影に隠れ、息を殺してナミと一緒に座り込む。見つかっちゃいけないような気がして息をするのも躊躇いながら、意識がないままのチョッパーを抱き締める。



「他愛もないゲームさ。お前達がこの島に入って3時間が経過した時、82人の内、一体何人が無事立っていられるかという“生き残りゲーム”!!この私も含めてな」



エネルは言った。これは“ゲーム”なのだと。今までここで起きてきた、人が死んだり怪我してきたりした事は全部ゲームなんだとそう言ったのだ。
信じられなくて思わず手に力が入る。それを見たナミはそっと私の手を握り、眉を潜めて何とも言えない表情で私を見た。



「私の予想は生き残り6人…!!……あと3分でその3時間がたつ――つまり今、この場に7人もいて貰っちゃあ困るというわけだ。神が“予言”を外すわけにはいくまい」



ギュッとナミの手に力が入るのがわかった。エネルが言う6人になるには、今この場には1人多く居る。隠れていたからばれていない、そんな事は無かった。エネルはしっかり私たちの存在にも気が付いている。…エネルの前に立っているのが4人だって言う時点で、そこに居るのは5人。予想が6人だという時点でもうそこには1人が足りていないのだから、ばれてるのは至極当然だったのかもしれないけど。



「―――さて誰が消えてくれる…そっちで消し合うかそれとも私が手を下そうか…」



沈黙が流れる。その沈黙を破るように声を発したのは、ゾロ。



「………お前どうだ」

「私はイヤよ」

「おれもだよ」

「おれもごめんだな……」

「我輩も断固拒否する!!」



皆が、当然ながら消える事を拒否。それぞれがそんな言葉を吐くと、四人の視線は此方に向いた。ナミも当然嫌だと言う。私だって嫌だ。…だけど。この中で一番必要無いのはきっと…――――私、だ。
嫌な感情が胸を渦巻いた。何か言わなきゃと、固く閉じられた口をゆっくり開きかけた時、



「お前が消えろ」



皆の武器が一斉にエネルに向いた。零れかけていた言葉を飲み込んで、緊迫した空気の中に身を投じる。



「ヤハハハハハハ…!!…………この私に…!?消えろと…!?」



怒る事わけでも無く笑い声を上げる。薄ら笑いを浮かべたまま怯む様子もなく、それどころかどこか楽しげに言葉を並べていく。自分が“神”だという事を誇示するかのように、不気味な笑みがその顔に浮かんでいる。



「悩み多きこの世だ…子羊が何を望もうと構わんが、この国にはそもそもの間違いがある…!!」



そんな彼の言葉を一蹴するように言葉を挟んだのは、ガンフォールさんだった。



「…………くだらぬ言を言っておるヒマがあったら“神隊”の居場所を答えよ!!!貴様の目的は一体何だ!!!!」

「…“還幸”だよガン・フォール」



“還幸”と、聞き慣れない言葉に頭は追い付かない。



「私には還るべき場所がある。私の生まれた空島では“神”はそこに存在するものとされている。“限りない大地”と人は呼ぶ…!!!そこには……見渡す限りの果てしない大地が広がっているのだ。それこそが私の求める“夢の世界”!!!私にこそふさわしい大地!!!“神の島”など…こんなちっぽけな“大地”を何百年も奪い合うなどくだらぬ小事!!」



盛大な笑みを浮かべながら、彼の自信に満ちた声が響き渡る。彼の言葉はまだ止まらない。



「…いいか!お前達の争いの原因はもっと深い…根元にある。よく考えろ…雲でもないのに空に生まれ、鳥でもないのに空に生きる。空に根付くこの国そのものが!!!土台不自然な存在なのだ!!!!土には土の!!人には人の!!神には神の!!還るべき場所がある!!!!」

「………まさか貴様!!!」

「“まさか”という程の事ではない。私が“神”として自然の摂理を守るだけの事―――そうだ!!!全ての人間を…この空から引きずり下ろしてやる…!!!」



エネルが演説し続けていた難しい言葉たちの意味が今、彼の言葉によって理解させられる。


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