ちびちびと弱いお酒を飲みながら、賑やかにみんなと一緒に笑い合う。
良いことがあったわけでもないけれど、美味しい料理が並んでお酒も入れば船の上は宴会場。
宴好きが集まればいつもそうなってしまうこの空気は、まるで本当に海賊のよう。
まぁ実際に海賊、なんだけど。


「もっと飲めよ」

「私ゾロみたいに強くないから」

「それもそうか」


大好きなお酒の所為もあってか、今日のゾロはすこぶるご機嫌なようだ。
ルフィとウソップとチョッパーがふざけるように踊りだせば、ナミもサンジもロビンも楽しそうに笑う。
見慣れたはずの雰囲気が、いつも以上に胸に染みるのはどうしてだろうか。


「食ってるか?」

「うん、今日も美味しい」

「そらァ良かった。さっきの島でいい食材が安く手に入ったんだ」


こっちも食えよと差し出されるお皿には、見たことない色とりどり美味しそうな料理が並ぶ。
ありがとうって次々と口に運べば、すぐにお腹もいっぱいだ。
慣れないお酒のせいもあってか身体は熱くなり、よろめく足で立ち上がった。


「どうしたの?」

「ちょっと熱くなってきたから」

「そう、気を付けて」


ロビンが綺麗に笑った。
海の上は、特に身体が熱い今みたいなときは冷たい空気が気持ち良い。
ほんの少し離れるだけで、別世界に来たみたいに静かになる。
相変わらず目の前は賑やかだけど、そんな中にいるよりこっちで眺めている方が私に合っているような気がした。

視線を宴から海に移す。
静かな波がゆらゆらと揺れ、月が水面を照らす景色はなんて幻想的なんだろうか。


「しけてんなお前は」


手にお酒を持ったままのゾロが私の隣に立っている。
休憩中だよ、と伝えれば彼は可笑しそうに笑いながらお酒を口にした。
何か話してくれるのかと思えばそうでもなく、私と同じようにただ目の前の宴を眺めるだけ。
なんだか変な感じ。


「私ね、時々、ここにいてもいいのかなって思うことがある」


ゾロはいつも不思議な空気を醸し出しているような気がする。
私にお兄ちゃんがいるとしたら、ゾロみたいな人がいいと思う。
何も言ってくれないけどしっかり話を聞いてくれて、だけど軽く流してくれる事も私にとっては話しやすい。


「後悔してんのか?」

「全然してない」

「即答だな」


やっぱり機嫌が良くて、ははっと声を漏らして笑顔を浮かべる。
ここにいる事を後悔どころか、来て良かったと思ってる。
独りだった私を拾ってくれていなかったら、私は今頃この世に存在しているかも分からないくらいだと思う。


「さァ…飲むか」

「まだ飲むの?」

「こんなの飲んだうちに入んねェよ」

「よく飲めるねそんなに」

「あァ?お前も飲むんだよ」


前に出されるように背中を叩かれると、ナミとルフィが私の腕を引き座らせる。
飲みなさい食べなさい!と言葉に甘えるように、いつもないくらい飲んで食べてる。


「まだまだ終わんねェぞ!」


いつもより楽しいような気がするのはなぜだろうと考える。
よく分からなかったけれど、楽しいからいいかって楽観的に考えられるようになったのはここに来てからで。
この中にいつまでも居られたら、きっとそれが今の私にとって一番の幸せなんだろうな…と、思いながら私はまたお酒を口にした。
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