青学テニス部のお手伝いは、用事で来た時はだいたいやってる。最初は乾くんに誘われてやり始めたんだけど、氷帝でマネージャーをするにあたっても勉強になることがいっぱい。
青学は面白い練習がいっぱいあって、今日はその練習をするためのお手伝い。テニスボールの溝に色を塗っていくっていう地味な作業を、部室で乾くんとこなしていく。
「すまないなこんな事をさせて」
「大丈夫だよこれもお手伝いだから!それに氷帝じゃこんな事しないから、ちょっと楽しいんだ」
「そうかそれは良かった」
乾くんは頭がよくて、それこそマネージャーに必要な色んな知識を私にくれる。普通よりも効くっていうドリンクの作り方だったり、怪我した時の正しい応急処置だとかもう色々。時々、青学のみんなのプチ情報を教えてくれたりもする。例えばそれは、この間不二くんが告白されてたとかリョーマくんの身長がほんのちょっと伸びたのは乾汁のおかげだとかそんな話を真面目な表情でしてくれる。私も同じように皆のどうでもいいような話をするけど、乾くんはちゃんと聞いてくれて何だかすごく楽しい。
地味で長い作業だけど二人で話しながらやってると終わるのはすぐだった。乾くんも驚く早さだったらしい。なんか乾くんのデータを外すってすごく嬉しい!
「今からドリンク作ればいい…の、かな?」
「俺は特製ドリンクを作りに少しここを離れるが、そっちは頼むとしよう」
乾くんと別れて私はドリンク作り。他の学校でもこうやって仕事を任されるのは、不思議な事だけど自信にもなる。みんなの分を作って籠に入れ、運ぶんだけどもやっぱり、重い。
「持つよ」
「…あ、ありがとう、でも、」
「大丈夫、遠慮しないで」
にっこり笑って私のかわりにドリンクの入った籠を持ち上げてくれたのは、不二くんだった。優しい笑顔に癒されながら、言ってくれた通り遠慮なく任せた。手の空いた私は軽いタオルを持ち上げて一緒にコートまで歩く。
「練習、良かったの?」
「今は英二の番だから」
「…菊丸くん走って行っちゃったけど」
「乾汁、飲んだんだろうね」
…乾くん一体どんな飲み物を作ってるんだろう。凄まじい速さで私と不二くんの前を口を押さえながら走り抜けていった菊丸くん。ゆっくり戻ってきた彼は青白く、目は何だか虚ろに見えた。(だ…大丈夫かな…)
「あ!むーちゃん!」
目が合った瞬間、彼の表情は180度。今にも倒れそうな表情からにっこり太陽みたいな笑顔に変わった。それから私の持ってたタオルを代わりに持ってくれる。あ、仕事なくなっちゃった…。
「不二はよくあんなの飲んで平気でいられるよなぁ」
「不二くんも飲んだんだ…」
「なかなか美味しかったけど。さらださんも飲んでみるといいよ」
「えー何言ってるんだよ不二ぃ!ダメだよ、絶対だめ!」
乾汁、何度も見たことはあるけれどあれを飲みたいとはきっと誰も思わない。鮮やかな青色だったり、何色?っていうようなもうわけわかんないのばっかり。でもこれがあるからまた、強くなるのかなぁって思う事も。氷帝もやってみようかなって思ったことはあるけど、皆の反応を見てるとやっぱりやっちゃダメだなって。なんか可哀相だもんみんな。
「うえー…まだ味が消えない…」
「……どんな味なの?」
「なんかねー…何て説明したらいいのかなぁ。公園を食べてるみたいな…うぇ。やっぱり不二オカシイよー!」
「こ、公園…」
「確かに独特な味はするけどね」
また顔色を悪くしはじめた菊丸くんはタオルをぎゅうっと握り締めた。うわぁっと思って背中をさすってげるとありがとー!ってニカッと笑ってくれた。何だかジローくんみたいで、いやちょっと違うかもしれないけど可愛いなぁって思った。
二人が運んでくれたからほんとに歩いてただけなんだけど、なんだか皆にありがとう、って言われる。
「少し休憩にしようか」
手塚くんと相談したのか、大石くんがそう言って一旦休憩に入る。うれしそうにベンチに戻ってくるみんな。今ごろ氷帝のみんなもこうやって練習してるのかなぁって考えちゃうんだから不思議。
「さらだも休むといい」
手塚くんがベンチに座って言う。氷帝と全然違う、こんな感じも好きだなって思いながら手塚くんの隣に座らせてもらった。
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