なんとなくの揺れで目が覚めると、とても良い香りが私の鼻を掠め、胃袋を刺激していた。私の分も用意してくれていたらしく、レストランでたらふく食べたにも関わらず匂いに誘われてどんどん食が進む。食べている時間は幸せ、って今はそんな時間、だったのに。
「何だこいつ」
「でけェ………」
「うわああああああああ海獣だァああああああ!」
ざばーんと、有り得ない大きさの牛というか魚というか、もうとにかく見た事もないワケもわからないような生き物が海から上がってきたのだ。
ヨサクさんだけがビビっている様子で、ルフィとサンジさんは普通に感心しているように見える。
私は唖然としたまま、もう言葉も出ないし手は動くこともなくただそんな怪獣を見つめるしか出来なかった。
狙いは机の上の料理らしく、でもルフィは料理を渡したくないようであろうことか攻撃を仕掛けてしまった。
一度は吹っ飛んだものの、あんな怪獣なんだからそう簡単に倒れるワケもない。
再び出てきたと思えば今度は唖然と固まったままの私の前の料理を狙っているらしく、一瞬目が合ってガバッと大きな口を開いた。
「死ねコラァ!!!!」
「あんた何やってんスか!!!」
「あのヤロー今お嬢さんごと食おうとしやがった!!」
サンジさんの強烈な蹴りでぶっ飛んだ怪獣。
怒り浸透で三度出て来た怪獣には更なる強烈な蹴りをお見舞いし、ただ私が眺めている間に事は収拾していた。
…何が起きたんだろう。
「大丈夫か?」
「…あ…ありがとう…」
「そういやァ聞いてなかったな、お嬢さん、お名前は?」
「……むー、です」
「むーちゃん。俺ァ…」
「サンジさん、ですよね」
キョトンとした表情で私を見たかと思えば、次の瞬間またフッと笑って指に挟んでいた煙草を口に加え、よろしく、と差し出してくれた大きな手を軽く握った。
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