「あっつぅ…」


真夏の炎天下の中、次から次へと流れてくる汗を最早拭う気も起きない。
左手にぶら下げたコンビニ袋の中でガサガサと揺れるアイスが溶けてしまわないだろうかと不安になりながら、俺は足を早めた。

今日は仕事がオフだというシズちゃんの部屋に遊びに行ったまでは良かったが、エアコンが完備されていない彼の部屋は如何せん暑かった。いやー暑すぎた。
何をする気にもならなくてゴロゴロとしていた俺を蹴り飛ばして、アイス買ってこい、と愛しい暴君から無情な命令を下されたのがつい先ほどの出来事。
もともと拒否権なんて用意されていない俺は、小銭を片手にコンビニに向かうしかなかった。





「ただいまー」
「おー」


部屋のドアを開けてなるべく明るい声色で声をかけると、ソファに寝そべるシズちゃんが気だるげに右手を挙げた。
ていうかシズちゃん俺が出ていったときと全く1ミリたりとも体勢変わって無いじゃん。
この、お前馬鹿じゃねーのと叫び出したくなるようなくらいクソ暑いなか人をコンビニまで走らせといて君ときたら!
ふつふつと湧き出る怒りを腹に押し込めながらアイスの入った袋をはい、と手渡すとシズちゃんが漸くこちらを向いた。


「何がいいのか分からなかったから、適当に色々買ってきたけど」
「んー、サンキュ」


ガサガサと袋の中を物色するシズちゃんに少しぶっきらぼうに声をかけると、はにかんだように笑ってお礼を言われた。
そんなの反則だ。畜生かわいい!
これだからどれだけ理不尽言われても嫌いになれないんだよなぁシズちゃんのこと。

悩んだ末、結局一番スタンダードなバニラバーを食べ始めたシズちゃんを見ながら、俺も適当に袋の中から水色の氷菓子を手にするが、視線はシズちゃんから片時も離せない。
シズちゃんの口内へと導かれた白いアイスが舐められ時には噛まれ、溶けた白い液体が口の端を伝って…
うん分かっちゃいたけどエロイよね。
ちょっとそういったエロハプニングを期待して買ったバニラバーだったけどまさかシズちゃんがここまで期待通りのエロい食べ方してくれるなんて予想外でしたものね。
本人無自覚だろうけどね。
ちょっとばかりむらっとして、下半身に熱が集まるのが分かった。
それを悟られないように、少し腰を引きながらシズちゃんに声をかける。


「シズちゃん、それちょっとちょうだい」
「ん?」


突然の俺の要求にシズちゃんは少し首を傾げたが、アイスを買ってきたのも俺であるならお金を出したのも俺だからここを断るのは流石に悪いとでも思ったのか何なのか、狼の術中に嵌った哀れな子羊は素直に右手のアイスを差しだしてくる。
いやシズちゃんの場合は、子羊というよりは象とかキリンとかの大型動物のほうが当てはまるかも。まあどうでもいいか。
差しだされた右手を無視してソファに手をつき、俺はシズちゃんの唇に食い付いた。
ぺろりと口の端を舐めたあと、唇を重ねて、舌を差しいれ徐々に口づけを深くしていく。


「ん、っふあ、っは、んぅっ…」
「……ん、甘いねシズちゃん」
「………っ、死ね!」


唇を離して、熱っぽく名前を呟いた俺に返ってきた返事は、ムードも何もない死刑宣告。
まあシズちゃんにムードなんて期待してないけどさあ。
ていうかアイス食ってていきなり興奮してキスした俺にもムードを語る資格なんて無いかもしれないけど。
でもすでに欲望への一歩を踏み出してしまった俺が、ここで止まるわけもない。


「っちょ、お前何してっ…!」
「分かってるくせにー。言わせたいの?」
「や、めろって……ん、あっ、ちい…」


ゆるく抵抗するシズちゃんの腕を掻い潜ってTシャツを捲り上げ露わになった胸の飾りをべろりと舐めると、またもシズちゃんは「熱い」なんてムードも何もないような喘ぎ声をあげた。
確かに口の中は熱いかもしれないけど、アイス食べてたから普通よりは冷たいと思うんだけどなぁ。
熱いというシズちゃんの文句は無視して、尚も乳首を舐めたり指で摘まんだりを繰り返す。
最初はのしかかる俺をどけようとしていたシズちゃんの抵抗も次第に小さくなり、いやいやと緩く首を振った。


