外は真っ暗で、数メートルごとにある街灯は今にも消えそうなほど弱々しい光を放っている。遅くなったなあと携帯を開けば二十時過ぎで、晩ご飯はどうしようかと悩みつつ携帯を閉じた。それにしても暗い。怖い。気にしないようにしよう、そう思い足を速めた。家はもうすぐなのだから。

「……みょうじ?」
「っ、え?」

控えめに耳の中に入ってきた声に肩が震える。振り返れば、そこにはあまり関わったことのないクラスメイトがいた。

「忍足…君?」
「おん。みょうじ、こんな時間に帰ってるん?」
「いや、今日は雑用頼まれて遅くなった。忍足君はええと、テニス部?だっけ?」
「せや。みょうじてほんま、俺に興味ないんやなあ。」
「そ、そんなことないよ。」

一応クラスメイトだし、と苦笑いしながら首辺りを擦っていたら、ふと腕をとられた。え、と忍足君を覗き込めばなんというか、苦しそうというか、色っぽい表情というか。忍足君?と呼べば掴まれていた腕をぐっと引き寄せられた。バランスを崩しそうになったが、なんとか持ち堪える。

「あかん、ほんまにもう、」
「え、忍足君?大丈夫?」
「ちょっと痛いかもしれへんけど堪忍な。いや、気持ちええかもなあ。」
「えっと?」

忍足君の言ってる意味が分からなくておろおろしていたら、突然腰をぐっと引き寄せられて、器用にネクタイとシャツのボタンを外される。ちょ、ちょっと待てなにこれどういうこと?

「や、なに、え、忍足君ちょっと落ち着いて!これはおかしい!」
「俺は冷静やで。あと夜やから、あんまり騒いだらあかん。」
「う、あ、」

耳元でゆっくりと囁かれ、背筋がぞわりとした。お腹まで外されたボタンのせいで肌寒い。ゆるゆると肩に忍足君の手がまわり、シャツがはだける。露出した肩に嫌に冷たい風が触れた。どっと冷や汗が出る。

「こ、怖い、忍足君、こわ、」
「堪忍な。」
「っひ、」

首筋をべろりと舐めあげられた後、鋭い何かが皮膚を突き抜けた。怖い痛い怖い痛い嫌だいやだ気持ち悪い!行き場のない手を忍足君の肩にぐっと押しつけた。離れろとぐいぐい押すがびくともしない。血抜けていく感覚に全身の力が抜ける。忍足君がぎゅう、と支えてくれるおかげで倒れずに済んでいるのだけど。

「っうあ、や、忍足君、」

痛みが広がるそこからじんわりと体中が熱くなり、呼吸が辛くなってきた。ひゅっ、と呼吸が浅くなる。意識が、飛びそう。

「っす、まん。吸いすぎた、か…?」

ふと皮膚に刺さった異物が抜けていく痛みに意識がもどった。ばっと離れたのはいいが力はすっかり抜けきっているので膝から崩れ落ちる。しかし座るのも辛い。ああ倒れる。

「あ、ぶな、」

慌てて忍足君が屈み私を支える。必死に呼吸を整えていたらゆっくりと背中を撫でられ、思わず忍足君を見る。

「堪忍な。」
「さっきの、忍足君、なに。」
「吸血鬼みたいやろ。」
「…吸血鬼なんじゃないの。」
「まあ。」



途中放棄。そんなに健康そうじゃない、ちょっとクセのある血が好きな吸血鬼忍足ください。
20120906


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