青学に向かっている今、バスから学校が見えた。なんか久しぶりだなぁって思いながらテニスコートに近付いていくと、ラケットがボールを弾く気持ち良い音が聞こえてきた。


「むーちゃーん!!」


私な気付いてくれたのか、菊丸くんが大きく手を振ってくれているのが見えた。私も笑って小さく振り返すと、手塚くんの怒鳴り声が聞こえてなんか申し訳ない気持ちになった。
手塚くんは練習を中断して私のところまで来てくれる。部室に案内してくれて、やっぱり久しぶりだなぁと思わずちょっと見渡してしまう。
手塚くんはお茶とお菓子を出してくれて、いつもなんだけど、青学の部長に何させてんだろうなぁって。


「ごめんね、気とかつかってくれなくて大丈夫なのに」

「それはさらだの方だろう」

「これ?みんなで食べてね」


手塚くんに言わせてみればお茶とか出すのは当然のことで、私にしてみればお菓子のお土産を持ってくるのは当然のこと。毎回申し訳ないって言ってくれるけど、跡部にも榊先生にもちゃんとするよう言われてるから全然いいのにね。やっぱり手塚くんはしっかりしてる。ちょっと、し過ぎてるような気もするけど。


「そういえばさっき、菊丸くん、ごめんね私のせいなんだけど」

「いや、菊丸の不注意だ。さらだが謝る事ではない」


低いがよく通る、そんな手塚くんの声を聞くのが密かな私の楽しみ。中学生らしからぬ落ち着きとか低い声とか、眼鏡も似合うし身長も高いしすごくかっこいい。考えてて気付いたけど、忍足くんにも全部当てはまってるのかも。全然違うように見えるのが不思議だ。
用件の話もすぐに終わる。堅そうに見えるけど意外と話しやすいのは、青学に来始めてから気付いたこと。(意外と、は失礼か)


「頑張ってるねぇ」

「当然だ。氷帝もだろう」

「頑張ってない所なんてないんだろうね。うかうかしてらんない」

「お互い様だ」

「あは、そっか」


手塚くんは話し終わった内容の資料を片付けながら、私は手塚くんが出してくれてお茶を飲みながらそう言った。
手塚くんもそろそろ部活に戻るだろうからと、私がコップを片付けようとすると手塚くんがカップを横から持っていく。客なんだからそんなことしなくていい、らしいんだけど。なんか青学に来るようになってから、手塚くんが部長になってからずっとこんなやりとりをしている気がする。


「なんか、手伝ってこっか?」

「すまないな」

「あはは、大丈夫だよこれくらい。偵察にもなるしね!」


冗談ぽくそう言うと、手塚くんは見ていくといいって普通にそう言った。私が偵察なんてしたところで別に青学に怖いことなんてないんだろうけど。


「今日もいい天気だね」

「あぁ」

「部活日和!」


部室を出ると、途端にアツい空気が私たちの全身を包み込んでいた。頑張る姿を見るとうちも負けてらんない!ってそんな気持ちが沸き上がってきていた。


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