※まりあほりっくパロ
※静雄が変態、臨也がガチホモ
※無駄に長い
※嫌な予感しかしない人は超逃げて!








私立来良学園。
此処が、俺の明日からの学び舎になる。
もともとは男子校だったものが一昨年から共学になったのだけど、未だ女子生徒の数は多いとは言えない。
聞いたところによると、1クラスに5,6人の女子が居れば良いほうらしい。
その話を聞いただけで盛りのついた年頃男子ならば、何だよそれテンション上がんねーなんて沈鬱な気分になること間違いなしだが、俺にとっては逆に好都合だ。
寧ろ俺がこの学園に編入することを望んだ一番の理由は、そこなのだから。



「あー…どこだよここ…もしかして俺迷ってる?」


校門をくぐり、道なりに真っ直ぐ歩いてきた筈なのに何時までたっても校舎に辿り着く気配がみえない。
これから校長室に挨拶に行って、今日から入寮する学生寮にも挨拶に行かなければいけないというのに。そもそも何処だよここ!敷地内で迷うなんて、どんだけ広いんだよ!
思わず飛び出す脳内ツッコミを抑える気も起きず、立ち止まりきょろきょろと辺りを見回す。
と、背後から控えめに声がかかった。


「そこで何してるんですか」


振り向くと、何時の間にやら俺の背後には幼い容姿をした黒髪の少年が立っていた。
俺より年下であることは間違いないのだが、あまりの童顔っぷりに詳しい年齢までは判らない。
中学生にも見えるし少し大人びた小学生と言われても信じれそうだが、俺と同じく来良学園の制服を身に纏っていることから、どうやら高校生らしいということが分かる。
うーん、こんな純朴そうな子もなかなか…。
心中で思わず舌舐めずりしながら、それを悟られないよう俺は人あたりの良い笑顔を浮かべた。


「やあ、実は俺明日からこの学校に編入することになってるんだけど…挨拶に行く途中で道に迷っちゃってね」
「ああ、そうなんですか。きょろきょろして見るからに怪しいから、変態かと思っちゃいました」


あれ?何か俺今、毒吐かれた?
爽やかな笑顔で投下された爆弾を、俺は気のせい気のせい!と横に退けることにして、先程よりも深い笑顔を浮かべた。


「此処って学校の敷地内じゃないのかな?校舎も寮も見当たらないから、困っていたところなんだよ」
「なんだ、わざととぼけたフリをした、転校生を装った変質者もしくは泥棒かと思っちゃいました」


気のせいじゃないよね、これ!
明らかに敵意を持って毒づく眼前の少年に、此方の笑顔も凍り始める。
えー、ちょっと待って、何この子!何で初対面の俺に対してこんな敵意剥き出しなわけ、怖い!
俺の心の奥に隠したどろどろとした欲望を見透かされたのかと思ったが、この16年で自分なりの処世術を身につけた俺は、他人に自分の性癖を見抜かれたことなど無かったから、きっと何かの間違いだと思い込むことにする。


「何してんだ、帝人」


この少年への対処にほとほと困り果てている俺の背後から、またも違う声がかかる。
そちらを振り向くと、カツカツと此方に歩いてくる一人の女子生徒の姿。


「何こんなとこで騒いで…ん、誰だアンタ」
「えっ、お、俺?」
「あなた以外に、誰がいるんですか?馬鹿なんですか?」


歩み寄ってきて、ようやく俺が顔見知りではないことに気付いたらしい彼女に小首を傾げながら尋ねられ思わず上ずった声で聞き返すと、眼前の少年にまたもキツイ言葉をお見舞いされた。


「あ…っと、俺は折原臨也。その、よろしく」
「オリハライザヤ?聞かない名前だな」
「編入してきたんだよ。明日から、ここの生徒になる」


そう説明すると、彼女はなるほどといったように小さく頷き手を差しだしてきた。

えーと、これは握手…なのだろうか?
正直戸惑った。何故なら、俺は女が苦手だからだ。
いつからそうなったのかだなんて詳しいことは覚えていないが、女性特有のあの柔らかさとか甘い匂いとかがとにかく苦手で、今となっては女性に触れられただけでもじんましんが出てしまうほどの、特異体質になってしまった。
しかし、此処で彼女の手を振り払おうものならば、感じが悪いどころの話ではなくなってしまう。

俺はゴクリと唾を飲み込むと、意を決して差しだされた手を握り込んだ。


「私は、平和島静緒。よろしくな」
「あ、うん…よ、よろしく…」


おかしい。俺は明らかな違和感に戸惑っていた。
何故って、出ないんだ。何がって、じんましんが。
女性に触れると老若男女問わず必ずと言っていいほど出没したじんましんが、こんなに若くてピチピチの女子高生に触れても出ないなんて初めてのことだった。


「…どうかしたか?」
「あっ!い、いや、なんでも…!」
「静緒さんの名前が珍しくて驚いたんじゃないですか?女の人なのに、男みたいな名前だから」
「うっせえなあ、ほっとけ」


