いい加減シズちゃんとの追いかけっこに嫌気が差して、あの忌々しい喧嘩バカを本気でどうにかできないか考え始めたのが2日前。

何かの役に立つだろうと、ネット通販で筋弛緩剤と媚薬を購入したのが1日前。

池袋をブラブラしていると何時もの如くシズちゃんに見つかって追いかけ回されたのが1時間前。

逃げ道を考えながら走り回って、人気の無い裏通りに誘導したのが40分前。

何の疑いも無く俺の後を追いかけてきたシズちゃんの背後に回り、筋弛緩剤と媚薬を打ったのが35分前。

ぐでんぐでんになった無抵抗のシズちゃんを壁に押しつけて、無理矢理犯したのが30分前。

そして今。






「…っふ、うぅ…うっ…ふぇ」
「………シズちゃん」
「…ひっ、えぐ、しゃべんなっ…うぅ…」


どうしよう。
シズちゃんを犯してやるまでは寸分の狂いも無く計画通りだったというのに、まさか目的を達成したあとに不測の事態に陥るなんて。
この単細胞馬鹿のことだから、きっと怒り狂って、後で覚えてろとか殺してやるとか当たり障りのないつまらない罵り文句を言われるのだろうと思っていたのに。
強姦されたあとシズちゃんはあろうことか、へなへなと崩れ落ちて涙をボロボロ零しながら号泣し始めてしまったのだ。
三角座りをした膝に顔を埋めて、えぐえぐと嗚咽を漏らしながらかれこれ10分以上は泣き続けている。

どうしよう。
男に、しかも大嫌いな大嫌いな俺にあろうことか尻の穴に突っ込まれて、媚薬のせいもありアンアン喘いでイってしまった自分が恥ずかしいんだろうか。いやそりゃ恥ずかしいだろうけど、まさかあのシズちゃんが泣いちゃうなんて。

どうしよう。
犯されたことで俺に少しでも恐怖心を抱いて、今後見付かる度に追いかけ回されるような事が無くなればいいと思ってヤっただけだったのに。
慣らしもしていないソコに無理矢理突っ込んで腰を振っている最中だって、目の前の男に憎らしさしか抱いてなかったのに。
シズちゃんなんて初めて出会ったその瞬間から嫌いで嫌いで仕方なかった筈なのに。

どうしよう。
泣きじゃくるシズちゃんが、何だかとても可愛いだなんて。


「シズちゃん」
「っん、だよ…さ、わんな…っ!」
「シズちゃん」


下腹部にこびり付いたままの、俺がぶち撒けた精液をハンカチで拭いてあげると
シズちゃんはいやいやをするように頭を緩く振りながら、身を捩った。


「シズちゃん、ごめんね」
「思っても、いねえようなこと…言ってんじゃ…」
「悪いと思ってるよ、本当にさ」


確かに犯してる最中はそんなこと思っていなかったけどね、これっぽっちも。
でもたった今現在進行形で俺の胸をぎゅうぎゅう締めつけるこの気持ちは、罪悪感とあともうひとつ。
「人間」を愛するばかりで「個人」を愛したことの無かった俺にも、この気持ちの正体は分かっているんだ。
まいったなあ。まさかシズちゃん相手に、しかもこんな形で気づかされてしまうなんて。
そう、つまり俺は


「どうしよう、シズちゃん。俺、君の事が好きになっちゃったみたいだ」


細い身体を抱きしめて柔らかい金髪を優しく撫でながら、耳元でそう告げるとシズちゃんは目を見開いて一瞬泣き止んだ。
その数秒後、彼が先程よりも激しく泣き出し始めたのは、俺に好きだと言われた事に対して嫌悪したからなのか嬉しく思ったからなのかは分からない。











間違いなく前者です。



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