辺りはもう真っ暗で街灯の僅かな明かりでなんとか歩いている。高校生になって数ヶ月。日が暮れるのが遅くなったとはいえ、19時を過ぎると暗い。正直心細い。ざっざっと靴を鳴らして歩く。寮まではまだまだ距離がある。寮は一人部屋で結構規制も緩い。流石に夜中に出歩くのは駄目だけど、寮のおばさんは優しいし面白い。まだ慣れない事が多いけどそれなりに楽しいし家族とも会える。なんら支障はない。

暗い道を歩いていたら街灯の下に黒い何かが落ちていた。ハンカチ…?少しだけ近寄ってみると怪我をした黒猫だった。私の気配に気付くと横たわらせていた体を持ち上げシャーッと威嚇してきた。が、すぐぱたりと倒れた。

「わっ」

私はどうしていいか分からず、取り敢えず鞄からタオルを取り出して黒猫を抱えた。そして寮に向かって走りだす。

「おばさん!」

寮に着いておばさんのいる部屋を訪ねる。はいはいと返事が聞こえドアが開いた。酷く焦る私を見て驚いた顔をする。

「どうしたの、そんなに慌てて」
「すみません、駄目だって事は分かってるんです。でもこの子、怪我してて…!」

おばさんは黒猫を見て、中に入ってと言った。この寮はペット禁止だ。拾ってくるなんて以てのほか。ごめんなさい、ごめんなさいおばさん。おばさんは取り敢えずこの猫を洗うと言い汚れを落としていた。シャワーの音が聞こえて、私は椅子に座りただ先程の出来事を思い出していた。威嚇された時の、あの目。深い青色の目が私には忘れられなかった。今はただおばさん家の優しい香りに微睡む事にしようと思う。


20110507.

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