ほんの少し触れただけだ。掠めるように僅かに指先が触れただけ。
その一瞬、臨也の局部が少し震えたかと思うと待ったをかける暇すら無く、待ちかねたように白濁が吐き出された。
吐き出された白濁は当然、目前にあった俺の顔面に惜しみなく降りかかる。
頬や鼻にどろりと纏わりつく感覚と、特有の青臭い匂いは実に不愉快だ。
怒られて怒鳴られて殴られて鼻の骨と前歯を折られても文句は言えないだろうこの酷い仕打ち。
実際いつもの俺なら迷わずそうして相手が再起不能になるまで叩きのめしているだろうが、そんな気が起きないのはその相手が一応俺の恋人と呼べる存在であるから…というよりかは、最早慣れてしまったからと言ったほうが正しいかもしれない。
申し訳程度に呟かれる「ごめん」という謝罪も、どうでもいい。謝るくらいならもう少し堪え性を身に付けろと言ってやりたい。


「…毎回毎回テメーなあ…。…もう怒る気にもなれねぇ」
「…だって、シズちゃんが俺の触ってると思うと我慢できなくなっちゃうんだもん」


もん、じゃねえよ。いい歳こいた成人男性が、もん、じゃねえよ。可愛くねえよ、つーかキメエ。
眉を顰めながら、手近にあったティッシュを引っ掴んで顔にぶちまけられた白濁を拭き取る。
恐らく数分後にはまた同じような事態に陥るのだろうが、だからと言ってそのままにしておくのも気持ちが悪いし何よりそんな倒錯的な状況は臨也を無駄に喜ばせるだけだ。

臨也だって今まで女と付き合ってきた経験が皆無というわけではないだろう。
こんなにも絶頂が早いとなると、恐らく今までそれなりに苦労してきたのだろう、と同情はしないものの哀れに思っていたのだが、何やら臨也のこの早漏っぷりは俺に対してだけらしいのだ。
今まで他の女としてきたセックスでは通常男性と大差無いほどには持ち堪えていたとか何とか。まあ俺は通常男性のソレがどんなものなのかはよく分かりゃしないが(ちなみに臨也に言わせると俺はかなり遅いほうらしい)。
俺とするセックスの時だけ、臨也は驚きを通り越して感嘆してしまうほどの勢いと早さで何度も絶頂を迎える。
以前、気まぐれに回数を数えたことがあったがその時はおおよそ俺が1回イクまでに臨也が3回はイってる計算だった。
「めちゃくちゃ好きな人とエッチしてるんだから、そりゃ興奮もするし抑えも利かなくなるよ」
というのは臨也の言い分だ。
そうなると俺は臨也が今まで気まぐれに抱いてきた女の中の誰よりも愛してもらえている、ということになるのだが恐ろしく信憑性の無い話だと思う。例え真実だったとしても正直あまり有り難くもない話だ。


「…ね、シズちゃん。俺もう我慢できないよ。…二人で一緒に、気持ちよくなろう?」


そう言った臨也の声と表情が相当切羽詰まっているものだから、こいつがいつも言っている言い分は早漏である自分への言い訳ではなく真実なのだと信じてやっていい気にもなってくる。
だが「二人で気持ちよくなろう」だなんて御大層なことを言ったって、俺が気持ちよくなるまでの間に、コイツは一体何回絶頂を迎えるのだろう。そう考えると少し気分が重くなり、知らず知らず口元がひきつってしまう。
早漏なうえに絶倫だなんて始末に負えねえな。
思わず溜め息を漏らしながら、肩にかけられた臨也の手に押されて俺の身体は真っ白なシーツに沈んだ。




早漏臨也さん萌えの藤さんに捧げました。
早漏臨也×遅漏静雄イイネ!




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