一つの戦いが終わった後の船はいつも独特な雰囲気に包まれる。いつも通りにも見えるけど、ほんの少しだけいつもとは違うような気がする。
今は戦いが終わり宴会も終わって、今は島の人に泊めてもらってみんな休んでいる。私はそこを抜け出して、近くにあった岩場に座り側にある海を眺めていた。


「寒いだろ海の側は」


上から降ってきた声に顔を上げると、タバコを蒸かしているサンジがいた。そっと肩にかけてくれたジャケットはサンジの優しさで、冷たくなっていた肌にぬくもりを感じた。
そっと私の隣に腰を下ろすと、タバコの香りが鼻を掠めた。ああサンジの匂いだ、なんて。


「ルフィは強ェよなぁ」

「サンジも強いよ。ゾロもウソップもナミも、チョッパーだって、みんな強い」


戦いの後のこの気持ち。なんだか胸にしこりがあるみたいな、何かが引っ掛かるみたいなこの感じが私はあんまり好きじゃない。
みんなと違うって事がハッキリわかってしまうから。戦えない私はいつも、みんなと同じようには笑えない。笑ってはみせるけれど、気持ちはもうグチャグチャ。心と表情が一致していないその違和感は、いつも私をひとりにさせる。


「そんな顔は似合わねェよ」

「…私、どんな顔してる?」

「不安で仕方ないって顔。可愛い顔が台無しだ」


サンジはいつも優しい。思わず甘えてしまいそうになるその優しさだって、私には時々、痛みを感じてしまう。


「むーちゃんには笑顔がイチバン似合う」

「ナミもでしょ?」

「ロビンちゃんもだ」


サンジの素直すぎる返しに、思わずちょっと笑ってしまう。普通こういう時って、他の女の子の名前出したりしないよね?なんて、そんなのサンジには通用しないのだろうけど。


「そうやって笑ってろ」

「笑顔はルフィの方が似合うよ」

「ンなことねェよ、俺にはむーちゃんの笑顔が一番だ」

「お世辞でも嬉しいな」


あはは、と零れた声にサンジも笑っているのが見えた。闘っているときの勇敢な表情より、不安そうな表情より、ツライ表情よりも、私は皆の笑ってる顔が一番大好き。
サンジも、きっと他のみんなも同じなのかなぁって。


「戦いはやめらんねェしツライ顔をさせちまう事もあるだろうが、絶対に俺らが守ってみせる。だからむーちゃんは、見飽きるくらいずっと笑ってればいい」


広がるその言葉に、胸がいっぱいになる。戦いは嫌い、だけど、戦うみんなと一緒にいると決めたのは私自身。この選択を間違えたとは思っていないし、何より、私がみんなと一緒にいたい。


「私も強くなる」


戦いはできないけど、皆を信じる事はできる。絶対負けない、そう信じてる。知ってる。だから、笑ってなきゃいけないんだろうって。笑顔でみんなを迎えなきゃいけないんだろうって、そう思った。


「…あ、でも、ずっと笑ってるからって、本当に飽きないでね」

「心配すンな、飽きねェよ」


サンジはタバコを咥えながら、海に浮かぶ月よりもずっと綺麗な笑顔を浮かべていた。
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