放課後はマネージャー業をひたすらこなす毎日。部活に励む友達はキラキラしながら部活に向かい、帰宅部の友達は「何して遊ぶ?」や「テニス部見に行こうよ!」なんて言いながら楽しそうに教室を去っていく。


「タオル置いとくね!」


みんなにいいなぁとか代わってよ〜なんて言われることもよくあるけれど、マネージャーだって大変なんだよって言いたい。選手の身の回りの世話は勿論、部室の片付けから毎日の練習のデータをまとめる事も私の仕事。家に帰ると毎日疲れ切って“バタンキュー”っていうのが事実だったりする。
昨日の練習のデータをまとめるのに部室のパソコンを立ち上げる。それにしてもどうして毎日掃除してるのにこんなにも汚れるんだろう。主にガッ君とジローくんが食べるお菓子のゴミとか脱ぎっぱなしの制服とかなんだけど、毎日だからなぁ。
パソコンを触る前にいっぱいになったゴミ箱を片付けようと椅子から腰を上げる。落ちてた制服を畳んでソファーの端に置いて、散らかったゴミを袋に詰め込む。今日もいっぱいだ…やっぱり後でいっか。


「よっし、やるか!」


気合いを入れて椅子に座る。紙に適当に掛かれた練習メニューとかランニングのタイム諸々をカタカタと打ち込む。これをコピーして部室にあるファイルに挟んで、みんながいつでも見られるようにしているわけで。過去から毎日こうしたデータを保存しているのも、うちが強くいられる理由なのかもしれない。青学の乾君や立海の柳君みたいなデータマンがうちにはいないからなのかもしれないけど、それを私がやってるんだって思うとちょっと嬉しかったりするよね。


「むーちゃんドリンク頼むわ」

「あ、はーい」


忍足くんが来てそう言ったから一旦中断してドリンクを作りにいく。ついでにゴミも捨ててこようといっぱいの袋を持った。
空のボトルにドリンクを入れて皆に渡してゴミを捨てて、よし戻ろうってした時にドリンクをぶちまけちゃったらしくまた作り直し。全然いいんだけどね、そんなに時間もかからないから。
よし戻ろうってなった時、遥か遠くに飛んでいく黄色いボール。ああ鳳くんやっちゃったなぁ…。


「す…すいませーん!」

「いいよいいよー」


申し訳無さそうに眉を八の字にして謝ってくれる鳳くん。いい子だなぁほんとに。
どこ飛んでっちゃったかなぁってボールの向かったほうに歩いてく。ないなぁってうろうろしているとボールは見当たらない。たまにファンの子が持ってっちゃうことがあるから今回もそうなのかもしれない。備品を持ってかれるのは本当に困る。いっぱい買わなきゃいけないんだから。ああそうだ備品の注文もまとめて榊先生に渡さなきゃいけないんだっけ。


「むーー!コールドスプレーどこにある?」

「あ、棚……行くから待って!」


ああ大変だ、大変。コールドスプレー渡してやっと部室。授業が終わってからの部活だからそんなに時間もないのに動きっぱなし。ドリンク作ってタオルとかユニフォーム洗濯したり、パソコンもしなきゃいけないし備品の管理も部室の掃除も私の仕事。みんなも大変なのはわかってるんだけど、私も大変なんだよって、わかってもらいたいなぁなんてのはただのワガママになっちゃうんだろうか。
タイム計ったりスコアつけたりとかそういう表でやるのだけがマネージャーの仕事じゃない。それどころか裏方の仕事がほとんど。確かに選手のみんなと仲良くはなれるかもしれないけど、それ以上に大変な仕事なのに。


「……ふぅ、」


備品の管理してたらもうこんな時間。いつもそうだけど今日はいつもより動き回った気がして、あっという間にもう真っ暗。疲れ切った皆がシャワーで汗を流して帰っていく。みんな気に掛けてくれるけどマネージャーの仕事は皆には関係ないからね、大丈夫だよおつかれさま!って皆をお見送り。
一気に静かになる部室。パソコンのデータ……え、消えてるんだけど、嘘だ…!

カタカタ、部室に響く無機質なタイピング音。……まだ半分しか終わってないよ。
なんかもう、何やってんだろうって。マネージャーなんて目立つわけでもないし誰かに見てもらえるわけでもないし華やかでもない。それなのにみんなに羨ましいとか代わってよとか、ちょっとした嫌がらせされたり陰口叩かれたりとかもう何なんだろうって。じゃあやってみればいいのにって何回も言いたくなったけれど、いつも言えなかった。
なに、やってんだろう、って、今更なんか馬鹿馬鹿しくなってくる。褒めてもらいたいわけじゃないけど、見ててもらいたいわけじゃないけれど、何だか胸が空っぽになった気がした。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -