森に入ってからもずっと誰かに追い掛けられている。私とアイサちゃんは落ちないようにナミにしがみ付いているだけだけど、ウェイバーを操縦するナミは必死で前に進む。



「もう何なのよこいつら!」



雲の道を走りながら泣きそうなナミの叫び声が森に響き渡った。私とアイサちゃんだって泣きそうで、もう本当に祈るしか出来ない。
そのうち雲を抜けて固い道にウェイバーが落ちる。ガタンって鈍い衝撃に身体が跳ねて、キキィっていう頭に響く甲高い音に思わず耳を塞ぎたくなった。ナミにしがみ付いてるからそれは出来ないけど。



「アイサ!!!ここで何してる!!!」

「むー!!!ナミ!!!てめェら何でここに!!!」

「ああっ!!ゾロっ!!!みんなは!!?」

「ワイパー!!」

「何を企んでやがる青海人!!!アイサ!!そいつから離れろ!!!」



この状況を一瞬で理解するのは私には少し難しかった。ただ分かったことは、ゾロがいてワイパーって呼ばれた男が居て、とにかく人がいて皆が戦ってたんだって事。あとは、私たちが居るのも危険だって事。ワイパーと呼ばれた男は私たちに大砲のような武器を向け、躊躇いもなく発砲した。向かってきている弾を避けるなんて出来ない。ぎゅっと目を瞑ってナミとアイサちゃんにしがみ付いて“その時”を覚悟した。



「おぬしらなぜこんな場所へ来た!!?」



フッと身体が浮く感覚に恐る恐る目を開けると、ピエールに跨ったガン・フォールさんがウェイバーごと私たちを持ち上げてくれていた。無傷な自分達の状況を理解し、良かった助かったんだと安心。だけどそれもほんの一瞬。



「なぜって…!!」

「鬼ーっ!!ワイパーの鬼〜!!!」

「だって…すっごい大っきな…ヘビが…」



大きな影に目を向ければ、そこには口を開いたさっきの巨大ヘビがいて、



「あああああ!!」

「…っ、」



飲み込まれた。
真っ暗な道をただ下に落ちる。辿り着いた地面におもいっきり右肩から背中を打ち付け、一瞬呼吸が止まったかと思った。鈍痛に悲鳴を上げる身体を無理矢理起こせば、周りには木や石、コンクリートが沢山落ちている。そこにぶつからなかっただけでも良かったのかもしれない。もし…なんて事を考えるとゾッとした。
痛む右腕に目をやれば、包帯に滲む赤。まだ全然治っていないその傷からはあの時のように血が滲んでいた。



「…むー、腕……!!」

「大丈夫だよこれくらい」

「大丈夫じゃないでしょ!!!こんなに…」


「むー〜!!!ナミ〜!!!変なおっさん!!!何やってんだお前らこんな不思議洞窟で〜!!!」



ナミが私の右腕を掴んだ時に、聞き覚えのある、あの声が聞こえてきた。皆が視線を向けると、そこに居たのは浮かんだ顔のその人で。左手に木の棒を握り締め、泣きながら突っ立っていた。



「うっ…むー〜!!!」

「ちょっ…ルフィ!!!」

「……あぶな、っ…!」



木の棒を投げ捨てナミを押し退け、ルフィが飛び込んできたのだ。がっしりと抱き締められ、その勢いのまま後ろに倒れこみまた背中をぶつける。右側には大きな石、反対側には尖った木の枝。私の倒れこんだ場所には運良く何もない。よかった、と一安心しているとナミが凄まじい形相でルフィを睨み付けている。



「ルフィ!!!」

「……痛、ってェ〜!!!」



ナミの鉄拳制裁がルフィの脳天を直撃したのは、その直後だった。


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