だらだらと受けてきた数学の授業もあと30分で終わり。この前の席替えで窓際をゲットした私はずっと窓から校庭を眺めている。体育の授業とかやってると、私はそれを見るのが一番好き。今も宍戸のクラスがやってるみたいで、賑やかな声が校庭中に響き渡っている。


「この問題を………」


先生の声なんて耳に入らない。視線はひたすら校庭で走り回る宍戸に向いているからだ。別に宍戸が好きとか恋してるとかじゃなくて、仲がいいからってそんな感じの理由。(なんか部活してるときよりも生き生きしてる気がするぞ?)


「今から自習。プリントは最後に提出だぞー」


じゃあと出ていく先生。こんなんでいいのかなぁと思うけど、この先生はこんな人だからまぁいいんだろう。
渡されたプリントは全くわかんない。けど後ろ向けば、救世主。


「教えて!」

「自分でやりやがれ」

「だってわかんない…」

「知るか。授業聞いてねぇテメェが悪ぃんだろうが」

「聞いてもわかんないから聞かないの。ね、お願い!」


私の後ろの席は跡部。
おねがいー!ってずっと言ってたら跡部は溜め息を吐いてシャーペンでプリントをトントンした。教えてくれるって事だと思う。座りなおして跡部を見ると、面倒そうだったけど教えてくれる。それでも頭にハテナ飛ばしてたら、俺が解くの見てろって諦めモード。20分しかないのにこれじゃ無理だって判断したんだと思う。(でもきっと正しい判断)


「お前明日青学だったよな」

「そーだっけ?」

「そーだっけ、ってテメェ…」

「うそだよ分かってるよ」


明日は久しぶりに青学に行く。用件はちっちゃいことなんだけど、メールとかFAXとかで連絡取るよりもせっかくマネージャーがいるんだからってことで私が行くようになったのは榊先生の提案だった。ちゃんと言葉でコミュニケーションが取れるからって他校のテニス部からは割と好評らしい。


「手塚くん久しぶりだなぁ」

「何でもいいから早く写せ」


そんな私の独り言が聞こえていたのか聞こえていないのかわからないけど、びっしり埋められたプリントをおしつけられる。跡部の綺麗な字を見ながら埋めたプリントには数字がぎっしり。


「できた!」

「写しただけだろ」

「あはは、ありがと跡部助かったよ!」


はぁ、と大きく吐かれた溜め息は授業終了のチャイムによって掻き消されていた。



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