「俺、シズちゃんの苦しそうな顔見ると興奮するんだよね」


こいつ曰く対オレ用の媚薬と筋弛緩剤のスペシャルミックスとやらをお見舞いされ、身動きひとつ取れない俺に馬乗りになった臨也は、にたりと笑ってそう告げた。
臨也のその台詞は、朦朧とする意識のなか俺が呟いた「お前何で俺にこんなことばっかすんだ」という問いかけの答えだったのだが、その回答は俺にとって胸糞悪い以外の何物でもない。

きっとあからさまに嫌悪に歪んだのだろう俺の顔を見て、臨也は少し困ったように眉を下げた。
嘘じゃないんだけどなあ、なんて言いながら手を引かれて無理矢理触らされた臨也の股間は確かに少し触れただけでも分かるほどに熱を持っていた。
やめろ、きもい。お前なんつーもん触らせてんだ。
ていうか疑ってねえよ。むしろ嘘であってくれたほうが俺は嬉しかったよ。


「シズちゃん、ねえ舐めてよ」


俺が絶望的な気分に浸りながら固く目を閉じている間に、いつの間にやらズボンのジッパーを下げ自身を取り出していたらしい臨也は、尚もにやにやと笑いながらとんでもない事を言ってのける。
何言ってんだお前、と抗議の声を上げるために開かれた俺の口に、臨也は無理矢理ブツを捻じ込ませてきた。
こいつマジでふざけんな。


「んんっ…ふ、ぐぅっ…」
「駄目だよシズちゃん、そんなんじゃ全然気持ちよくない」
「ん、はっ…てめ、ざけんなっ…」
「仕方ないから手伝ってあげる。シズちゃん、顔上げて」
「んむっ!?」


髪を掴まれて無理矢理顔を上げさせられ、後頭部に手を添えられたかと思うと、臨也は自ら腰を振り始めた。
まるで挿入したときのピストン運動と相違ない速さで繰り出されるその動きに、瞼の裏がチカチカする。
臨也が動くたびペニスが喉を突いて思わず込み上げる吐き気を必死で堪えながら、ちらりと当の臨也を見上げると実に恍惚とした表情をしていてコイツまじで殺してやろうかと思う。


「ああ、いいなあシズちゃんその顔!すごく興奮するよ!」
「んっ、んっ、んっ」
「あー、すごい…もうイキそう。ねえイっていい?」
「ん、むっ…んん!んー!」


てめえフザけんな、と言いたかったのに口いっぱいに臨也のものを詰め込まれた状態ではそれすらままならない。
せめてもの抵抗で緩く首を振り拒否の姿勢を取ったというのに、その2秒後に口の中に広がった苦い味。
驚いて思わず口を離すと、残りの精液は全て余すことなく俺の顔へとぶっかけられた。
口内に広がる生臭さが気持ち悪くて吐きだすと、臨也はあからさまに残念そうな声を上げた。


「えー、こういう場合は飲むのがセオリーじゃない?」
「…てめ、マジ死ねよ…」
「まあ、顔射がエロいからいいとするか。いいよねー男の浪漫だよねー」
「………」


好き放題やりたい放題な臨也に、最早起こる気力すら湧いてこない。
何もかもが面倒くさくて、というかこのクソ野郎が盛りやがった薬のせいで体がダルくてたまらなくて、もう変に噛みつくのは止そうと冷たい床に体を投げ出した。
だがそのすぐ後に感じた下半身への違和感に、閉じた瞼をすぐさま開く。

ああ、見たくなかった。無視を決め込んで寝たフリでもしときゃ良かった。
いや、そんなことしたってコイツはお構いなしに自分のやりたい放題やるんだろうけど。
ああ、見たくなかった。
スラックスを寛げて、俺のものを取り出し今にもそれを頬張ろうとしている臨也の顔なんて。


「てめえ…何やってんだ…」
「え?だって俺ばっか気持ちよくなってたんじゃ不公平でしょ?だからさぁ」
「だからじゃねえ!余計な事すんな…って、ん…!」
「そんなこと言って、ここパンパンだよ。フェラしておっきくしちゃうなんてシズちゃんの淫乱ー」
「お、まっ…が、変な薬っ…盛りやがるからっ…、あっ」
「ああ、そういえば弛緩剤だけじゃなくて媚薬も盛ったんだっけ」


喋っている間にも、臨也の手で自身をいやらしく撫で上げられ、薬のせいもあり抑えようもない声が漏れる。
俺の反応に気を良くしたらしい臨也がにやにやと笑いながら、噛みつくようにキスを仕掛けてきた。
歯烈をなぞり、舌を絡め取られて、息継ぎすらままならないようなキスに頭がくらくらする。
俺の目尻に浮かんだ生理的な涙を舐め取り、臨也が口角を上げて笑った。


「本当にやめて欲しいなら、そんな顔しちゃ駄目だよシズちゃん」
「んっ…、は、あ?」
「言ったでしょ」



「俺、シズちゃんの苦しそうな顔見ると興奮する、ってさ」










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