「話に聞いてたよりも物分かりが良いお利口さんみたいだね、静雄くん」 そう言い一歩踏み出ししゃがみ込むと、今まで見上げる形となっていた男の顔が俺と同じ目線にやってくる。 その瞳が楽しそうに三日月型に細められたかと思うと、伸びてきた腕が俺の両膝にかけられた。 状況が理解出来ずぼんやりとその様子を眺めるしかない俺を余所に、腕に力が込められ両膝をがばりと割り開かれた。 「なっ…!」 「はい、ご開帳〜」 ふざけた調子で紡がれた言葉に、背後の2人からどっと笑いが湧き起こった。 何も身に付けていない下肢に申し訳程度に羽織らされたシャツでは、どうにか身を捩ってみたところで性器を隠すことが出来ず、露呈され晒されたものが嫌でも視界に入り顔に熱が集まる。 何をされたわけでもないというのに、緩く勃ち上がっている自身に更に羞恥が募った。 「なっ、んで…!」 「ああ、気にしなくていいよ静雄くん。これお薬のせいでこうなってるだけだから」 先程嗅がされた薬に催淫作用があったのか、それとも気を失っている間にまた別の薬を飲まされるか打たれるかしたのか、そんなことは俺の知り得る所では無いがそんなことを冷静に考察出来るほどの余裕も、自分には残されていなかった。 無遠慮にじろじろと性器を眺められる羞恥に、己の意思とは関係なく自身は更に反応を示した。 男の口角が不気味に吊り上がったかと思うと、その男が伸ばした手が何の躊躇いも無く俺の性器を握り込む。 「ひっ…、何しやがっ…!」 「大人しくしといたほうがいいよ、暴れると痛くしちゃうから」 「やっ、い、やだっ…、ん、やめろっ…!」 「どうせヤられるなら痛いより気持ちいいほうがいいでしょ?ほら、静雄くんのここは正直だよ」 性器を握り込んだ手が、上下に動かされる。最初はゆっくりと緩慢だった動きも段々とスピードを増していく。 ただ上下に擦り上げられるその単純な動作でさえも、薬に侵された俺の身体はその動き全てを快楽として拾い上げていく。 すっかり勃ち上がった俺の性器を見て、リーダー格のその男がニヤリと笑った。 チラリと目配せをするのと同時に、男の背後に立っていた2人組が此方へと歩み寄ってくる。 両側から挟みこむ形で俺の右隣と左隣に立った男達がその場にしゃがみ込む。伸ばされた腕が俺のシャツの前を乱暴に暴いた。 はじけ飛んだボタンがカラカラと虚しい音を立ててコンクリートの地面を転がった。 「んっ、あ、なにっ…!」 「あれえ、静雄くんは乳首で感じちゃう人?」 「や、ちがっ…、ぅ、違うっ…!」 「嘘だね。じゃあビンビンになってるここは何だよ」 ここ、と示唆された俺の性器はそれはもう痛い程に勃ち上がっていて、視界で確認しなくともそんな事は嫌というほど分かり切っているから敢えてそこから視線を逸らす。 わざと羞恥を煽るような言葉を次から次へと浴びせかけられ、理性が焼き切れてしまいそうだった。 こうも快楽を感じやすくなっているのは、コイツらに与えられた薬のせいだ。そう頭で理解してはいるものの、実際見も知らぬ奴らに好き勝手に身体を弄り回され与えられる快楽を享受している自分が酷く情けなくて恥ずかしくて、羞恥心と自己嫌悪で頭がどうにかなってしまいそうだ。 「っん、あ、やっあ…、ひぅ、もっ、やめて…くれっ…」 俺の両側に位置する男達が、それぞれ好き勝手に両の胸の飾りを弄り回す。 右側は親指と人差し指に挟まれ捏ねくり回され、左側は親指の腹でぐにぐにと擦り潰される。 嫌で仕方ない、気持ち悪くて仕方が無いのに、それぞれから与えられる刺激に喉の奥からは勝手に甘ったるい言葉が漏れてきてしまい、そんな自分の声がまたどうしようもなく気持ち悪かった。 性器を愛撫する男の手の動きが、今までのただ上下に擦るだけの機械的な動きから確実に快楽を引き出すものへと変わる。 竿を扱く手が徐々に上昇していき、執拗に亀頭をなぞられその指がぐりぐりと強引に尿道口を抉る。 その瞬間、痛みと快楽が同時に押し寄せ、背中から頭のてっぺんまでビリビリと電撃にも似た衝撃が走った。 