「…こ、これ…捨てとけって言っただろ…」
「だって1回も使ってないのに、捨てるなんて勿体ないじゃん」
「な、なら自分で使えばいいだろうが」
「え?やだよ、俺シズちゃんみたいな淫乱じゃないし」


あはは、と笑いながらとんでもないことをサラリと言ってのける臨也に、こんな身体にしやがったのはどこのどいつだと文句のひとつでも言ってやろうと開いた口は、事も無く臨也自身の唇によって塞がれた。
乗り上げてきた臨也の体重で、ソファに深く沈み込む。
やばい、この流れは非常にやばい。今回ばかりは流されてなるものか、と臨也の胸を押し返してみるがキスの心地良さに酔いしれた身体ではそれも上手くいかない。


「…っん、ふっ…、止めろっ…って」
「…ね、シズちゃん。俺ひとつ気付いたことがあるんだよね」
「なんだよ…?」
「覚えてる?前回も前々回も、1回ヤったら元に戻ったんだよ」
「なっ…!」
「ヤったらっていうか正確に言うと射精したら、かな?とりあえず1回イッたら元に戻ってたんだよ俺たち」


言われてみると確かにそうだ。
俺が幼児化したときは臨也に散々身体を弄られてイかされた翌日には元に戻っていた。
臨也が幼児化したときもバイブを持ち出してきたコイツを殴り飛ばしはしたものの、その後頼みこまれて結局手コキで一度イかせてやった翌日には臨也も元に戻っていた。
つまり…いや、いくら何でもそんなエロ漫画みたいな展開があっていいものか。


「ぐだぐだ考えたって仕方無いよ、シズちゃん。物は試しってことでさ。それで戻んなかったらまた違う策を考えればいいだけでしょ」


何だかまた上手く言いくるめられている気がしなくもないが、確かにコイツの言う通りだ。
他に思い当たる策が無い今、元に戻るためには少しの可能性にも懸けてみるしか無いのだろう。いやでも、だからって。
理性と本能の狭間で揺れながらなかなか決断を下せない俺に、臨也が焦れたように手を伸ばしてくる。
何だかんだ言ったってシズちゃんもしっかり興奮してるみたいだよ、と触れられた股間は確かに僅かに反応を示していた。
俺が何か文句を言うよりも早く、手慣れた様子で服と下着を一気に脱がせた臨也は、迷うことなく俺の秘部へと手を伸ばした。
解すように穴の周囲を数度揉まれた後、つぷりと1本の指が挿入される。
指とはいえ、ろくに慣らしもしないまま突っ込まれたのでは流石に痛い。
思わず顔を顰めるとそれに気付いた臨也が、大丈夫だよすぐに良くなるから、なんてその自信は一体何処から来るのかと言いたくなるような根拠も何もない台詞を言ってのける。


「っん、あ、いてぇ…って、くそ、ばかっ…!」
「ハハ、きっつきつだなあ…。いつものシズちゃんの此処は俺のブチ込まれすぎて、ゆるゆるなのにね?」
「あ、っや、なに言ってんだ、このっ…!」
「今のシズちゃんって一応処女ってことになるのかな?何かそれちょっと興奮するね」


一人で興奮して一人で息を荒くしながら先程から失礼極まりない発言ばかりしている臨也は、調子に乗っているとしか言い様が無い。
だがそれに対して文句を言う余裕も今の俺には無いのだった。
差し込まれた指はいつの間にか3本に増えていて、先程の臨也の台詞を肯定するようで腹が立つが確かに俺の身体は貪欲に快楽を拾い始めていた。
そろそろいいかな、と呟いた臨也がズルリと俺の中から指を引き抜くと、俺の右手に手を伸ばす。
そこには、未だに俺が握り締めたままになっていた禍々しい形状をしたバイブ。今からされることを咄嗟に予期した俺の顔からサッと血の気が引く。


「やっ、だ、だめだ、そんなの入んねえって…!」
「だぁいじょうぶ、シズちゃんなら。それにこれ俺のより小さいし、いけるいける」
「ばか、ふざけんっ…あ、はっ、あああ!」


ふざけんなどう見たってお前のマックス時よりこっちのバイブのほうがデカいだろうが。
ひたり、と後ろの穴に添えられた物体を遠慮なく押し込められたことにより、そんな文句は口にするまでもなく喉の奥へと消えた。
圧迫感で息が詰まる。息苦しさから思わず口を開くが、臨也がお構いなしにバイブの抽挿を始めた為、はくりと開いた口は空気を取り込むどころか喉奥から勝手に漏れてくる喘ぎ声に支配される。


「んっ、あ、やっ、あっ…ん」
「やっぱり何だかんだ言ってちゃんと感じてるじゃない、シズちゃん」
「あっ、ふ、んぁっ…も、やっ…だぁっ…」
「駄目だよ、何言ってんの。元に戻るためには俺も気持ち良くならなきゃいけないんだから…、ね?」


