やれることをやらなきゃと、悔しい気持ちを押し込めてサンジとウソップを見る。任された事をやらなきゃ、と。それすら出来ないなんて言いたくない。
ウソップの身体を無理矢理引きずり、物陰へと移動させる。力の入っていない身体は予想以上に重いけれど、やらなきゃいけないって、力を振り絞って引っ張る。敵の意識はナミとガン・フォールさんが持っていってくれる。その間にサンジだけを置き去りにも出来ないから、同じように身体を引き摺って安全な場所へ。



「ほほ〜う!!当たらな〜い!!!」

「くっ!!!」

「やめてよっ!!!」



だけど、虚しい程に意味を成さない私の行動。蹴り跳ばされ、やられていく彼らを、どうすることもできずに、もう、それを見るしか出来なくて。



「やめてったら!!!そいつらもう意識が!!!」

「こいつらがサトリの兄貴を潰したんだ!!!許さ〜ん!!!」



まるでテレビを、映画でも見ているような感覚。客観的に物事を考えてしまう変な癖が、今の状況をそんな風に私の目に映した。
逃げたかったのかもしれない。この場所からも、目の前の現実からも。何も出来ない自分を、無いものだと思いたかったのかもしれない。
決めたのは自分なのに。みんなと一緒にいたいから頑張るって決めたのはほんの少し前の事なのに。
戦う皆の姿が、スクリーンに映し出されているかのような感覚でそこにある。皆が必死な時に、どうして私はこんな風に冷静に“ただ見ているだけ”なのだろうか。
ぎゅっと噛み締めた唇、爪が刺さる程ぎゅっと握り締めた拳以上に、ぎゅっと、胸が握り潰される痛みに涙が浮かんだ。



「むー、大丈夫?」



いつの間にか戦闘は終わり、ガン・フォールさんもピエールと共に空に飛び立っていった。駆け寄ってきてくれるナミが心配そうに私を覗き込む。下を向いて何も言わない私に気付いたのか、彼女は転がったウソップとサンジに目配せをした。



「こいつらはきっと大丈夫。こんなことじゃ死なないわ。死んだらただじゃおかないわよ!!!」



明るく作られた笑顔が胸をえぐる。太陽のようなその笑顔はいつだって私を救ってくれた。だけどそれは時に、私の腑甲斐なさを克明に浮かび上がらせ、私の胸を酷く締め付けるのだ。
さっさと運びましょう、とウソップを持ち上げた彼女。私もサンジの身体を両手でしっかり抱き上げた。



「え…何!!?何!!?」



ドウン、と何かが船の後方に落ちる。そしてラッパの音を盛大に鳴らしながら私たちの方に向かってくる。警戒心をたぎらせ睨むようにそちらを見ると、見慣れた顔にそれは直ぐに解けてゆく。



「あ!!へそ!!ナミさ〜ん!!!むーさ〜ん!!!」

「コニス!!おじさん!!!何でここにいるの!!?」



明るい表情で手を振るコニスさんと、見守るおじさん。そこには初めて見る小さな子供もいて、勇敢にもナミに喧嘩を売っている。
私が抱えたサンジとナミが寄り掛からせたウソップを見たコニスさんが駆け寄ってくる。



「まあっ!大変っ!!お2人共まるコゲだわ!!すぐに手当てを、」



コニスさんと2人を船室に運び込み、布団の上にそっと寝かせた。痛々しい姿に目を逸らしたくなるけど、そんなこと出来るはずない。色んな物に押しつぶされそうになる。みんなと居たいって思った時に、色んな覚悟は決めたつもりだった。やれることはやるって決めた。頑張るって決めた。なのに、何か一つでも、私に出来た事はある?そんな問いかけに導きだされる答えは“ノー”。空島に来てから、くる前もだけど、やっぱり私は役立たず。



「むーさん、少し外の空気を吸いませんか?ずっと、辛そうな顔をしています…」



声をかけてくれたコニスさんは、困ったような笑顔で私にそう言った。気を遣ってくれた彼女の言葉に頷き、再び外に出る。空気は澄んでいて、全てがまるで嘘だったかのような静けさと穏やかさが私を包み込んだ。


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