不二くんが持ってくれていた籠からドリンクをみんなに渡して、今は休憩中。ベンチに座って話してたりじゃれあっていたり、部活の時とは違いゆったりした時間が流れている。
みんなと同じようにベンチに座っている私は、レギュラー陣が好きな子にしてみたらなんなのあの子!って感じなんだろう。もう何度かここに座ってはいるけれど、やっぱり青学のセーラー服とか学ランと比べたらやっぱり違和感しかない制服なんだと思う。


「むーさん久しぶりっすね〜!」

「うん久しぶり!桃城くん相変わらず元気だね」

「いつ来てくれるのかと思って毎日気になってたんすから!」

「あはは!ありがとう冗談でも嬉しい」

「冗談なんかじゃないっすよ!」


元気に挨拶をしてくれたのは二年生の桃城くん。少し離れた場所では海堂くんもペコッと頭を下げてくれる。


「桃城くん、向こうで女の子たちが呼んでるよ?」

「ああいけねぇいけねぇ、忘れるところだった!じゃあまた後で!」


コートの入り口のところで女の子が2人、桃城くんを呼んでいた。やっぱり人気なんだなぁ。話せるだけで嬉しそうな女の子と、差し入れを貰って上機嫌そうな桃城くん。氷帝ではあんまり見ない光景が何だかすごく新鮮だ。


「リョーマくんも久しぶりだね」

「どもっス」

「一年生なんだよねぇ…………うち来る?」

「…何言ってんすか」

「冗談だよ半分くらい!」

「……半分本気なんすか」


あははって笑うと呆れたように表情を歪めてため息を吐いた。二つも年下のリョーマくんに呆れられるなんてまだまだだなぁ、って思いながら自分で面白くなっちゃった。


「おいでよ、そしたらいっぱい可愛がってあげるのに」

「何か怪しい会話だなぁ」

「はは、大石くんもリョーマくんに言ってあげてよ!」

「残念ながら、さらだの頼みでもソレはできないな」


どこからか現れた大石くんが苦笑いを浮かべながらやってきた。いつ見ても爽やかな笑顔だ。
みんなが集まり始めてるって事はもうそろそろ部活が再開されるってことで、さっきは何もできなかったから今度は頑張ろう!って決めた。だけど実際、乾くんがいるから私がやることは殆どまったくない。だから結局ベンチで観察。
青学の練習メニューは本当に面白い。さっき色を塗ったボールが使われるようで、なんだかそれも嬉しくなった。


「さらだもやってみるか?」

「いやいや、無理だよ」

「やってみなければわからない」

「分かるよ、私、マネージャーやってるけど運動神経とか反射神経とか、動体視力なんてもうゼロだよ、ゼロ!」


余りに必死だったからか乾くんはアッサリ引き下がる。落ち着いてるよほんとに、中学生とは思えない。
手に持たれた容器の中にはきっと乾汁(新作)が入っているのだろう。隣にいるだけで凄い、なんかちょっと酸っぱいような甘いような不思議な…不快な匂いが漂ってくる。


「ま…また飲まなきゃいけないのか……なんかパワーアップしてない…?」

「改良に改良を重ねた作品だからな」

「が…頑張って菊丸くん…」

「応援されちゃった…ってかこれ改良なんかじゃない…っに゙ゃーあ゙あ゙ぁ!!」


走り去っていく菊丸くんを見るのは今日で二回目。体に良いものしか入ってないのは分かっているけど、飲んでみる勇気はない。でも興味はある。覗いてみるとうわぁ…っていう色。臭いも更に強烈。飲んでみるか?と差し出してくれた乾くん。
意外にも恐怖より好奇心が勝った。なかなか出来ない体験だよね!と言い聞かせてみる。


「やめておけ」

「…あ、手塚くんも飲むんだ」

「俺は飲むがお前には勧めない」

「一緒に飲もう!」

「……ダメだ」


手に持っていたカップを手塚くんに取り上げられた。ああちょっと飲みたかったなぁと思って見ていると眉間の皺が一層深くなっていく。……止めてくれて良かったかも。
最終的に結局みんなが飲んでた。不二くんは美味しいよって言ってるけど、みんなの反応見てるともう興味も湧いてこない。(興味はあるけど、もう勇気は出ない)


「なんか今日、ホントに何もしてないよね…ごめんね」

「どうしてさらださんが謝るの」

「お手伝いするって言ったのになんか、見てただけだったから。次来たときはちゃんとするよ!」

「ふふ、待ってるよ」


不二くん優しい。
結局ホントにそのまま青学を離れる事になった。だけど収穫はたくさん。みんな元気そうだったしいっか、ってよく分からない結論に至る。跡部になんて言おうかなぁと考えながら、皆に見送ってもらいながら家に帰るバスに乗り込んだ。


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