※薄暗い
※気が狂っている
※しあわせの「し」の字も無いので、嫌な予感がしたらバックバック!








久しぶりに臨也の家を訪れてみた。
治療という名目で臨也のほうから俺の家を訪ねてくることは沢山あるが、こうして俺のほうから臨也のもとへ出向くことは殆ど無い。

大体の住所しか知らなかったのでちゃんと辿り着けるかどうか不安もあったが、流石というべきか何と言うべきか、恐らくセレブが住んでいるのだろうと一目で分かるほど立派な高層マンションの中にある臨也の部屋は、驚くほど簡単に見つかった。


「いらっしゃい、珍しいな新羅が来るなんて」


いくら友人と言えど、アポ無しで突然訪ねるのは流石に迷惑かもしれないと気遣い、新宿に向かう前に連絡をしておいたので、臨也は嫌な顔ひとつせず実ににこやかに微笑みながら迎え入れてくれた。


「悪いね、いきなり。仕事中だったかな?」
「いや、いいよ。そろそろ一段落つく頃だ」


コーヒーでも入れるよ、と台所へと向かう臨也にお構いなくと形ばかりの言葉をかけるとリビングへと向かった。
テレビの前のローテーブルを囲む形で置かれているソファに、1人の男が座っていた。
此方に背を向ける形で座っている男の顔は見えないが、まず間違いなく静雄だろう。
あの長身とド派手な色の金髪にバーテン服を着込んでいる男なんて、世界広しといえどなかなか居ない。
反対側に配置されているソファに、男と向かい合う形で座り真正面から顔を眺めると、やはり静雄だった。
ぼんやりと焦点の合わない瞳で、床の1点をじっと見つめている。


「ゴメンね、シズちゃんいつもこの時間は、お眠なんだ」


コーヒーカップとシュガーポットを載せたお盆をテーブルに置いた臨也が、少し肩をすくめる。
そのまま静雄の隣りへと腰を下ろした臨也が、未だぼんやりとしている静雄の頭を優しい手つきで撫でると、静雄の口元が僅かに微笑んだように見えた。
少しギョッとして強く瞬きをしてからもう一度よく見てみると、静雄の表情は先程のぼんやりとしたものから全く変わっていない。
恐らく気のせいだったのだろう。
シュガーポットには手をつけずに、コーヒーカップを持ち上げ口元へと運んだ。


「それにしても臨也、少し痩せたんじゃないかい?」


臨也はもともと身長の割に細いほうだったが、今目の前で緩く微笑みながら静雄の頭を撫でる臨也は以前以上に痩せ細ってしまっている気がした。久しぶりに見るので余計そう思えるのかもしれないが。
顔色もあまり良くないし、医者という職業目線からでなくても体調が良くないだろうことは明らかに見て取れる。


「そうかな。別に変わらないよ、ちゃんとご飯も食べてるし」
「そうかい?なら、いいんだけど」
「俺よりシズちゃんのほうが心配だよ。ご飯作ってもほとんど食べないし、もともと細いのに最近はもうどんどん痩せるばかりでさ。食欲不振ってやつかな?新羅、何かいい薬とかあったらまた持ってきてくれよ」
「…うん、そうするよ」


静雄の話となると臨也は途端によく喋る。
曖昧に相槌を返しながら静雄へと視線を向けると、先程までぼんやりと視線を落としていた瞼が閉じられていた。
一体いつの間に、と少し驚き目を見張ったが、先程臨也が静雄の頭を撫でている間に閉じたのだろう。
然程驚くことでもない。

出されたコーヒーを飲み干してから腰を上げると、臨也が少し拍子抜けしたような顔をしてみせた。


「なんだ、もう帰るのか?」
「うん、とりあえず今日のところはね。久しぶりに臨也と静雄に会えたし」
「そう、まあ無理に引き止めはしないけど…ああ、シズちゃん寝ちゃったね。折角新羅が来てくれたのにシズちゃんたら眠そうにしてばっかりでゴメンね」
「いや、気にしないでよ。また、来るから」
「そうだね。じゃあ、また」


隣りで眠る静雄の肩を抱き寄せた臨也が、その柔らかい金髪をふわりと撫でながら微笑む。
その表情はひどく幸せそうだった。











ただいま、セルティ。…うん、やっぱりそうだったよ。静雄は臨也の家に居た。どうやったかは知らないけど多分薬か何かを使って、攫って監禁してたんじゃないかな。2週間前に行方不明になってからずっと静雄はあそこに居たんだと思うよ。救急車?ああ、そうだね。呼んであげたほうがいいのかもしれない。臨也かなり痩せ細ってたから。あのままじゃ栄養失調か何かで倒れるのも時間の問題だろうし。え、静雄?いや、今更静雄に救急車は必要無いよ。そうだな、もし呼ぶとしたら救急車じゃなくて警察のほうだろうね。
…もうかなり臭ってきてたから。












静雄は死んでます。




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