エネルが向かっていたのは舟の外だった。エネルは舟から下を見下ろし、彼の武器なのであろう金色の棒を右手に握っていた。



「――――やはり…生き残った5人の…誰でもない様だ…」

「え?」

「――実に不愉快…私の“予言”は外れだったというわけか…」



下に誰かが居るのだろうか。私とナミは再び顔を見合わせ疑問を浮かべた。だけどその疑問は、聞こえてきた声により直ぐさま解かれ、また心臓がドキドキと動きを速め始める。



「お前かァ!!!エネルって奴はァ!!!」



聞き慣れた声を発する彼は間違いなく、ルフィだった。今までずっと強張っていたナミの顔が泣きそうな笑顔を浮かべている。私もその声、その姿が、一体どれだけ心強い事か。色んな感情が一気に込み上げてきて、また視界がじんわり滲んでいた。



「何やってんだお前…おれの仲間によ」

「?…どのゴミの事かな」



睨み合う二人が居る。



「口を謹めよ…私は神だ!!」

「お前のどこが神なんだ!!!」



ルフィの言葉にエネルは更に鋭くなった視線を向けた。ナミがルフィに注意を呼び掛けると、エネルの鋭い視線は素早くナミを捕える。咄嗟に手で口を塞ぎ、ガタガタ震えながらゆるゆると首を横に動かした。



「…………ヤハハハ…聞こえてきた天使達の宴……!!住人達がスカイピアの運命を知ったようだぞヤハハハ……足場を失う前に一体どこまでにげきれるかな…」


「お前のどこが!!神なんだ!!!!」


「…今にわかる」



再び響いた、ルフィの力強い声。余裕の笑みを浮かべたエネルがルフィを見やると、ルフィは舟を掛けのぼっていた。腕を伸ばし高い場所に掴まりながら、彼の姿はどんどん私たちに近付いてきている。あっという間に、エネルと私たちのすぐ目の前まで上り詰めた。
エネルも右手を雷に変え、バチバチと電気が弾く音を鳴らしながら戦闘体勢。不安が一気に押し寄せた。振りかぶられた右手の雷が、ルフィに向かって伸びてゆく。



「“神の裁き”」


「…っルフィ…!!!」

「ルフィ!!!」



私とナミの声に、雷がルフィに向かっていく音が聞こえた。雷の勢いは凄まじく、舟の一部は愚か、前にあった土壁までをも一瞬で砕いてしまう。辺りは真っ白な光に包まれ、それが落ち着いた頃には向こう側の土壁には大きな穴が開いていた。煙が立ち込め、静かな空気がその場を流れる。
最悪を思った。最悪の事態が、頭に浮かんでいた。



「……ルフィ…!」



だけどルフィは無事だった。エネルは「上手く避けた」と相変わらず余裕に笑い、更なる雷を彼に向けた。それでもルフィはケロッとした顔で、何が起きたか分かっていないような表情を浮かべてエネルを見ていた。痺れを切らしたエネルはルフィに駆け寄り、彼に触れ、



「むーこっち…!」


「1億V!!――“放電”!!!」



ナミに引っ張られて舟の影に隠れる。それでも頭に鳴り響くようなバリバリっていう音と爆風が身体に襲い掛かってきて、私たちは必死で舟にしがみついた。飛散してくる電気が当たるたび、静電気のような小さな痛みを身体中に感じる。



「ルフィはゴムだから…!!雷が効かないのよ!!!」


「やめろォ!!!!」



隣でナミがそう教えてくれていると、ルフィの声が聞こえて雷が止んだ。そしてエネルが飛んできた。やられたのはルフィじゃなくて、エネルの方だった。
ルフィの拳がエネルを追い詰めている。何度も打ち込まれたパンチはやがて、エネルの身体を床へと倒れこませた。よろめきながらやっと立ち上がり、ルフィから離れた場所に移動。



「何だと言うのだ…………貴様…!!!」

「おれはルフィ!!海賊でゴム人間だ」

「ゴム?」

「雷なら効かねェ!!!」



ルフィが再びエネルに向かっていく。だけど今度は攻撃が当たらない。…否、“当てられない”のだ。ルフィはエネルの“心網”により、完全に動きを読まれているのだから。


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