手を離したあと、俺は自分の右手をまじまじと見つめた。
しかしそうしたことで何が分かるわけでもなく、俺は自身の手を眺めることを早々に止めて、不思議そうな表情で首を傾げている彼女に視線をやる。

まず背が高い。男の俺よりも身長が高い。ゆうに180センチは超えているんじゃないだろうか。
次に、声が低い。女の子のあのキャピキャピした甲高い声も俺にとっては苦手要因だが、それが無い。
あと、髪が短い。金色に染め上げられた髪は、男にしては長めだが女の子にしてはかなり短い。
しかも、今時スカートが膝丈。スラリとした長身にはよく似合っているが、短ければ短いほどいいとでも思っているのかと言いたくなる最近の女子高生にしては、改変されていない膝丈のスカートを履いている生徒なんて希少だろう。

そうか、彼女は女というものを感じさせないんだ。
顔はかなりの美人だが、可愛いというより綺麗といった感じで、俺が描く苦手な女子像にあまり当てはまらない。
言葉遣いも乱暴で男みたいだし…。
だから、じんましんも出なかったんだな、きっと。

適等な理由で自分自身の疑問を丸めこむと、俺は清々しい表情で顔を上げた。


「いや、ゴメン。確かに珍しい名前だよね」
「ん、まあな…でも自分じゃ結構気に入ってっから」
「うん、俺もいい名前だと思うよ」
「そっか?…ああ、そうだ。お前挨拶に行く途中だったんだろ?とりあえず学生寮まで案内してやるよ」


前を歩き出した静緒ちゃんに早足で追いつき、隣りに並んで歩く。
確かにこんな男勝りな女の子になら、拒否反応なんて出なくても納得がいく。

こんな子なら、俺でもちゃんと男女のお付き合いが出来るかもしれないな…
なんてヨコシマな考えが飛び出すが、そもそも「付き合える」と「付き合いたい」は別物だ。
静緒ちゃんのような子なら大丈夫かもしれない、というだけで俺が本当に彼女のことを好きになれるとは思えない。


「にしても珍しいな、こんな時期に編入って」
「うん、そうなんだけどどうしてもこの学校に入りたくてさ」
「…どうしても入りたいほど有名な学校でもないと思うけどな、此処?」
「俺の両親がこの学校の出身だから、見てみたかったんだよ一度」
「両親って…ここ元男子校だぞ?共学になったのは一昨年からだし」
「ああ、違うよ。生徒だったのは父親で、母親はこの学校の教師だったんだ」


そうなのだ。
俺の両親はこの来良学園で出会い、恋をして、そして結ばれた。
男である俺がそんな少女漫画的ドラマチックな恋物語を夢想しているわけではないが、全く期待していないというわけでもない。
両親が運命の相手と巡り合ったように俺も…なんて淡い期待を少しは抱いてしまうのが若さというものだろう。
そして俺が運命の相手を探すのに、この男だらけの学校は都合が良かった。
何故なら…いや、もうそろそろ皆気付いている頃合いだろうからハッキリとは言わないけど。


「何かいいな、そういうの。漫画みたいで」
「うん。それで、俺も両親みたいに此処で運命の相手と出会えたらなー…なんて」
「ハハ、案外ロマンチストだな、お前」
「あ、うん、まあね…何か恥ずかしいこと言っちゃったな」
「いや、いいんじゃねえの。でも、さっきも言ったけどここ元男子校で女子少ねえし、あんま期待は出来ないと思うぞ?」
「あっ、いや違うんだ、そうじゃなくて…」

「…そうじゃなくて?」


訝しむように眉を寄せた静緒ちゃんを見て、俺は思わずとんでもないことを口走ってしまった自分に気がついた。
こんな女の子に何をカミングアウトするつもりだったんだ、俺は!

何でもないよ、と彼女から目を逸らしてしまったことで俺は気付かなかった。
俺を見つめる静緒ちゃんの瞳がさも愉快そうに細められ、その形の良い唇が弧を描いたことに。


「ここ、真っ直ぐ行ったら寮に着くから」
「え?ああ、ありがと」


ふいにピタリと立ち止まり、道の先を指差す静雄ちゃんに、俺はきっとあからさまに、最後まで案内してくれないんだ?という表情をしていたのだろう。
クスリと苦笑した静緒ちゃんが申し訳なさそうに顔の前で手を合わせた。


「悪いけど、私これから弓道部の自主練があって。あとで良かったら学校も案内してやろうか?」
「あ、うん!良ければ…」
「じゃ、またな」


ひらりと手を振り歩き出す静緒ちゃんの後ろに、帝人と呼ばれていた毒吐き少年がぺこりと頭を下げてついていく。
静緒ちゃんは確かに女だ。俺の恋愛対象になどなりはしない。
でも、彼女に対して抱いた好感は気の迷いなどでは決して無くて、静緒ちゃんなら俺の初めての女友達になってもらえるかもしれない、
と俺は今後の展開に胸を弾ませた。







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