1日の授業が終わって教室から出たとき、同じように鞄を持った跡部に会った。自然と並んで歩く足に、私ちゃんとマネージャーなんだなぁって。跡部っていうか男子テニス部レギュラー陣とこうやって歩くなんて、マネージャーにでもならないと出来る事じゃない。
「もうすぐテストだね」
「あぁ…そんなもんあったな」
「うわ、ヨユーだ!」
「当然だろ」
もうすぐテストがあって、私とガッ君とジローくんと宍戸には大変重苦しい、わずらわしい時期になる。部活なんかやってたら勉強なんてする時間ないし、なのに赤点取ったら1週間部活に参加できないっていう変に厳しい決まりがあるから、赤点なんて取るわけにもいかない。
「赤点取ったらごめんね」
「ごめんねじゃねぇ、勉強しろ」
「難しいんだよ、知ってる?」
「アーン?どこが難しいんだよ。あんなもん勉強しなくても出来んだろうが」
「勉強しても出来ないよ…!」
やっぱり私たちとは頭が全然違うらしい。跡部にとってはテストなんてあってもなくても同じなんだろうなぁ、と思うと羨ましくて仕方ない。
必死な私に跡部は鼻で笑ってみせた。必死なのは私だけじゃなくて、ガッ君と宍戸とジローくんもだけど。(この3人は私の仲間だ!)
「ちゃんと勉強しろよ」
「教えてね」
「忍足に頼め」
「日吉でもいいかなぁ」
「後輩に頼んじゃねぇよ」
肘で押された力が思ったより強くてよろめくと、跡部に小さく笑われた。なんだよーってぶつかっていくけど跡部は軽く返してくる。こんなやりとりももう何度目だろう。
「仲ええなぁ自分ら」
「あ、おったりー」
「忍足や」
「知ってる!」
あはは、と笑うと忍足くんは呆れたみたいに溜め息を吐くけどそのうち笑いだした。バカみたいなこんなやりとりとなんだか楽しい。
最初こそ嫌な噂が流れたり、ちょっとした嫌がらせも受けたけど今じゃもう何もない。跡部や忍足くん、日吉もそうだけど意外と皆がそういうのに敏感だから、嫌がらせとかあんまり受けなかった。そりゃ、ちょっとは受けたけど。ちょっとだけ。
そのうち跡部と忍足くんが真剣な話をし始めて、私はそろっと一歩下がる。見えるのは2人の大きな背中は、後ろ姿だけなのに2人とも格好良い。並んで歩くには勿体ないから、私はみんなのちょっと後ろを歩くのが好きだったりする。
「歩くの遅ぇよ」
「はよ歩かな置いてくで」
こんなみんなの大きな背中を見てると、何だかどこまでも行ける気がした。全国だってなんだって、手が届きそうな気がした。
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