昨日の夕飯はお昼にお店で食べた料理をサンジが更に美味しくアレンジしたものだった。
なかなか大好評だったみたいで、みんなも美味しそうに、山盛りになっていた料理は綺麗に無くなっていた。


「まだしばらくこの島にいるから、むーも欲しいものはここで買っておくのよ」

「ん、わかった」


ナミがそう言ってくれて、いつもより多めにくれたお小遣いを持ってひとりでブラブラと島を探索。
とは言っても、やっぱり何が欲しいのか自分にもわからない。
だから取り敢えず、見付けた雑貨屋さんとか服屋さんを入って出ての繰り返し。
シンプルで可愛い洋服を数枚と、ラクそうな靴を一足見付けて買った。


「…ゾロ?」

「あ?…むーか」

「どうしたの?」

「アホな野郎がなんかやっちまったみてェだ」


あっち、と顎で差された方を見てみると何やらギャラリーが出来ている。歓声や罵声、その内容から一瞬で理解できたことは、誰かが喧嘩してるっていうこと。こんなの日常茶飯事だけど、やっぱり喧嘩は好きじゃない。


「止めてよ、ゾロ」

「あァ?俺には関係ねぇ」

「……だけど、」

「けどまァ、この道が通れねぇってのは俺にとっても不都合だ」


ズカズカ歩いていくゾロはギャラリーを割って中に入っていく。大丈夫かなぁっていう心配が頭を霞めたけれど、彼は強いから大丈夫だっていう気持ちが勝る。
するとすぐに聞こえてきたゾロの怒鳴り声。更に盛り上がるのが気になって、ゾロと同じようにはいかなかったけど、ギャラリーの中に潜り込む。すると後ろから押されてドスッと地面に倒れこむ。


「大丈夫かー?」

「………ルフィ?」

「何やってんだ?あ、オメェも見に来たのか?心配すんな、おれは負けねェ!」

「だからテメェが何やってんだって聞いてンだろうが!!!!」


半ば呆れたような怒鳴り声だったけど、ルフィは戦う気マンマンなようだった。視線を少しずらせば、相手の人は両手に包丁を握った普通そうなオジサン。そのオジサンも表情は怒り心頭のようで、お互いを睨み付ける表情は本気そのもの。私に不安な表情が浮かんでいたのがゾロにはわかったのか、私の頭に軽く手を乗せて心配すんなと呟いた。
戦いが始まりそうな2人の間にゾロが入り込み、ナイフを振り上げるオジサン。でもそんなのゾロにとってはなんてことない。オジサンが持っていたナイフを下に落とすと、今にも飛び掛かっていきそうなルフィの動きを封じるように右腕で首を締め、左手でオジサンを首を引っ掴んだ。


「下らねぇ理由で喧嘩なんかすンじゃねぇっつってンのが聞こえなかったか、あァ?」

「ぐ、るじ…っ!」

「…じ、じぬ…!」


白目をむき始めている二人。オジサンから手を離すとおもいっきり咳き込み座り込んだ。ルフィは相変わらず危険な所にいるようで、ゾロと目が合うとズルズルとひきずったまま私のところに歩いて来た。


「……大丈夫?」

「心配ねェよ。こいつは機械より頑丈に出来てンだ」


白目を向いているルフィは、どうやら気を失っているらしい。行くぞって言ったゾロはルフィを担ぎ、集まったギャラリーを睨み付けて前に進む。私も買ったものを忘れないように持ってゾロの後を追い掛けた。


「喧嘩の理由って…」

「…あぁ?」

「……もしかしてまた、」


私のこと?って言おうとしたとき、ゾロが私の頭の後ろに手を回し軽く前に叩いた。きっと、そうなんだろうってすぐに分かった。


「こいつァ馬鹿だが、理由のない無駄な喧嘩は絶対しねぇンだ。仲間を馬鹿にされる事は俺だって許せねぇ。例え何も出来なくても構わねぇンだよ。

お前は俺らの仲間だろ」


ルフィが私の為に喧嘩をしてくれるのはこれで二度目。一度目はついこの間のこと。この麦わら海賊団が有名になればなる程、私の存在っていうのはどんどん浮いてくる。言われて当然のような存在であるのにも関わらず、そんな私を仲間だと言ってくれる皆がいる。


「なッ…」

「ああー!!てめぇクソマリモ野郎!!!!テメェごときの分際で何レディを泣かしてやがんだー!!!!!!」

「ンなこと知らねェよ!!!!くそっ…こっち来ンな変態クソコック!!!」

「んな…むーー!!!!なんで泣いてんだ!!?ゾロにやられたのか!!!??ゾロお前ー!!!!」

「ちッ…げぇよ馬鹿野郎共!!!!」


立ち止まったのは、堪えきれなかった涙がそこにあったから。私は幸せだなぁって、ごしごし涙を拭けば、見慣れた光景が目の前にあった。
これが最後の涙になるように、もっと皆を信じようと心に誓った。
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