「だから、そんなの駄目だって!」
「うるせえな、口出すんじゃねえよ!」


お互いの胸倉を掴む勢いで盛大に言い争っている友人2人を横目に、大きく溜息をついた。
臨也はいつもの余裕ぶった態度はどこへやら、珍しく声を荒げて怒鳴っているし静雄に至っては額に血管を浮かべて、そろそろテレビやら冷蔵庫やらに手を伸ばしそうな勢いだ。
ちょっとやめて君たち忘れてるかもしれないけど、ここ俺の家だから!
たまらず漏れたそんな悲痛な叫びも、数分前にまるっと無視されてしまった。
家主であるにも関わらず傍若無人な彼らに意見することも出来ない俺は、なんて哀れな子羊!メエ!


「だって、シズちゃんのネーミングセンス最悪だもん。君にだけは任せられないね」
「じゃあ素敵で無敵な折原臨也様はどんだけ素晴らしいセンスを持ち合わせてんだよ、あぁー?」
「え、うわ、全然関係ないけど臨也様ってちょっと萌えた」


臨也がほのかに頬を染めて誤魔化すようにコーヒーを喉に流し込む。うわあ気持ち悪いなあ。
そんな臨也を見ながら、俺みたいに心のなかで密かに思うだけじゃなく口に出してはっきりと「キモイ」と告げた静雄の顔は言葉とは裏腹に満更でもなさそうで。
甘さを含んだ口調とその表情に思わず眉をしかめる。
ああ俺は一体いつまでこのバカップルと同じ空間に居続けなければいけないんだろう。
セルティ早く帰ってきて!
いや、でもその前にお前らが帰れ!


「そもそもシズちゃん、高校の時に俺の家で飼ってた犬に勝手にタマとか名前つけてたじゃん!」
「別にいいだろ。何が悪いんだよ」
「いや人ん家の犬に勝手に名前つける辺りがそもそもアレだけど、タマってどう考えても猫の名前でしょ!」
「ざけんな、そんなの誰が決めたんだよ!俺ん家ではずっとタマは犬の名前なんだよ!」
「平和島家おかしい!」


話を変なところに飛躍させながらも尚も言い争いを続ける2人にそろそろ俺の忍耐も限界だ。
痴話喧嘩はよそでやってくれ、頼むから!ていうかこの2人俺の存在完璧に忘れてるよね!


「つーか字画とかそんなのどうでもいいだろ。いちいち細けーんだよ、お前」
「だって名前は一生ものだよ?こだわって当然でしょ!」
「こだわった結果が、三太郎っておかしいだろ。三男か長男かどっちだよ」
「だって名前に数字を入れるといいって、本に書いてあったから!」
「じゃあ一郎とかでいいだろ」
「それじゃ、画数が足りないんだってば!」
「しらねーよ!」


姓名判断の本を掲げながらぎゃいぎゃいと喚く臨也の頭を、イライラしながらはたく静雄。
いつまで続くのかなあ、この終わりの見えない争いは。
ていうか男同士なんだから将来の子供の名前で言い争ったところで、そもそも産まれるわけないんだし意味ないんじゃない?
なんて至極もっともな意見をしたら、この2人は一体どんな顔をするんだろう。

ああ、セルティ早く帰ってきて!












相互記念でくれーぷさまに捧げます(^^)
リクエストは『子供の名前決めで言い争う臨静』だったのですが…何だかまんまな話になってしまいました。
リクエスト頂いて書くのは実はこれが初めてです。む、難しいですね><
苦情受け付けますので、なんなりとどうぞ!(笑)




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