今度はルフィがどんどん傷つけられていく。エネルが持っている棒により、弾かれ飛ばされ、そして舟の上部にある黄金に押さえ付けられる。何とか逃れたのか2人はまた距離を取り、エネルが雷を放ち始めた。持っていた棒が形を変え、先端には三つに分かれた刃物が現れる。



「形ある雷と思え!!!貴様などと遊んでいるヒマはないのだ!!!」



刃物をルフィに向ける。ルフィは避けて黄金を掛けのぼっていき、そして攻撃を仕掛けようと声を発する。その瞬間、私たちの目の前に居たはずのエネルの姿が、消えた。



「ルフィ!!!後ろ!!!」

「ピエエエ!!」



アイサちゃんとピエールの声がして、2人が居た事に気付く。ルフィはその声に気付いて後ろを振り返ると、私にも見えた。黄金からエネルが出てきたのだ。突き出された刃がルフィに突き刺さるように見えて、一瞬思考が停止する。だけどどうやら避けていたらしく、ルフィの手がそれを掴んでいた。そして上に伸びた足が、勢い良くエネルを地面に叩きつけた。間髪入れずルフィの拳がエネルに向かっていく。だけどこれは“心網”により全て塞がれ、今度はルフィが叩きつけられ、舟にめり込んだ。
見ていただけでゾッとした。ドッと疲れた。



「空島観光…悪い時期に来たものだな青海人……私は神だぞ!!!何事も意のままにする!!!私の想う世界を創るのだ!!!青海からひょっこり現れた訳もわからん小僧にそれを邪魔されてなるものか…どうだ一瞬に見物するか!!?この国の果てゆく姿を……!!」



エネルは舟にめり込んだままのルフィを横目に移動しはじめる。そして赤い絨毯の先にある椅子に腰掛け、二つの球体にそれぞれの手を添え、凄まじいパワーの電気を放ち始めた。
私はとりあえずルフィに駆け寄り、埋まったままの顔を出すのを手伝った。引き締まった胴体にしがみ付き、力一杯後ろに引っ張る。ルフィが地面から抜け出した時には、舟はガタガタ揺れながら、少しずつ動き始めている。



「どうしようルフィ!!私達…!!!」



ナミの言葉の続きは私にでもわかった。このままだと、どこかに連れていかれてしまう。連れていかれたらきっと……きっともう二度と、みんなのところには戻れない。感情が溢れそうになっている。不安しかなくて、怖くて…



「ガタガタ騒ぐな!!」

「だって…!!でもっ!!」



パスッと、ルフィの麦わら帽子が私の頭に乗った。



「未来の海賊王の仲間がよ…情けねェ顔すんじゃねェ!!!」



…――――どうしてだろう。それだけで不安が薄れていくのは。たったそれだけで、どこかで“大丈夫”だと思えてしまうとは。まだ不安も恐怖も消えはしないけど、ルフィの存在が私たちの心を軽くしてくれるのは。



「カイゾク王?そいつはどこの王様なんだ…?」

「世界の偉大な海の王だ!!!!」

「ご立派だな…………決着をつけようじゃあないか…この空で!!!」



舟は更にガタガタ不安定に揺れる。そして分かる、ほんの少しかもしれないけど、この舟は確かに浮いている。
そしてこれから始まる。この二人の…私たちの、本当の戦いが、始まる。


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