※DTBパロ
※静雄と臨也が契約者
※原作を知らない方は、
契約者→何かしらの能力者
対価→契約者が能力を使う度に支払わなきゃいけない代価
という超投げやりな解説を頭の隅に置いておいて頂ければ!






バタバタと慌ただしく廊下を走る音が聞こえて、「ああ帰ってきたか」と他人事のような感想を抱きながら新羅はコーヒーを啜った。
と同時に、壊れるのではないかと心配になるほどの勢いで開け放たれた扉。
そこから顔を覗かせた金髪の青年が、誰がどう見ても分かるほど不機嫌そうな顔をしていたものだから新羅は苦笑しながら声をかけた。


「お疲れ、静雄。今日も早かったね」
「……アイツは」
「あー…、臨也?」


気をきかせてかけた労いの言葉も静雄の耳には届いていないようで、部屋をぐるりと見渡してから問いかけられた質問に、新羅は戸惑いがちに頬を掻く。
室内に、つい先程までつまらなさそうに携帯を弄っていた同僚の姿はもう既に無く、代わりに彼が飲んでいたコーヒーの空き缶がポツリと残されているだけだ。
廊下から慌ただしい足音が聞こえ始めてすぐ、臨也は静雄が向かってきた反対側のドアからさっさと出ていってしまっていた。


「さっきまで…居たんだけどねえ」


視線を彷徨わせながら躊躇いがちに口を開くと、静雄は顔を歪めてチッと盛大に舌打ちをした。
そのあと、またも心配になってしまうほどの勢いで扉が閉められ、バタバタと廊下を走る音が遠ざかっていくのを聞きながら新羅はコーヒーをひとくち啜った。


「大変だなあ…契約者って」


他人事のように呟かれたその台詞は、誰もいない室内に寂しく溶けて消え去った。







「くそ、どこ行きやがった…」


およそ臨也が行きそうな場所は全て当たってみたはずだが、一向に見付かる気配の無さに静雄は再び舌を鳴らした。
時間が経つたびに、疲弊した体は安楽を求めて泣き叫ぶ。
重くなっていく足取りに苦しくなってくる呼吸。もう歩きまわることすら億劫になってきて、自然に足が止まる。
膝に手をついて呼吸を整え、小さく「畜生」と呟くと、自分の足元に黒い影が伸びていることに気付き静雄は顔を上げた。


「シズちゃん全然俺のこと見つけてくれないから、痺れ切らして自分から出てきちゃったよ」


黒のスーツを身に纏い、面倒くさそうにポケットに手を突っ込んでにやにやと口元に笑みを浮かべる細身の男。
ずっと探し求めていた男が目の前に現れたというのに、静雄の顔に浮かんだのは歓喜ではなく明らかに憤怒の表情。
びきびきと音が鳴りそうなほどこめかみに血管を浮かせた静雄の口から、地を這うような低い声が漏れる。


「ふざけんなよ、テメエ…。俺が戻ってくるたび毎回毎回姿くらましやがってよぉ…いい加減殺されてえのか?」


普通の人間なら、その恐ろしさに背筋を凍らせそうなほど迫力のある凄みにも、臨也は何も気にしてなどいない風で余裕の笑みを崩さない。


「俺が死んだら困っちゃうのはシズちゃんのほうでしょ?」


かつん。
臨也が一歩踏み出し、静雄はぴくりと肩を強張らせた。


「それに、毎回俺にこんなこと頼むの不本意だから、もう任務で能力使わないようにするって言ってたばかりなのに…結局使っちゃったんだ?」


かつん。


「シズちゃんが俺のこと追いかけてくれるの、この時ぐらいだけだからさ。あんまり簡単に見つかっちゃうとつまらないでしょ?」


ぺとり。
静雄と数センチも離れていないほど至近距離に寄ってきた臨也が、その頬に手を触れる。


「ほら、能力使っちゃってしんどいんでしょ?対価、支払わせてあげるよ」


ゆるりと微笑んだ臨也を忌々しげに睨みつけてから、静雄は諦めたようにチッと舌打ちをして小さく口を開く。


「…目、閉じろよ」
「はいはい」


臨也の瞳がゆっくりと閉じられ、長い睫毛が影を落とす。
静雄は躊躇いがちに臨也の肩に手を置くと、ゆっくりと顔を近づけ控えめに唇を重ねる。
数秒その状態が続き、静雄が顔を離そうとしたところで、両サイドから伸びてきた臨也の腕に思い切り頭を掴まれ身動きが取れなくなった。
驚きで目を見開いている間に、僅かに開いた唇の隙間から臨也の舌が捻じ込まれる。


「…っん、ふ、んんっ…、はっ、ぅ」


散々、口内を蹂躙され尽くしてから臨也の唇が離れていく頃には、静雄の腰は砕け膝もガクガクと震えていて、本人にとっては不本意で仕方ないのだが臨也の肩に縋りつくような格好になってしまっていた。
呼吸を整えてから、目元を赤く染めた静雄がギッと睨みつける。


「舌、入れんなって…毎回、言ってんだろ!」
「ええー?いつも唇貸してあげてるんだから、それくらいのご褒美許してよ」


やれやれと肩をすくめた臨也を静雄が渾身の力をこめて突き飛ばす。
まだ膝が笑っているせいで少しよろけながらも、睨みつけてくる静雄に苦笑を返すと、臨也は手の甲で唇を拭った。


「それにしても、厄介だよね。契約者としての対価が、『男とキスすること』だなんてさ」
「…俺が好きでそうなったんじゃねえ」
「それは分かってるよ。ただ、そのせいで毎回だーいきらいな俺とキスする羽目になって可哀想だね、って話」
「前に1回新羅に頼んでみたら断られたから、仕方なくテメエで我慢してるだけだ」
「はは、酷いなあ」


そうは言っても全く気にした素振りを見せずケラケラと笑いながら一歩踏み出すと、静雄が少し身を引いた。
手を伸ばし、静雄の唇の端から零れた唾液の痕を拭う。


「…まあ、シズちゃんにそう頼まれても絶対断れって言ったのは、俺なんだけどね」
「え?」


ポツリと呟いた言葉が聞き取れなかったらしく、訝しげに眉を寄せた静雄に「なんでもないよ」と返すと臨也はにこりと笑みを作る。
体の内に感じる熱を燻ぶらせながら、それを悟られることのないようにゆったりと口を開いた。


「じゃあ今度は俺の対価のお手伝いしてくれるかな、シズちゃん?」










原作通りで行くと臨也の対価はお灸です(笑)
でもこの際、原作設定無視してもっとえろいこと出来る対価でもいいよね!
完全に俺得パロですみません、楽しかったです。



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