泣き止んだルフィは落ち着きを取り戻し、皆で状況を確認し合う。



「そうかそりゃ大変だったな…!!お前らヘビに食われたのか…!!」

「だから!!!あんたもそうなのよ!!ここがヘビのお腹の中なの!!!」

「食われたのに気付かないなんてニブイやつだな…!!」

「え!!?じゃあここがあの大蛇の胃袋の中なのか!!?おれも食われたのか!?」



ルフィの鈍さには私でも苦笑いが漏れた。自分が食べられた事に気付いて無かったなんて、ルフィらしいというか何というか。しかも話を聞いていると、このヘビの機嫌の悪さは脱出しようと中で暴れていたルフィのせいらしい。二度目のナミの拳が振り下ろされたのは言うまでもないだろう。
しかしそれによってヘビは更に盛大に暴れ始める。落ち着いていた私達は再び真っ暗な穴を落ちていた。ヘビは大暴れしているみたいで、色んな場所に身体をぶつける。痛い、怖い…そんな思考を和らげてくれたのはルフィの腕だった。



「我輩は飛んでゆく」

「ええ!!もう切りがない!!ウェイバーに掴まって!!一気にエンジンかけるから!!」

「むーはナミに掴まってろ!!!おいお前っ!!おれに捕まれ!!」

「行っっっくわよ!!!」



ルフィによって私の身体はウェイバーに乗せられ、アイサちゃんが掴まったルフィがウェイバーに掴まる。私はナミにしがみ付き、彼女はそれを確認すると一気にエンジンをかけ、発進。



「ぶほァ!!!」

「ぎゃああ!!!」



ウェイバーが急発進した事により、後ろに掴まっていたルフィ共々アイサちゃんが反対方向に吹っ飛ばされる。私達とは反対方向、要するに二人は再びヘビのお腹の中へと戻っていったのだ。それを見たガン・フォールさんは彼らを助けようとピエールに命令。だけどピエールはガン・フォールさんを放り投げ、一匹で腹の中に戻って行く。
私とナミとガン・フォールさんは、真っ暗だった景色から開放的な景色に飛び出した。



「え〜っ!!!…………っっ落ちてない!!?」

「うむ急降下である」



2人の言うとおり、私達は落ちているわけだけど。だけどこの落ち方はただ脱出できただけではないようで、下が見えない程、私達はどこまでも落ちていく。恐怖を少しでも抑えるように硬く目を閉じ、身体に感じる風に身を任せるしか出来ない。



「いたた…ありがと変な騎士……むーは大丈夫?」

「ん…平気…」

「それにしても……ここどこ!!?ルフィとアイサを置いてきちゃった…」

「ピエールを信じよ。やる時はやる鳥であったり、馬であったり。しかし…見た事のない場所だ………!!」



大蛇に食べられたままのルフィとアイサちゃんは、ガン・フォールさんの相棒であるピエールに任せてきた。きっと大丈夫、きっと。
何度か大きく息を吸い込み、乱れた息を落ち着かせながら辺りを見回す。そこには、木やツルに侵食されている古びた大きな建物があった。これが何なのか私に分かるはずない。だけど何だか懐かしいような、胸に染みるような“歴史”というものを感じる。



「……大蛇の様子が変…!!!……何か探してる様にも見えるし、ルフィがまた中で何かやってんのかしら…」



ナミが言う通り、大蛇は弾むような鳴き声を上げながら辺りを見回している。少しずつ進みながら何かを確認しているようにも見える。その様子をしばらく眺めていると、大蛇は突然動きを止めた。



「……泣い、てる…?」

「………!?ほんとだ……」


――ジュララララララララァ!!!



響き渡る鳴き声。鳴いているのではなく、泣いている。目から落ちた雫を私たちはしっかりと目にした。ポロポロ、零れる涙は地面に染みを作り、その声は私の胸をぎゅうっと締め付ける。
すると突然―バリリッ―という音が聞こえ、辺りが眩しい程の光に包まれた。ああまた、嫌な予感が、胸を騒つかせる。バチバチと弾くような光と音を放つソレは大蛇の頭ほどの大きさになり、



「“神の裁き”!!!」



大蛇に、落ちた。
そこに居たのはエネルで、彼が大蛇に雷を落としたのだ。凄まじい音と光が辺りを包み、一瞬のうちに大蛇は真っ黒に焼け焦げていた。ゾッと、嫌なものが背筋をなぞる。声にならない恐怖がまた私を支配する。



「あれ!?ゾロ!!ロビンも…」

「そこかよ!!!お前らいつの間に出たんだ」



恐怖に包まれていた私は全然気付いていなかったけど、そこにはゾロとロビンがいた。2人とも少し怪我をしているようだけど大丈夫そうで、だけど地面にいたチョッパーは動かないまま横たわっている。酷い怪我に、思わず眉間を寄せる。そっと抱き上げればナミがぐいっと私の腕を引く。



「ここは危険だわ、」



しっ、と声を出さないように合図を受け、チョッパーを抱き締めたままナミと一緒に瓦礫の影に隠れる。少しだけど上下するチョッパーの胸とその温もりに、彼が未だ生きていることを感じた。


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -