声。
顔を上げて見上げれば、



「うおおおーっ!!!ルフィうおお〜っ!!!」



真っ黒なだった巨大な雷雲は、静かに弾けて――消えた。視界が明るい。
…やったんだ、ルフィは敗けなかったんだ。喉が震えて、唇を噛み締め、霞む視界がそれを理解させる。



「鳴らせェ麦わらァ!!!“シャンドラの灯”を!!!」



ワイパーさんの声が、



「聞かせてくれ小僧……!!!“島の歌声”を!!!」



ガン・フォールさんの声が、ルフィには届いているとそんな気がした。だから皆、祈るんだ。皆がその“音”を、待っているから。



「行けー!!!ルフィ〜!!!」

「………うるせェなウソップ…何をギャーギャーと…」

「んん…ん?」



サンジもウソップも、ピエールも目を覚ました。
あとは、ルフィだけ。その“音”を、響かせる。それで全てが、



「届けェェエエエ!!!」


―――カラァー…ン



終わる。
―……終わった、のだ。



「やりやがったあんにゃろう〜!!!」

「何て美しい………」


「いつか…こんな時が来ると…信じた…」


「………ノーランドの聞いた鐘の音ってのは…」



透き通った音は、まるで傷だらけの島を癒すように優しく鳴り響く。
大きくて、優しくて、力強い鐘の音は、終わりを知らせるかのように何度も音を響かせる。



「……終わった…」



サンジの大きな手が、あの時…エネルの舟に乗っていたあのと同じように麦わら帽子の上に乗る。ぼろぼろこぼれる涙は、抑え切れずにスボンにシミを作っていく。拭っても拭っても止まらない。
怖いのも不安なのも、全てが涙になって流れ落ちているようで。



「全部……終わったんだ」



きっと鐘の音は届いている。
この優しい音色は、下に住むみんなにもきっと、きっと届いているのだ。


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