「…もしもし」


くそ、何だってんだ。
本当はトムさんか幽にでも電話するつもりだったのに、こんな時に思い出す番号が何でテメエのなんだ。
畜生、うぜえ。とことん、うぜえ。


「勝手に人に電話かけてきといて随分な言い草だね、シズちゃん…。公衆電話なんかからかかってくるから誰かと思ったよ。携帯どうしたの?まさか落としたの?間抜けだね」


あぁ、あそこに貼ってある映画のポスターよく見りゃ幽じゃねえか。
すげえな、アイツまた主役やんのか。
売れっ子になったのはいいけど、アイツここんところくに連絡も寄越さねえで…
まぁ元気にやってんのはテレビ見りゃ分かるからいいけどよ。
ん、来月公開…何だ、俺観れねえかもしれねえな。


「電話かけてきといて、全く会話が成立しないって何事なの。用が無いなら切るよ」


ああくそ、だりい。
目蓋が重い。腕もだりいし足もだりいし、身体が自分のもんじゃねえみてえに重い。
すっげえ眠いけどこんなとこで寝ちまったら風邪ひくどころの話じゃ無いかもな…まあ別にどうでもいいか。


「……ねえ、シズちゃん。今どこにいるの?」


本当はトムさんにお礼とか色々言っときたかったけど、番号思い出せねえし仕方ねえな…。
これだから携帯ってのは便利すぎて駄目なんだ。
アドレス帳呼び出しゃ一発だから番号なんかいちいち覚えとく必要も無いしよ。
もうこの際テメエでもいいや。
ノミ蟲野郎に頼みごとなんか不本意すぎて反吐が出そうだが、もし今後トムさんに会うことがあれば今まで有難うございましたって言っといてくれよ。
ああ、そういや社長が立て替えてくれてる俺が今までぶっ壊したもんの借金ってどうなるんだろーな…。
まぁいいや。それもついでにすいませんって謝っといてくれ。


「ねえ、シズちゃん!」


うるせえな。本当に、手前は声だけでもうぜえ。
まあお前の事は本当に心の底から力いっぱい殺してやりてえくらい嫌いだけど、お前のこと追っかけ回して池袋を走り回んのはそれほど嫌いでもなかったな。
今となっては、の話だけどな。
んなことも、まぁ今更だしどうでもいいか…。
ああ、畜生。もう意識が薄くなってきやがった。
じゃあな、臨也。さっきの話、忘れんなよ。





受話器の向こうから鳴り続ける臨也の焦ったような声を聞きながら、俺は赤い海の中で意識を手放した。








誰かにリンチされた静雄。
死ネタは苦手なので、このあと臨也が池袋中を探しまくって助けに来ます。



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