「っふ、うあ、っゃ、あああぁっ!」 叫びのような抑えようもない喘ぎ声が漏れ、俺は勢いよく精液を撒き散らしながら達してしまった。 飛び出した白濁が自分の腹部にべっとりと張り付いている様が視界に入り、吐き気がした。 絶頂を迎えた俺のことなどお構いなしに、両側の男達は未だに乳首への愛撫を続け、リーダー格の男は残る精液全てを搾り取ろうとでもするかのように性器を扱く手を止めようとはしなかった。 敏感になっている身体に変わらず与えられる愛撫に、頭が狂ってしまいそうだった。強すぎる快感は最早快楽ではなく苦痛だ。 「いっぱい出たね、静雄くん。気持ち良かった?」 「…っ、う、ふっ…ぅ…」 「泣くほど気持ち良かったなんて嬉しいなあ。これからもっと良くしてあげるからね」 好き勝手なことを言ってのける男に、反論する気も突っ込みを入れる気も起きなかった。 俺の頭の中を駆け巡るものはたった一つ。この地獄から解放されたい。ただそれだけだった。 だが、その願いが聞き入れられることは万に一つも有り得ない。 俺の身体のそこかしこに飛び散った精液を指で掬い取り、男はあろうことかその手を俺の下半身、性器よりも更に下にある部位へと運んだのだった。 まさか、そんな馬鹿な。 驚きで目を見開く俺など気にもせず、男はその指を後孔へと侵入させる。つぷりと冷たい爪先が這入りこむ感覚に背が震えた。 「ひっ…や、だっ…やめろ、やめてくれっ…!」 「今更待ったは無しだよ、静雄くん。まあ最初から止める気ないけど」 「ひゃ、ぁっは、あああっ!」 突き入れられた指が俺の中をぐにぐにと這い回る。 執拗に内壁を擦られる感覚に気持ち悪さと吐き気しか感じないはずなのに、それでも確かに俺の身体はこんな状況でも貪欲に快楽を拾い集めていた。それは媚薬が及ぼしている影響なのか、それとも俺の天性のものなのか。 そんなことは分からないしこの際どうでも良かった。実際そんな余計なことを考える余裕なんて俺には無かった。 男の右手が俺の性器を扱きながら、左手の指は後孔の中を好き勝手に暴れ回る。 他の2人は相変わらず俺の乳首を弄びながら、耳を舐めたり腹を撫でたりと此方も好き勝手にやりたいように愛撫を続けていた。 過ぎる快楽に頭の回路が飛んでしまいそうだった。 ひっきりなしに漏れる喘ぎ声も、自分の性器と尻の穴から奏でられているぐちゃぐちゃという粘着質な音も、全てが漫画やテレビの向こうで起きている話だったらどんなに良かったろう。 だがこれは紛れも無く今自分の身に起きていることであって、漫画でも無ければフィクションでも無かった。 「っふ、やっあ…、あ、ひぁっ」 「いいね、静雄くん。その顔すごくエロいよ」 「やぁっ…、ふぁ、あっ、あ」 「正直、男相手に勃つか不安だったけど…これじゃ心配いらなかったな」 「なっ…、あ、やだ、やめろやめてくれっ…それはっ…!」 ずるりと指が引き抜かれ、安心する暇すら与えられなかった。 ガチャガチャとベルトのバックルを外す金属音が聞こえたかと思うと、男は勃起しきった性器を取り出す。 いくらそういった知識に疎い俺でも、これからその性器をどうするのかという事は流石に分かってしまった。 思わず制止をかけて懇願するが、その願いが聞き届けられないことも分かっている。だが言わずにはいられなかった。 何で、俺がこんな目に遭うんだ。何で。どうして。どうしてどうして。 頭に渦巻く疑問に対する答えは最初から分かり切っていた。コイツらに俺を痛めつけるよう命令した奴が諸悪の根源だ。つまり全てはアイツ、折原臨也の仕業なのだ。 思わず涙が溢れた。臨也が俺を嫌っていることなんて知っている。だがこんな見も知らぬ奴らに強姦まがいの行為を依頼させるまでに嫌われるようなことをしただろうか。なあ臨也、何でお前はそこまで俺のことを嫌うんだ。お前がそこまで俺のことを嫌わなければ、俺だって、お前ともっと普通に接することが出来るかもしれないのに。なあ、何で。 止め処なく溢れる疑問は、男の性器が後孔に宛がわれたことで中断する。 