空から伸びる稲妻は、もう数えきれない程、無数に空島を焼け焦がしてゆく。遠くから聞こえる落雷の音に、響き渡る人々の悲鳴。――このままでは本当に、空島がなくなってしまう―…そんな風に思いながら、私たちはただソレを、眺めるだけしかできない。



「…!!!?」



突然眩しい光が辺りを覆うと、その瞬間―ドォン―と雷が落ちる。私たちの目の前の遺跡に落ち、それらは凄まじい音を立てて辺りに飛散した。その衝撃で、私たちの立っていた雲は激しく揺れ身体が宙に浮く。咄嗟に耳を塞いだけど意味もなかった。



「なんてでっけェ雷…!!ここにいちゃ空の塵になっちまう!!!」

「みんな!!船へ急いで!!!私もルフィを連れてすぐに行くから!!!」

「よ!!!よよよし!!!わかった!!!」



ナミはそれを言い残し、厳しい剣幕でウェイバーを操り、巨大な蔓を駆け上っていく。すごく…不安になった。もし、ナミやルフィの身に何かあったとしたら…そう考えるとまた恐くなって。



「急げロビン!!むー!!こいつら何とか船まで運び出すん……………!!?」

「ワイパー…………」



アイサちゃんが呼んだ名の主は、真っ黒な身体を起こして確かにその足で、立ち上がっていた。
ウソップはサンジに手を掛け、ロビンはピエールとガンフォールさんの様子を伺い、私はチョッパーを抱えたまま目の前のゾロにそっと手を伸ばした。私なんかに彼が運べるわけないんだけど…そう、思うとまた、自分の無力さが一層際立ったようで悲しくなる。いつも強くて優しいゾロが、こんな風に動かなくなるなんて…。目の前の現実が、予想していた未来を覆い、見えなくなっていく。



「……ぁ…ゾロ……!!」

「変なおっさん!!」



彼の腕に触れた時、ソッと目が開いた。苦しそうに咳をし、私の顔を確認すると口許を歪めて微かに笑みを浮かべる。



「なんて顔してンだ…おめェは…」



ああちゃんと生きてる、今私に話し掛けてくれてる。それだけで滲む視界。でも泣いちゃダメだって、涙を拭って「よかった」と笑ってみせた。うまく笑えてたかわからないけど、そうしなきゃ泣きそうで…それでも泣きそうだけど、ゾロも確かに、笑ってくれていた。



「よかった気がついた!!おい!!時間がねェんだ歩けるか!?」

「…急ぎましょう。ここにいても何もできない」



まだ意識の戻らないサンジをウソップが運び、ガン・フォールさんとゾロはよろめく足で歩き始める。私もチョッパーを抱えて歩く。だけど振り返った場所にいたワイパーさんは、アイサちゃんが服を引っ張ったって動きだす気配はどこにも無い。止まりそうになる足を動かすように引っ張られた腕。見上げるとゾロが、ただ前を向きながら私を引っ張っていく。



「ワイパー!!!逃げなきゃみんな死んじゃうよォ!!!ワイパー!!!」



…だけどその腕は直ぐに解かれた。動かないワイパーさんを、彼が動くまで離れないであろうアイサちゃんを置いていく事は出来なかったから。自分の命も懸かっているというのに、彼らの優しさはどこまでも本物だ。


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テーマ「人外ファンタジー」
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