「あ、ん…やっ、アイス、がっ…」


溶けちまう、と。
快楽に弱いシズちゃんの思考回路はもう既にぐずぐずに溶けきっているだろうに、まだ少しばかりの理性が残っているらしい。
急に先程まで食べていたアイスの心配をし始めるあたり、やっぱり少しズレている気もするけど。
シズちゃんの右手から白いアイスを取り上げると、俺は自分でも分かるくらいいやらしい笑顔を浮かべた。


「んっ…、は、あ?」


意味が分からないというように、きょとんとした表情を浮かべるシズちゃんを可愛いなあと思いつつ、彼が身につけているスウェットと下着を一気にずり下ろした。
いつものバーテン服もストイックな感じでいいけど、やっぱこういうラフな格好は脱がしやすくていいなあ。
なんて気楽なことを考えている俺とは逆に、先程の俺の台詞の意味を察したらしいシズちゃんは焦ったように俺の胸をどんどんと叩くが、感じちゃってめろめろ状態になってるシズちゃんの力なんて、ちょっと力が強い成人男性くらいの威力しか無いんだからね!
まあ割と地味に痛いけど。決して痛くないわけでは無いけど。
いつもシズちゃんに全力剛速球で殴られ慣れている俺にとっちゃワケもない。


「ちょ、やだっ…いざ、やっ…!」
「大丈夫大丈夫」


何が大丈夫なんだか。
我ながら適当な慰めをいれつつ、後ろの穴に指を1本差しこみ解すようにぐにぐにと動かす。
さすがに1本だけだとすぐにゆるくなったので、もう1本指を増やして穴を広げる。
もういいかな。もともとそんなに太いアイスでも無いし、まぁ大丈夫だろ。
ぐいっと穴を広げて、手に持ったアイスを入口にぴたりと宛がう。
未だにやめろやめろと叫ぶシズちゃんを再度無視して、アイスをとろけきった蕾に突き入れた。


「あ、あああ、んっ…やぁっ」
「やらしいなあシズちゃん。こんなとこにアイス咥えこんじゃってさあ」
「あっあっ、誰のっ…せいだとっ…ああ!」
「すっご…ほんとにエロイよシズちゃん。見せてあげたいなあ」


アイスの棒を掴み出し入れを繰り返すと、ぐちゃぐちゃという音とともに溶けたアイスが液体となってシズちゃんの穴を濡らす。
白いアイスにして正解だったなあなんて思いながら、視覚的にもかなり刺激的なその光景に俺の自身も限界を感じてしまう。
シズちゃんの中の熱さでみるみるうちに溶けて細くなってしまったアイスでは物足りなくなったのか、シズちゃんは喘ぎながらゆるゆると腰を揺らし始める。


「やっだ、いざやっ…いざやっ…」
「なあに?どうしてほしいのか言ってごらん?」


焦らすように、最早ほぼ棒のみとなってしまったアイスを引き抜き、ぺろりと舐める。
とろけきって焦点の合っていない瞳で俺を見つめるシズちゃんに、俺自身もう余裕もないくせに意地悪を言うと、彼は少し迷う素振りを見せてから、ぎゅっと目をつむっておずおずと口を開いた。


「し、してくれっ…よ」
「ふふ、何を?」
「臨也!」
「なあにシズちゃん。言ってくれなきゃ分かんないよ?」
「ばかっ…」
「何とでも」


とは言ってもそろそろシズちゃんが折れてくれないと、俺だってもう限界だ。
シズちゃんからは見えてないかもしれないけど、今俺の股間は現在進行形ですごいことになってしまっている。
まあ恥ずかしがり屋のシズちゃんにしてみりゃ、この程度のおねだりでも頑張ったほうかなあ
なんて思いつつ、自らのズボンに手をかけるとシズちゃんは、あうあうと唇を震わせながら消え入りそうな声で呟いた。


「い、挿れてっ…くれ……臨也、の…」
「えっ」


まさか本当にそんなこと言ってくれるとは思っていなくて目を丸くした俺を、シズちゃんは真っ赤な顔で睨みあげた。


「なんだよ…早くしろよ!」
「えっ…うん、も、もちろん…」


恋人にこんな可愛くおねだりされちゃ頑張らないわけにいかないでしょう男としては。
すでにメーターを振り切った理性などかなぐり捨てて、俺はシズちゃんを思いきり抱きしめた。










(くそ、なんで冷蔵庫入れとかねえんだよ!他のアイス全部溶けちまってるじゃねえか!)
(ゴメンゴメン、ていうかシズちゃん怒るポイントそこなんだね)
(は?何がだよ?)
(いや、いいんだよ別に。シズちゃんがああいうプレイ嫌いじゃないなら俺は嬉しいから)







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