「君のことが好きなんだ」


暖かい春の陽射しがさんさんと降り注ぐ中、俺は頬を紅潮させながらそう呟いた。
彼は一体どんな顔をしているだろう。
心臓がドキドキと高鳴ってきっと今自分はとても情けない表情をしているだろうと思うと、顔を上げることも出来ない。
ぎゅっと目をつむり唾を一度飲み込んだあと、彼が口を開く前に俺は次の言葉を口にした。


「ゴメン、いきなりこんなこと言われても迷惑だよね。分かってるんだ、それは。俺も別に静雄くんと付き合いたいとか、そんなおこがましいこと思ってるわけじゃなくて、ただ自分の気持ちを伝えておきたかっただけだから…本当に、それだけだから。困らせてゴメンね、じゃあ!」


休みなく一息でそこまで言い切ると、俺はさっさと踵を返す。
そんな俺の背中に、今までじっと黙っていた静雄くんの声がかかった。


「待てよ、折原」
「え?」
「俺に気持ちを伝えて、お前本当にそれで満足なのか?」
「ど、どういう…こと?」
「本当は、俺と付き合いたいんだろ?」


小首を傾げ、此方を試すような態度で紡がれるその言葉に思わず期待してしまいそうになる。
脈なんて無いと思っていた。あるはずが無いと思っていた。
だって俺と静雄くんはクラスでもそれほど仲が良いほうじゃなくて、むしろ殆ど喋ったことすら無くて。
それ以前に俺は男で彼も男だ。期待なんて………しても、いいんだろうか。


「静雄くん、気持ち悪く…ないの?」
「気持ち?…わりーよ」


にこり。
清々しい笑顔を浮かべたあと、静雄くんの表情は一瞬にして真顔に戻る。


「ゲロしそうに気持ちわりーよ、早く死ね!このホモ!」


これが高校の卒業式で起きた、今後の俺の人生を変える出来事だ。






▼その後、傷心の折原くんは新宿2丁目のゲイバーに生まれて初めて足を運んでイケナイ扉を開いてしまい、またたく間に狙った獲物は逃がさない魔性のゲイへと変貌を遂げるのでした。まる。

原作ルートだと、

告白するも折原玉砕→傷心の末ゲイバーに行って開花→魔性のゲイと化する折原→狙った獲物はノンケだろうが子持ちだろうが必ずげっちゅ→大人になって静雄と再会→静雄のことをまるっと忘れてる折原に再び迫られて、覚えてねえのかよお前!ってなる静雄→なんだかんだで2人で仲良くケーキ屋さんとかやっちゃう

そんな感じです(笑)