ニヤリと笑った臨也は、好き勝手に出し入れを繰り返していたバイブから手を離すと、いつの間にか手にしていたリモコンのスイッチを入れた。
突如俺の中で震え出したバイブの感覚に、喉の奥から引きつったような声が漏れ身体がしなる。
機械的な振動を繰り返すその微弱な動きですら、快楽にとろけきった今の俺の身体には毒にしか成り得ない。
ひっきりなしに喘ぎ声を洩らしながら悶える俺を満足気に見下ろしていた臨也が、ふいにズボンと下着を脱ぎ己の性器を取り出した。
小さいながらに立派に反応しているそれを、俺の自身にぴたりと添えさせる。


「やっ…、な、なにすっ…!」
「こうしたら、気持ちいいでしょ?ほら、すっごくヌルヌルしてる」
「やっ、はっ…ん、あ、それっ…やだっ…!」
「ちょっとシズちゃん動かないでっ…、大人しくしてたらちゃんとイかしてあげるから」


臨也が腰を動かす度、俺の性器の上を臨也自身がぬるぬると滑っていく。
手や口でされるのとはまた違う、ぬるりとした粘液を纏った性器同士が擦れる初めての感覚に、俺の身体は震えた。


「ん、あっ、あ、もっ…あっ…ん、だめだっ…!」
「んっ、いいよ、イッて、シズちゃんっ…!」


ラストスパートをかけるように、速まった臨也の腰の動きに導かれるように俺は白濁を吐きだした。
一呼吸遅れて臨也から吐き出された精液が俺の腹に降りかかる熱さを頭の奥で感じながら、俺は意識を手放した。







目を覚ましたのはベッドの上で、いつの間に着替えさせられたのか俺はいつものバーテン服を着ていた。
いつお泊まりになってもいいように、なんて理由で半ば無理矢理スペアとして臨也の家に数着置かされているものの一着だろう。
この服がぴったり合うということは、つまり…元に戻ったのか。
起き上がり、部屋の隅に置いてある姿見に自分の姿を映してみる。
鏡の中に居るのは、髪を金に染め上げひょろりと長い手足を携えた見慣れた己の姿だった。
…本当にヤれば元に戻るのかよ。
元の姿に戻れたことに対する安堵感と込み上げてくる苦い気持ちを噛み砕いていると、寝室のドアがキィと開いた。


「あ、目ぇ覚めたんだ」
「………」


相変わらず薄い笑みを口元に湛えながら室内に身を滑らせた臨也も勿論元の姿に戻っていて、手に握られていたミネラルウォーターのボトルをひょいと投げ渡される。
こいつ、俺にあんなことしやがったくせに飄々としやがって。随分余裕じゃねえか、畜生。
臨也の手によって己の身に降りかかった先程の事態を思い返すと、胸の内に湧き上がってくるのは苛立ちばかりだ。
ミネラルウォーターを一気に飲み干すと、怒りのままにボトルを臨也めがけて投げ付けた。
それを容易く受け止めた臨也は、軽く肩をすくめる。


「お前俺にあんなことしやがって…後で覚えてろよ」
「まあまあ、結局はお互い元に戻れたんだからいいじゃない」
「そういう問題じゃねえだろ。…何回も嫌だって言ったのに」


臨也と目を合わさないまま不貞腐れたように呟くと、視界の端で臨也が肩を震わせたのが分かった。


「…なに笑ってんだ」
「ううん、別に」
「別にじゃねえ、言えよ」
「…いや、俺だってさ、シズちゃんが本気で抵抗したら無理矢理犯したりしないよ、さすがに。でもそうしないってことは、つまりさ…」


臨也はそこで口をつぐんだ。
皆まで言われずとも俺自身だって分かっている。口では嫌だ嫌だと言いつつも本心では本気で抵抗していないことなんて。
自分のことなのだから分からないはずがない。だからこそ腹が立つ。そんな自分にも、全てを見透かしている臨也にも。
クソッと悪態をつくと、先程から我慢していたのだろう、ついにプハッと吹き出した臨也が笑いながら俺をぎゅうと抱きしめた。


「子供のシズちゃんも可愛いけど、やっぱりいつものシズちゃんが一番落ち着く」


暖かい腕に抱きしめられながら甘い声音でそんなことを言われるものだから、怒る気も失せるというものだ。
過度のスキンシップや行き過ぎた行為を強要されたとしても、臨也がもたらすそれら全てを結局は甘受してしまう。
口に出すことは到底出来ないが、お前も子供の時よりいつもの姿のほうが何倍も格好良いよ、そんなことをソッと胸の内で思ってしまうほどには俺も臨也のことを好いているのだ。











橘光さまから頂いたリクエストで、「賞味期限以内〜」「生まれる前から〜」の続編で両者ともショタ化でした。
前置きパートとエロパートを分けてみたら、またも驚異的な長さですがすごく…楽しかったです…。ただいつものことながら折角のショタ化を全然活かせていない気がします。がくり。

橘光さま素敵なリクエストと、嬉しいお言葉有難うございます><
三度の飯より静雄にメロキュンな臨也と、口ではあーだこーだ言いつつも結局は甘やかしちゃうツンデレ静雄が好きなので今回もそんな感じになりました(笑)
裏は余裕があればとの事でしたが、喘ぎが可愛いと言って頂けたのが嬉しかったので調子こいてぬるっとエロ入れちゃいました(^^)調子に乗って喘がせすぎた気がしなくも…無い…!
この度は企画にご参加頂きまして、有難うございました!
これからもどうぞ宜しくお願い致します。



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