次いで襲い来るであろう衝撃に備え固く瞼を閉じた。 その瞬間、ゴォンと重い音が響いた。薄暗かった倉庫内に眩い光が差し、漸く先程の音が扉を開け放たれた時に発せられたものなのだということに気付く。 思わずそちらに目を遣ると、一人の男が出入口に立ち塞がっていた。逆光で全く顔が見えないが、シルエットから男だということは分かる。 もう一人コイツらの仲間が来たのかと思ったが、男達自身が訝しげな顔をしていることから、どうやらその可能性も低そうだ。 男達を含め状況が飲み込めず呆然とする俺達を余所に、その男がゆっくり此方へと歩み寄ってきた。カツンカツンと靴音が反響する。 残り数歩というところで漸くその男の顔がハッキリとしたところで、俺を囲む男達が安堵のため息を吐いた。 それと同時に誰かが助けに来てくれたのかもしれないという俺の淡い期待はガタガタと崩れ落ちた。 「なんだ、びっくりしましたよ…折原さん」 男が親しげに話しかけたことにより、やはり俺にこんなことをするよう命令したのは臨也だったのだと確信した。 予想はしていたというのに、いざその事実を突き付けられるとどうにも悔しくて悲しくて絶望の底に突き落とされたような気分だった。 涙で視界が滲む。男の言葉には返事を返さず、チラリと此方を見遣った臨也と視線が合う。その目がスゥと細められた。 「でも、丁度今からいいところですよ。言われた通り平和島静雄を痛めつけ―っ……」 嬉々として話しかける男の言葉は途中で不自然に遮られた。 気付くと、その男が床に捻じ伏せられており、その上に跨った臨也の右手に握られたナイフが男の喉元を捉えていた。 男はイマイチ状況が飲み込めていないようだが、どうやら自分に命の危機が迫っているらしいことだけは悟ったようだ。 突然の出来事に対する驚きに見開かれた目から、一筋の涙が零れた。 「…俺が言った通り?君、それ本気で言ってるの?」 「ヒッ…、あ、あの…」 「俺はシズちゃんにちょっと痛い目見せてあげてって言っただけでしょ?それがどうして変な薬使ってこんな倉庫に軟禁してみんなで輪姦するっていう解釈になるのかな?」 まるで幼い子供に言い聞かせるように、ひどく優しい口調でゆっくりと紡がれる臨也の言葉はこの状況に不釣り合いで余計に不気味だった。 男の目からは止め処なく涙が溢れ、殺されるかもしれないという恐怖に打ち震えた歯がガチガチと五月蝿く鳴った。 突然の出来事に固まっていた他の2人が、漸くこの事態の危うさに気付いたらしく臨也を抑え込もうと飛びかかる。 だが臨也は素早くその場から飛び退くと、目にも止まらぬ速さで男達の鳩尾に蹴りを打ちこんだ。 全く無駄な動きがない、的確に相手の急所だけを突いた攻撃に男達は嘔吐きながらその場に崩れ落ちた。 臨也は飛び退いた際に放り出されたナイフを拾い上げると、もう一度最初に捻じ伏せた男の上に跨る。 「ひぃっ、すみません、すみません…!」 「何で謝るの?自分がやっちゃいけないことやっちゃったって分かってるから謝ってるの?それとも殺されたくないから俺に許しを請ってるの?」 「すみません、すみません、すみません…!」 「…まあ、どっちでもいいけどね」 訳も分からず壊れた玩具のように謝罪の言葉を繰り返す男に、呆れたように溜息を吐くと臨也はニコリと笑顔を作った。 それは酷く綺麗で、思わず見惚れてしまうほどに美しい笑みだった。だがこれほどまでに冷たく恐ろしい笑顔を俺は見たことが無い。 「俺は人間が好きだよ、愛してる」 「すみません、すみません…!」 「俺の予想通りに動く単純さも、予想外の動きを見せる奇抜さも、等しく愛しい。でもそれは、あくまで人間という枠内に当て嵌めてのみ言えることだよ」 臨也の右手が高く掲げられる。その手に握られたナイフの切先がキラリと光った。 「人間以下の猿並の馬鹿は愛せない」 勢いよく振り下ろされたナイフが男の顔から1センチと離れていない地面に突き立てられた。 途中、刃が掠めたらしい男の頬に赤い血筋が浮かび上がる。そのまま白目を剥いて気を失ってしまったらしい男の頭が力を失ったようにガクンと垂れ下がった。 