今は授業も終わって部活の時間、だけど私はまだ部活に参加出来ていない。
図書委員の私は、今月の図書便りの作成に追われている。
本当は別の子が担当だったんだけど、上手く言い包められて結局、何故か私が担当する事になってしまった。
私もマネージャーの仕事しなきゃいけないし断れたらよかったんだけど、あんな風に手を合わされてお願いなんてされたら断るにも断れない。


「書けないよー…」


真っ白な紙と睨めっこして約20分、最近はマネージャー業ばっかりで本を読む事もしていない私にはネタも何もない。
図書室の広い机に突っ伏し、持っていたシャーペンも机の上に転がった。
何で断らなかったんだろう、って後悔した。(断れなかったんだけど)


「何やってんだよテメェは」

「…あとべ?」

「まだ真っ白じゃねぇか」

「……部活は?」

「テメェがいつまで経っても来ねぇからわざわざ見に来てやったんだろうが」


真っ白な紙を持ち上げて、嫌味ったらしくそう投げ掛けた跡部は呆れた表情を浮かべていた。
手伝って、って、小さく呟くと跡部は更に目を細めて小さく溜め息を吐いた。
と、思うと私の隣に腰を下ろしていた。


「…手伝ってくれるの?」

「文句あんならやらねぇぞ」

「や、文句なんか全然!ありがとう、」


にへっと笑うと、跡部はまた小さく溜め息を吐いて大きな手で私の後頭部を軽く押した。

真っ白な紙がゆっくりではあるけど私の字で埋められていく。
跡部は隣で本の事教えてくれて、私はそれを聞きながら文字に起こしていく。
気付けば跡部は思ったよりも私のすぐ近く、ほんの数センチ横にいた。


「跡部いい匂いするね」

「アーン?…変態かテメェは」

「変態…か、も?」

「…さっさと書け」


チッという舌打ちも聞こえたけれど、怒っているワケでもないし、何より跡部の舌打ちには優しさがある。
返事や対応に困った時によく舌打ちをするのを知っているから。
今、困ってるのかなぁって思いながら笑っている私に跡部は、今度は私の右腕を左肘で押してきた。


「あははごめん、よし、ちゃんとやろう!」

「最初からやれ」

「だって一人寂しかったんだよ」

「知るか」


ヘラヘラしていた私に跡部はやっぱり呆れているみたいで、ちゃんとやらなきゃ手伝ってくれなくなるような気がして姿勢を正してシャーペンを持ち直した。
四分の一ほど埋まった図書便り。
時間はほんの30分くらい。
さっきまでの20分は何だったんだろうと思うと、今の私にとっては跡部は本当に神様みたいな存在だと思った。
その後10分かからないくらいで図書便りは完成して先生に提出。


「ありがとう」

「あン?」

「跡部来なきゃ終わらなかった」


喉乾いたよねって私の一方的な意見で自販機に移動して、お決まりのイチゴオレ。
あげるよ、って跡部に差し出すと訝しげな顔をしたけど普通に受け取ってくれた。
お茶のがいい?って聞くと何でも良いって言ってくれたからそのままもう一本イチゴオレを購入。


「似合わないね」

「アーン?だったら渡すんじゃねぇよ」

「あはは」


パックを咥える跡部の違和感に笑いが止まらなくなって笑ってると、今度は軽く蹴られた。
なんかいいなぁって思いながら跡部に押し付けられた空のパックをゴミ箱に投げ入れて、私もマネージャー業を開始させた。


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