自分でも何を言っているのか分からなかった。ただ体が勝手に彼女を引き止めて口が勝手に動いて彼女を困らせた。何をしているんだ俺は何をしたいんだ俺は。ぐるりぐるりと混ざりあった感情を元に戻す事が出来ず暫くぼうっとしていたらドアがガチャリと開いた。
(…………っまずい!)
これが彼女ではなかったら俺は不審者になるのではないか。もう猫になるには遅い。すぐさま彼女の布団に飛び込んだ。まだ彼女が帰ってくる時間には少しばかり早い。
「ただいまー……クロ?」
この声は彼女のものだった。ほっとしたのも束の間、俺は今彼女の布団に潜っている。
「な、なにしてるの?」
「…お前じゃなかったらどうしようと思って、人間だと怪しまれるし猫になるには時間がなかったから咄嗟に布団に飛び込んだ。」
目をそらしながらそう言うと彼女はぷっと吹き出し笑いだした。相当可笑しかったのか呼吸がひゅーひゅーなって涙まで浮かべている。
「そ、そっか、それで…あははっそんな必死に布団に丸まって…!」
「そんなに笑うなよ…」
のそのそと布団から這い出し時計を見れば短い針が1を差していた。今日は帰ってくるのが早い。
「何かあったのか?」
「え?」
「まだ1時だ」
あー…と気まずそうに視線をそらす彼女は、バッグからなにか袋を取り出した。椅子に座り中身を取り出し始めたので俺も彼女の正面に座った。
「クロと一緒に食べようと思って…」
目の前に置かれたのは新発売の豆乳プリンだった。
「あっああ!」
何故だか涙が出そうな程嬉しい。
(彼女が早く帰ってきた理由)
20111127
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