伸びてしまった3人を興味無さげに一瞥すると、臨也はもう一度此方に目を向けた。視線が合い、思わず身体がビクリと震えた。 だが臨也の表情は先程までの背筋が凍るような冷たいものでは無い。眉を寄せ口を歪めたその表情は、悲しみ…いや後悔だろうか。とにかく色々な感情がない交ぜになったような複雑なものだった。 「……ゴメン」 ぽつりと呟かれたその言葉が、臨也の口から発せられたものでそして俺に宛てられたものだということに気付くのに数秒の時を要した。 それほどまでにその謝罪の言葉は今までの関係を考えると、俺達には酷く不釣り合いなものに聞こえた。 「…って、謝るのはズルイよね。元はと言えば俺のせいなんだし。…許してもらいたいわけじゃ、無いんだ」 やっぱりアイツらをけしかけたのは臨也だったんだ。だがあの男達と臨也との間で依頼内容に食い違いがあったということだろうか。 漸くボンヤリとした答えを導き出し、いくらか気分が軽くなった。だがやはり心にしこりのようなものが残って漠然とした不安に襲われる。 臨也が脱いだ学ランを、戸惑いがちに俺の肩にかける。ほぼ裸同然の俺の身体が、不器用な温かさに包まれた。 「…アピールの仕方を間違えたな」と呟かれた言葉は、臨也らしくもなく消え入りそうなほど弱々しいものだった。 「…お前、俺のことどう思ってんだ」 言いたいことも聞きたいことも沢山あった。だがそれら全てを言葉にしようとしても、自分の脳内でも上手く纏めることが出来ていないぐちゃぐちゃとした感情は言葉としての形を成さず、喉元で引っ掛かって結局吐き出されることは無い。 やっとの思いで漸く絞り出した言葉は、情けなく声が震えてひどく頼り無かった。 「今は言わない。…この状況で言うのは弱みに付け込むみたいで流石にズルいよ」 俺の身体に飛び散った精液を丁寧にハンカチで拭い取り、脱ぎ散らかされた制服を掻き集めると臨也はてきぱきと俺の身なりを整えていく。 最後に、俺を拘束する手錠の鎖をナイフで断ち切ると、臨也が立ち上がる。 何かを言おうと口を開いては、結局何も言わずに閉じられる。それが何度か続いた後、戸惑いがちに視線を彷徨わせると結局臨也は何も言わず背を向けた。 遠ざかって行く背中に思わず手を伸ばす。漸く自由になった腕は固まった筋肉が引きつるようで酷く痛む。だが、そんな痛みなんて気にならなかった。 伸ばした腕が臨也のシャツの裾を掴む。驚いたように臨也が振り向いた。 「………言えよ」 「え…」 「言いたいことあんなら…ちゃんと言え」 「…でも」 「ズルかろうが何でもいい。知らねえ奴らに強姦されかけて、その理由も分かんねえまま中途半端に投げ出されるなんて…そのほうが惨めだ」 絞り出した声が掠れる。 顔を見ることが出来ず俯いたままだったが、臨也が向きを変え此方へと戻ってくるのが分かった。 俺の正面へと戻って来た臨也の足元が視界に映る。そのまま臨也がしゃがみ込んだことにより、俺の視界に映るものは足元から臨也の顔へと変わった。 伸ばされた手で目元の涙を拭われる。その手つきは酷く優しくて、胸に熱いものが込み上げ余計に涙が溢れた。 やがて戸惑いがちに腕を伸ばした臨也が俺を抱き寄せる。臨也の腕の中に収まり、その温かさと心地良さに心が溶けていくような感覚に襲われ思わず瞼を閉じた。 「…ゴメンね」ともう一度囁かれた謝罪のあと、耳元で伝えられた臨也の言葉に、俺は小さく頷いた。 |
ハコさまから頂いたリクエストで『来神イザシズで臨→→静・臨也がかっこいい・ハッピーエンドで終わる話』でした。 内容は特にこだわらないとのお言葉を頂いたので、好きなように書いたら妄想の翼が羽ばたきすぎて正直条件を満たしていない感がプンプン漂ってます…。 そして裏をまさかのモブ静で消化するという意味の分からなさで何かもう本当に…すいません…!臨也さんに至ってもこれ格好良いのかどうか激しく疑問しか残らないな! ううう返品・苦情受け付けます…! ハコさまリクエスト有難うございました>< |